これからやってくる高温多湿な日本の夏。暑さ対策はもはや必須だ。そこで今回は、そんな夏におすすめしたい、身も心も涼やかにしてくれる香りをピックアップ。男性美容研究家の藤村岳が大人のための香水を紹介する。連載「オトコの“香印象”のつくり方」とは……
清涼感と好印象を与える香り
高温多湿な日本の夏。毎年、夏が長く続くようになってしまい不快指数もうなぎ登りだ。そんな時に一服の清涼剤のような香水は、自分もそして周囲の人も幸せにするアイテム。
しかし、案外香りを選ぶのは難しいものだ。単に爽やかというだけでは子どもっぽいし、重くてマッチョすぎる香りもトゥーマッチ。
地に足が着いていながら、しかも、軽やかで品格のある香りを選ぶのがビジネスパーソンとしての正解だろう。
夏のプレゼン時に纏いたいイッセイ ミヤケの新作
クリアな香調を「水の香り」や「ウォータリーベース」などと呼ぶようになったのは、1992年にイッセイ ミヤケが「ロードゥ イッセイ」をこの世に出してからといっても過言ではない。
今から30年近く前、水をテーマにした香水を発表し、香水業界に多大な影響を与えたイッセイ ミヤケ。香りがなく、味もない水をテーマに掲げ、ここまで叙情的な世界を創り上げた三宅氏の日本人的感性とその才能には恐れ入るとしか言い様がない。
それから、毎年、新しいアプローチで様々な水の世界を我々に提示してくれるのだが、2023年は“ロードゥ イッセイ プールオム ベチバー オードトワレ インテンス”となって登場した。
元来、濡れた土のようなやや重たい印象のベチバーの香りだが、ここで使われているハイチアンベチバーはそんな大地のようなアーシー(大地の土っぽさ)な雰囲気に官能性を纏っている。ウッディ調の包み込まれるような香りに加え、水の持つ清涼感が見事に調和。ジンジャーやクラリセージの香りで躍動感があふれ、夏の肌に乗せても決して重すぎない。麻や薄手のアンコンジャケットなどでプレゼンをするといったシチュエーションに絶妙にマッチするだろう。
天然成分93%というナチュラルに加えて、ボトルにリサイクルガラスを使用し、キャップは天然の木材というこだわり。環境への影響を最低限に抑えたサステナブルな物づくりがなされた逸品なのだ。
セレモニーはアクア ディ パルマの老若男女に愛される香りで
1916年、イタリアのカルロ・マニャーニ男爵が旅行中に「時を超えて愛される香水を創ろう」と始まったのがこのアクア ディ パルマというブランド。
そして最初にできたのが、名香「コロニア オーデコロン」だ。その際立つ爽やかな香りは、1950年代にはハリウッドスターたちに愛され、瞬く間に世界的な名声を得ることになった。
そんな歴史ある香りのボトルを、ロンドンを拠点とするアーティスト兼デザイナー、サミュエル・ロスがアップデート。彼のインダストリアルデザインスタジオ「SR_A」がデザインした限定バージョンが登場した。今回登場した「サン_ライズ_イエロー」「グラス_ブレード_グリーン」「ウルトラ_オレンジ」の3つのカラーは、どれも元気が出るポップなルックス。
このコロニアの香りの最大の特徴は、トップノートにおけるシトラス系の巧みさ。酸味のレモン、甘さを感じるスイートオレンジに、苦味の利いたカラブリア産のベルガモットという構成が実に見事だ。
また、その後に続くラベンダーやブルガリアン ローズ、サンダルウッドの華やかさと落ち着きを加えることで、老若男女に愛される香りに。この爽やかな香りをビジネスにおいて使うなら、ぜひ、パーティーに。軽やかさと愛され具合でたちまち人気者に仕立ててくれるはず。限定ボトル終了後は、クラシックでエレガントなオリジナルボトルで同じ香りを楽しめる。
オンオフ問わず使えるペンハリガンの香りで紳士的で落ち着いた雰囲気を纏う
チャールズ3世の戴冠式を控え、またいろいろな意味で世界的な注目を集めている英国王室。そのイギリス国王陛下の私邸にあるハイグローヴガーデンにインスパイアされた香水が、このペンハリガンの「ハイグローヴ ブーケ」だ。
夏の庭の風景をオマージュし、そこに生育するウィーピングシルバーライムツリーの香りを表現したという。イングリッシュガーデン特有の多彩な花々が自然に咲き乱れる雰囲気をパフューマーはイエローベルベットのようと評した。そこに馥郁(ふくいく)たるチュベローズやシダーウッド、ムスクのセンシュアルでウッディなタッチの香りをプラス。英国らしい格調高い落ち着きもある。そのナチュラルで嫌みのないフレッシュさは、普段使いにぴったり。オフィスでもプライベートでも賑やかに彩ってくれるはず。
ペンハリガンといえば、チャーチル元首相が愛したことでも知られる。ボトルにはボウタイがあしらわれ、いかにも英国紳士たる佇まいだ。紳士的といえば、英国ではこの香水の売り上げの10%は、国王が慈善活動をしている財団の活動に寄付されるという。まさにノブレス・オブリージュとはこのこと。ブランドの出自を考えると、それも当然なのだろう。身も心も格調高く在りたいときに纏うべき香りだ。
■連載「オトコの”香印象”のつくり方」とは……
第一線で走り続けるビジネスパーソンは、リラックスしたい時もあれば、気持ちを奮い立たせ、勝負に挑まなくてはいけない場面もある。本連載「オトコの”香印象”のつくり方」は、自分を効果的に演出する武器でもある香りを上手に纏い、単なる好みではなく、スーツを誂えるように、自分に合う香りを見つける指南書。男性美容研究家の藤村岳がシーン別にベストな香りを紹介する。