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2024.05.05

ハワイ版ミシュラン2年連続金賞。日本人オーナーのヴィーガン店「ピース・カフェ」に世界中から人が集まる理由

ワイキキ郊外という決してアクセスがいいとは言えない場所ながら、ほぼ毎日寄るという“ロコ”をはじめ、アメリカ本土や日本など世界各国から訪れる客で賑わっているヴィーガン・レストラン「ピース・カフェ」。日本人オーナーシェフ、Shota氏を突き動かすのは、「おいしく食べて健康になる」という信念と料理人だった亡き父の教えだった。

日本料理の技と知恵を生かした“おいしいヴィーガン”

ハワイ版ミシュランと言われる「ハレ・アイナ・アワード」の金賞を2年連続受賞するなど、数多くの賞に輝く「ピース・カフェ」。同店を10年前から率いているのが、日本で和菓子店や懐石料理店で腕を磨いてきたオーナーシェフのShota氏だ。多くの人々を魅了する「おいしくて、体にいい100%ヴィーガン料理」は、なぜ、どのようにして生まれたのか。その軌跡を紐解く。

――まず、「ピース・カフェ」のコンセプトや提供している料理について教えてください。

体にやさしく、おいしい食事を、安全に、楽しく召し上がっていただくことをコンセプトに、100%ヴィーガン料理を提供しています。食材はオーガニックや地元のハワイ産にこだわり、地球に負荷をかけないものを選び、調味料も原材料から厳しくチェックし、安全でおいしいものだけを使用しています。調味料の場合、精製されている上白糖は一切使わず、メープルシロップやデーツ、レーズンなど自然の甘みを活かしたり、小麦粉が添加されている醤油の代わりにグルテンフリーの“たまり醤油”を使ったりといった具合です。

店に、アルカリ水素水がつくれる生成器を設置しているのですが、これはドリンク類だけでなく、調理の際にも活用しています。水素は超微粒子なので、食材にしっかり浸透する性質があるんですよ。ちょっと怖い話ですが、農薬を使った野菜をアルカリ水素水で洗うと、水が真っ黄色になる。野菜に染み込んでいた農薬が、アルカリ水素水によって洗い流されるからです。当店では、もちろん農薬も化学薬品も不使用な食材しか使っていませんが、ほんの少しの危険性も取り除きたいと思っています。

――安心して食べられるだけでなく、おいしさにも定評があります。その理由はどんなところにあるのでしょうか。

僕のルーツは日本料理なので、その技や知恵を生かし、ていねいな仕事にこだわっています。店の人気メニュー、「RAMEN」で使っている辛味調味料は、白コショウをベースに一味唐辛子や燻製させたチリなど10種類ほどの香辛料を昆布にはさんでコンテナで半年ほど寝かせてつくったもの。これは、日本料理でよく使われる手法をアレンジしています。うま味調味料にしても、市販のものではなく、昆布と乾燥しいたけを乾煎りし、ブレンダーでパウダー状にした自家製を使っていますが、この組み合わせも日本料理では基本中の基本ですから。

また、定番メニューのひとつ、卵の代わりに豆腐を使った「豆腐スクランブル」は、ターメリックで黄色を出しているんですが、ターメリックには抗酸化作用の強いクルクミンという成分が含まれています。この吸収率を高めてくれるピペリンを含むコショウを味つけに使っていますが、こうした栄養素の相乗効果を考えながらつくっていることも、おいしさにつながっているのだと思います。

ターメリックで色づけた豆腐を炒めてスクランブルエッグに見立てた「豆腐スクランブル」や、たまり醤油と生姜で炊いた大豆ミート、ケールのナムルといったシグネーチャー・メニューを盛り合わせた「ピース・サンプラー」。

尊敬すべき料理人だった亡き父の想いも継承

――そうした栄養素に関する知識は、「ピース・カフェ」を始めてから身につけたのでしょうか?

いえ、父の影響ですね。父は六本木で「わかば」という日本料理店を営んでいたんですが、書斎には食養生や中医学といった本がたくさん並んでいて。子供の頃、父から「銀杏には気管支にいい成分が含まれている。銀杏の収穫時期が寒くなる前の晩秋なのは、銀杏を料理に使って体を守るためだ」と聞いたことがあります。子供心に、「食べ物にはすごい力があるんだな」と感じましたね。

父は17年前に病気で他界したのですが、父の病気が分かった時に、本格的に漢方や食養生、マクロビなどを学び始めました。知れば知るほど、食べることと健康には深いつながりがあるのだと感じます。

1978年東京都生まれ。町田調理師専門学校卒業後、茶会専門和菓子屋や懐石料理店などで腕を磨き、東京都河豚免許も取得。2013年からハワイ、ホノルルで「ピース・カフェ」を経営。

――料理の道に進んだのは、お父様の影響ですか?

ええ。僕は4人兄弟の3番目なんですが、ふたりの兄も弟も、みんな料理の道に進みました。父は仕事人間で、1日中店にいたので、家で顔を合わせることがほとんどなかったんですよ。僕は、10歳くらいの頃から父の店で皿洗いの手伝いをしていたんですが、それは、父に会うため(笑)。それを続けているうちに、自然と料理への興味が沸いてきたんです。

今思えば、父はものすごく先進的でした。日本料理屋でしたが、「お客様に世界中のおいしいものを味わってほしい」と、海外の料理を意識した創作料理を積極的に出していましたね。戦争中に生まれ、ひもじい想いをした経験から、「料理屋はお客様のお腹をいっぱいにしてナンボだ」と、ボリュームにもこだわっていて。「ピース・カフェ」のサンドイッチはベトナム風や韓国風、日本風など世界の味を取り入れていたり、ヴィーガン料理なのに大盛りなのは、父の想いを引き継いでのことです。

野菜をブレンダーで液状にしてとろみをつけ、豚骨風に仕上げた「RAMEN」。10種類の香辛料を昆布ではさみ、半年寝かせた調味料でコクと辛味を演出。

――挑戦の場をハワイに移したのは何がきっかけだったのでしょう?

料理とまったく関係なくて恐縮ですが……、サーフィンです。サーフィンを始めたのは中学の頃で、当時の仲間と「大人になったらハワイに住んで、サーフィンしようぜ」と夢見ていて。それを実現するため、ですね(笑)。

10年前、「ピース・カフェ」が売りに出されていると聞き、妻に見に行ってもらったのですが、「いい雰囲気よ」と言われて、購入を即決して……。僕は一度も物件を見ないで決めてしまったんですよ。ご存じの通り、あまり人通りのないエリアですからね。見ていたら、買っていなかったと思います(笑)。

でも、おかげさまで、今はご近所の方にリピートいただいていますし、アメリカ本土や海外から、わざわざ来てくださるお客様もいらっしゃいます。この場所で正解だったのかもしれませんね。

――最後に、今後の目標をお聞かせください。

「ピース・カフェ」を始めてから今年で10年になります。うちの料理を食べ続けたおかげで、コレステロール値が下がったと嬉しそうに報告してくださるリピーターの方もいて、毎日励みになっていますし、自分がやっていることは間違っていないという自信にもなります。

「ピース・カフェ」の味を、もっともっと広め、多くの人に、食を通じて健康になってほしいと思っています。2024年4月に渋谷にオープンした「ロータスカフェTOKYO」で、うちのレシピのメニューを3品提供させていただいていますが、今後はアメリカ本土にも店を展開する予定。ヴィーガンは体に良いけれど味がイマイチ。そんなイメージを覆す、体にやさしくて、おいしいヴィーガン料理を広めるために、これからも邁進していきます。

「ピース・カフェ」
住所:2239 S. King St., Honolulu、℡808・951・7555、営業時間:10:00〜20:00(L.O19:30)、オンラインオーダー・デリバリー可能、休み:日曜

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=酒井康

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