ENTERTAINMENT

2023.12.08

BTS・SEVENTEEN・NewJeans…なぜ日本でK-POP授賞式を行ったのか

世界最大級のK-POP授賞式「2023 MAMA AWARDS」が、2023年11月28・29日に東京ドームで開催された。韓国の授賞式なのに日本で開催される理由とは。K-POPビジネスの動向はビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは

韓国最大級のK-POPの祭典『2023 MAMA AWARDS』の授賞式
2日間で合計8万人ものK-POPファンが熱狂した。ⓒ CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved

東京ドームで開催された世界最大級のK-POP授賞式

2023年11月28・29日の2日間、東京ドームで韓国の総合エンターテイメント企業CJ ENMが主催する世界最大級のK-POP授賞式「2023 MAMA AWARDS」が開催された。

近年、数多くあるK-POP授賞式のなかでも、最初に海外へ目を向けたのがこの「MAMA AWARDS」である。

2010年のマカオ開催を皮切りに、香港、ベトナム、シンガポールなどを経て、2019年はナゴヤドームで約4万人、2022年は京セラドーム大阪で2日間合計で約7万人を動員。そして2023年、東京ドームでの開催を実現させた。

今回の「2023 MAMA AWARDS」では日本でも人気のSEVENTEEN、東方神起、ENHYPEN、LE SSERAFIMら豪華ラインナップを揃え、2PMのジュノ、パク・ウンビンら人気俳優たちをプレゼンターに迎えた。

日本からはX JAPANのYOSHIKIが若手K-POPアーティストとX JAPANの名曲「ENDLESS RAIN」をして話題になったほか、韓国の人気映画『犯罪都市 NO WAY OUT』に出演した青木崇高も参加している。

ちなみに注目されていた4つの大賞については、BTS、SEVENTEEN、NewJeansがそれぞれ受賞した。

K-POP輸出先トップの日本

筆者も取材のため会場を訪れたが、客席をぎっしりと埋め尽くした観客たちの高揚感とは別に、会場内に漂うちょっとした反応の鈍さが気になった。

その異様さの原因は、おそらく言語によるものだろう。

ほとんどのアナウンスは英語で行われ、司会者やアーティストたちは当然韓国語をメインに使用しながら時々英語と日本語を混ぜて観客に話しかける。そして会場のLEDビジョンには登壇者がしゃべるタイミングからやや遅れて同時通訳の字幕が流れるのだが、その時間差から生じる微妙な空気感だけは致し方ないことだと理解した。

ただ、アーティストたちが登場すると一瞬で歓声がわき起こり、色とりどりのペンライトの波が揺れる光景は圧巻だった。何しろ日本は韓国のK-POP輸出先ランキングにおいて長年1位を維持している国なのだと実感できるイベントだった。

韓国関税庁の輸出入貿易統計によると、2023年1〜10月のK-POPアルバムの輸出額は2億4381万4000ドルで史上最高額を達成。国別では日本が1億570万6000ドルを記録して1位、アメリカが5432万2000ドルで2位だった。

日本は世界第2位の音楽市場規模だが、K-POPの消費に関しては世界1位なのだ。東京ドームで「2023 MAMA AWARDS」が行われたのも、自然な流れだったかもしれない。

日本開催の次はアメリカ進出へ

もっとも、K-POPファンの多さだけでMAMA AWARDSの日本開催が実施されたわけでもないだろう。

K-POPもビジネスである以上、授賞式での収益性も無視できない。

今回の「2023 MAMA AWARDS」では「指定席1日券」が2万2000円、「指定席2日券」が4万円で販売されていた。一方、今年韓国で開催される同じく大型K-POP授賞式「2023 Melon Music Awards」のチケットは1日公演3万3000ウォン(約3,700円)で、日韓で約6倍ほどの差がついた。

特にMAMAは授賞式に参加するアーティストたちにギャラを支払わないという慣行があるため、チケット収益も無視できない。

アーティストたちはもちろん、人気俳優たちが務めるプレゼンターも豪華で、出演者たちの来日費用総額もケタ違いなことは容易に想像もつく。日本でのチケット価格が韓国高く設定されたのも、致し方ないのだろう。

また、業界では「MAMA AWARDS」が日本開催をステップボードにして“究極の目標”として掲げたアメリカでの開催を実現させると踏んでいる。

そのための第一歩が、2022年行った“リブランディング”だった。本来の名称だった「Mnet Asian Music Awards」から「Asian」をとって「MAMA AWARDS」に改称したことで、アジアを越え、アメリカ市場を攻めるという意思を表したのだ。

実際に、開催前に行われた「2023 MAMA AWARDS」のメディアデーでは、Mnetのコンベンションコンテンツ企画チーム長のイ・ソンヒョン氏が「アメリカは世界で音楽市場規模1位を誇るとても重要な市場のため、開催地はアメリカを含めて持続的に検討している」と、アメリカ開催の可能性を示唆した。

BTSやNewJeans、SEVENTEEN、ENHYPENら多くのK-POPアーティストたちが米ビルボード・チャートの常連となった今、アメリカでK-POP授賞式が行われるのもただの夢物語ではない。

現在、海外に目を向けたK-POP授賞式は「MAMA」のほかにもたくさんある。

2023年12月14日には「2023 Asia Artist Awards」がフィリピンで開催、2024年1月にはインドネシア・ジャカルタで「第38回ゴールデンディスク賞」、タイ・バンコクで「第33回 SEOUL MUSIC AWARDS」が開催される予定だ。

伝統と権威のあるK-POP授賞式が次々と海外へ出稼ぎに出る現状に、韓国のファンは不満を募らせているようだが、それもK-POPのグローバル化が進むにつれ、避けて通れない道かもしれない。

いずれにしても、K-POPビジネスの動向には引き続き注目したい。

■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。

 ■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。

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TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

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