サントリーがウイスキーづくりを始動して100年。「山崎」「白州」の両蒸溜所を大幅に改修した。100億円を投じたその目的とは──。【特集 ニッポンのSAKE】
SOULとLIVE! な蒸溜所
サントリー創業者・鳥井信治郎が、山崎の地でウイスキーづくりを始めたのが100年前。稼働から5年後に国産第一号のウイスキー「白札」が発売される。「ジョニーウォーカー赤」など輸入洋酒と変わらぬ価格だったこのウイスキーの広告コピーは「醒めよ人! すでに舶来盲信の時代は去れり」だった。
そして今、日本のウイスキーはまさしく世界の頂点に立った。2023年ロンドンで開催されたインターナショナル・スピリッツ・チャレンジで、「山崎25年」が全部門での最高賞を受賞したのだ。「さまざまな原酒からつくられた『山崎25年』は、多層的で素晴らしい複雑さがある」という評価が受賞の理由だった。
奇しくも、この受賞と時を同じくし山崎蒸溜所と、その50年後に完成した白州蒸溜所が大幅にリニューアルされ、新たなスタートを切った。現在、品薄ともいわれるなか、その目的は原酒増産なのか。
「施設改修の目的は、あくまでも品質向上です。国内外のファンの皆様のご愛顧にお応えするためにも、より多彩な原酒づくりに挑戦し、さらなる上質を目指したい」と、サントリー秋山信之ウイスキー事業部長は言う。
ものづくりの「SOUL」をテーマにする山崎蒸溜所では、研究開発施設、パイロットディスティラリーの充実を図るなど、創業時から続く美味品質をこれまで以上に追求。一方、「LIVE!」をテーマにする白州蒸溜所では、野鳥の保護など自然との共存も踏まえて水質を守り、より森の味わいを探求する。
これを機に一般見学客も迎え入れるべく、蒸溜工程をわかりやすく解説する施設、原酒を試飲できるスペースも一新した。事前抽選で、プレミアムな体験ができる見学ツアーも始まっている。
日本のウイスキーの聖地を訪ね、「SOUL」と「LIVE!」を感じたい。
山崎蒸溜所|100周年を迎えた日本ウイスキーの聖地
1923年に日本初の本格的なモルトウイスキーの蒸溜所として着工。2023年に100周年を迎えた。桂川、宇治川、木津川が合流する、温潤な環境がウイスキーの熟成に適した、万葉の歌にも詠まれる名水の地。
さまざまな発酵槽や蒸溜釡、熟成樽を使い分け、製造設備の改修や新設を繰り返してきた。今回はエントランス「山崎の杜」を新設、当時から残る「山崎ウイスキー館」の展示も刷新。ここでしか味わえない原酒などのテイスティングラウンジもオープンした。
山崎蒸溜所/YAMAZAKI DISTILLERY
住所:大阪府三島郡島本町山崎5-2-1
TEL:075-962-1423
※ものづくりツアー(80分¥3,000)、ものづくりツアー プレステージ(120分¥10,000)の申し込みはHPを確認。
白州蒸溜所|自然と一体化した森の蒸溜所
山崎蒸溜所着工から50周年後の1973年に建設された蒸溜所。南アルプス甲斐駒ヶ岳の麓、標高700mの冷涼な地にあり、広大な森に囲まれる。
山々の地層から湧きでる良水を用い、山崎とは違ったタイプの原酒をつくる。発酵に使用するのは木桶槽のみ。ピート麦芽での仕込みも行い、そのピート香が「白州」の大きな特徴。
今回のリニューアルではビジターセンターやラウンジを新装。野鳥の保護区、バードサンクチュアリも刷新した。2024年にはレストランも開業予定。
白州蒸溜所/HAKUSHU DISTILLERY
住所:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
TEL:0551-35-2211
※ものづくりツアー(90分¥3,000)、ものづくりツアー プレミアム(130分¥5,000)の申し込みはHPを確認。
この記事はGOETHE 2024年1月号「総力特集: ニッポンのSAKE」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら