ENTERTAINMENT

2022.07.22

BTSプロデューサー、HYBE創業者パン・シヒョクとは?

ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、「仕事」でも「プライベート」でも使える韓国エンタメ情報を紹介する。今回はBTSが所属する事務所、HYBE(ハイブ)の創業者であるパン・シヒョクに注目したい。【過去の連載記事】

第64回グラミー賞(2022)でのBTS

第64回グラミー賞(2022年)にノミネートされたBTS。写真:AP/アフロ

TWICEのプロデューサーJ.Y.Parkとの関係

グループ活動の一時休止を発表し、ソロ活動をスタートさせたことで第2章の幕開けを告げたBTS。K-POPグループとして全世界を席巻した彼らの成功を語るうえで、欠かすことができない人物がいる。

パン・シヒョク(芸名はhitman bang)。韓国の大衆音楽界をリードしてきたベテラン作曲家およびプロデューサーで、BTSが所属する事務所、HYBEの創業者である。米ビルボードの「International Power Players」に2年連続選出され、2022年4月には米TIME誌の表紙にも登場するなど、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのパン・シヒョクだが、実は結構面白い経歴の持ち主だ。

音楽プロデューサーの道に進んだきっかけは、ソウル大学在学中に参加した音楽コンテストで銅賞を受賞後、TWICEのプロデューサーで知られるJ.Y.Park(パク・ジニョン)にスカウトされたことだった。

パン・シヒョクはJ.Y.Parkから音楽プロデュースのすべてを学び、JYPエンターテインメントの共同創業者になる。このJYP時代に数多くのヒット曲を手がけただけではなく、A&Rやマネジメントなど、会社運営に関するノウハウを身につけたという。

そして2005年、JYPから独立して自身の会社であるBig Hitエンターテインメント(現HYBE)を設立。海外のトレンドを積極的に取り入れる作曲家として名を馳せながら、2013年に自らプロデュースしたBTSを世に送りだした。

このBTSの成功によってBig Hitエンターテインメントも急成長。それまでK-POP業界では「3大事務所」(SMエンターテインメント、JYPエンターテインメント、YGエンターテインメント)が君臨していたが、今やBig Hitエンターテインメント含む「4大」どころか、「1強」にまでなった。

世界的人気アーティストが多数所属する、HYBE(旧Big Hitエンターテインメント)の創業者として知られているパン・シヒョク氏(中央)。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

パン・シヒョク率いるHYBEのビジネス戦略

会社の急成長の背景にはパン・シヒョクの生まれ持つ才能や学力の高さなども手伝ったはずだが、彼が持つ未来を見通す力も大いに活かされたようだ。

例えば今から11年前の2011年、パン・シヒョクはこんな主張をして業界に波紋を呼んだものだった。

「これからはアイドルも、歌やダンス、演奏、作詞・作曲に長けた完成型に進化すべきだ」

当時はまだ「アイドルは外見で勝負する」という風潮が強く、パン・シヒョクの発言には「それはシンガーソングライターじゃないか」という反論もあった。

しかし、BTSをはじめとする多くのK-POPアイドルが作詞・作曲に関わることが当たり前となり、ガールズグループ(G)I-DLEのように自らプロデュースするグループも出てきた最近の状況を見ると、先見の明があったと言えるだろう。

だからこそ注目したいのが、パン・シヒョク率いるHYBEのビジネス戦略である。

「音楽に基づいた世界最高のエンターテインメント・ライフスタイル・プラットフォーム企業にする」。2021年の企業ブランディング発表会でこのようなビジョンを掲げたHYBEは、もはやただの芸能マネジメント会社ではなくなりつつあるのだ。

HYBEの事業内容は大きく3つに分けられる。

1つ目は「レーベル」だ。社名が変更されたのもこのためだろう。Big Hitエンターテインメントは「BIGHIT MUSIC」というレーベルになってHYBEグループの傘下レーベルの1つとして加わった。HYBEには現在、「BIGHIT MUSIC」のほか、LE SSERAFIM(ル セラフィム)が所属する「SOURCE MUSIC」や「HYBE LABELS JAPAN」など、7つのレーベルが所属している。

2つ目は「ソリューション」。アーティストを活用した映像コンテンツ、ゲーム、教育プログラムなどを開発し、収益を多角化する戦略だ。たとえアーティストたちの音楽活動が難しくなったとしても、IP(知的財産権、Intellecual Property)事業を通じて永続的に収益を創出できる。

3つ目は「プラットフォーム」だ。パン・シヒョクが常々強調してきたキーワードのひとつに「境界のない拡張」というのがあるのだが、その"境界のない拡張"に最適な環境こそ「オンラインにある」と見定めたHYBEは、アーティストとファンをつなぐネットコミュニティ『Weverse』を手がけたり、韓国最大のポータルサイトNAVERが運営していたライブ動画配信サービス『V LIVE』を買い取ったりしながら、オンライン上での勢力を拡大させている。

その一環として、2021年には「4大事務所」の1つであるYGエンターテインメントと戦略的パートナーシップを結び、YGが世界に誇る看板アーティスト・BLACKPINKを『Weverse』に合流させるという離れ業もやってのけた。

BTSがグループ活動の休止を宣言した今、このようなHYBEのビジネス戦略は危機をチャンスに変えるだろうか。K-POPビジネスの刷新を図るパン・シヒョクとHYBEの動向には、引き続き注目していきたい。

過去連載記事

TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

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