ENTERTAINMENT

2023.07.28

日本615億円、韓国2206億円! 現代の“新興貴族”インフルエンサーの市場価値

トップインフルエンサー描く韓国ドラマ『セレブリティ』が話題だ。人気YouTuberのヒカキンがプロデュースしたカップ麺「みそきん」が即完売して話題となったが、韓国でもインフルエンサーがマーケティング市場で大きな役割を果たしている。スマホさえあれば誰もが“メディア”になれる時代。インフルエンサー事情は、ビジネスパーソンもキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは

Netflixシリーズ「セレブリティ」独占配信中

トップから“転落した”インフルエンサー

死んだはずの有名なインフルエンサーがある日突然、顔出しのライブ配信を始める。インスタグラムのアカウントすら持っていなかった平凡な会社員だった自分が、いかにしてフォロワー100万人超えのインフルエンサーになったのか。その成功のプロセスを公開すると同時に、人気インフルエンサーたちの裏の顔を次々と暴露していく。

これは、Netflixオリジナルシリーズ『セレブリティ』の大まかなあらすじだ。“残酷なまでに華やかな”インフルエンサーの世界を描く同作は、香港、シンガポール、インドネシア、ペルーなど世界10ヵ国のTOP10ランキングで1位を記録。2023年7月12日付のGlobal Top 10ではテレビ部門(非英語)の1位を占めるほど、反響を呼んだ。

物語の主人公ソ・アリ(パク・ギュヨン)は、元は地味な化粧品訪問販売員だったが、フォロワー数が権力と富になるインフルエンサーの世界で頂点に登りつめる。しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは、他のインフルエンサーから向けられる嫉妬と憎悪。女たちの泥沼の争いだった。その過程でアリは麻薬や売春、殺人といった犯罪を目の当たりにし、アリ自身も結局、何者かに殺されてしまう。

インフルエンサーの平均月収は約220万円

SNSの普及とともに、我々の日常にも少なからず影響を及ぼしているインフルエンサーたち。大人気YouTuberのヒカキンが、即完売して話題となったカップ麺「みそきん」をプロデュースしたように、韓国でもインフルエンサーがマーケティング市場で大きな役割を果たしている。

日本における2022年のインフルエンサーマーケティング市場規模は615億円(サイバー・バズ/デジタルインファクト調べ)だが、韓国は2020年の時点で2兆100億ウォン(約2206億円)だったというから驚きだ。

フォロワーが100万人を超えるインフルエンサーたちの平均月収は約220万円(HypeAuditor調べ)という分析もある。だからこそ『セレブリティ』に登場するインフルエンサーたちのように、「有名にさえなれば簡単に大金を稼げる」という幻想を抱く若者が多いのではないだろうか。

韓国の有名インフルエンサーのうち日本でも知名度がある人といえば、Netflixの恋愛リアリティ番組『脱出おひとり島』シーズン1で最もモテていた、ソン・ジア(freeジア)が挙げられる。

Netflixシリーズ「脱出おひとり島」シーズン1~2独占配信中

抜群の美貌とスタイルに加え、全身ブランド物で固められる財力。そのすべてに世間から羨望の眼差しを向けられた彼女は、『脱出おひとり島』への出演をきっかけに人気が急上昇した。

しかし、ソン・ジアにとって夢のような日々はさほど長くなかった。『脱出おひとり島』の最終回が配信されてから10日も経たないうちに、衝撃の事実が発覚。彼女はそれまで偽物のブランド品を動画で紹介し、『脱出おひとり島』でも偽物を着用していたのだ。

一部の事実を認め謝罪文を発表したソン・ジアに対し、「世界的に恥をさらした」と世間は冷ややかだった。名声が傷付いたのはもちろん、数ヵ月の自粛を余儀なくされたため収入面でも相当な影響を受けたとみられる。

『セレブリティ』によると、インフルエンサーの世界にはフォロワー数(=人気)による階級が存在するという。その世界では階級上昇が何よりも大事な目標とされる。その目標達成のためには、フォロワーたちには見栄を張ってでも注目されなければならないのだ。

『セレブリティ』を演出したキム・チョルギュ監督は、このドラマで最も重要なモチベーションは「欲望」とし、「SNSでの欲望は結局、階級上昇に対する欲望として現れる。階級をもっと鮮明に浮き彫りにすれば、上昇したがる人物たちの欲望を表現するのが容易になると思った」と、企画意図を明かしていた。

現代の“新興貴族”といえるインフルエンサーたちの空虚を見せてくれる『セレブリティ』。ビジネスパーソンにとっても、考えさせられる作品になるに違いない。

■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。

 
■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。

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TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

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