GOURMET

2023.12.11

外国人で溢れるバー店主に聞く、ジャパニーズウイスキーが世界で熱狂を生む理由

なぜ、これほどまでに熱狂するのか。海外から愛好家が集う新宿にあるジャパニーズウイスキーの聖地で知る、日本のウイスキーに秘められた驚くべきポテンシャルとは──。【特集 ニッポンのSAKE】

Shot bar ゾートロープ店主の堀上敦氏
堀上敦/Atsushi Horigami
Shot bar ゾートロープ店主
1964年東京都生まれ。’90年代から日本のウイスキーに魅了され、会社を退社し、国産ウイスキー専門店をオープン。国内外のウイスキーファンに愛される。

扉を開けばそこは日本ウイスキーの天国

映画業界などに身を置いていた堀上敦氏。2006年に転身して開いたバーは、国際色豊かなウイスキー好きで席が埋まる、世界で有名なジャパニーズウイスキー専門店だ。

サントリーやニッカのウイスキーが海外の品評会で高く評価されるなど、ジャパニーズウイスキーブームの兆しが見え始めていた2000年代。日本のウイスキーにとってターニングポイントなったのが、「秩父蒸溜所の創業だった」と堀上氏は話す。

「おじいさんが残した羽生蒸溜所の原酒をさまざまな樽に詰め替えて後熟させた『イチローズモルト』のカードシリーズで、世界のウイスキーファンに衝撃を与えたのが肥土伊知郎(あくといちろう)さんでした。そんな肥土さんが2007年に設立したのが秩父蒸溜所。日本では32年ぶりに設立されたこの蒸留所の誕生をきっかっけに、2011年にはマルス信州蒸溜所が復活。そして2016年頃からは、全国に蒸留所が急増したのです」

世界がまだ知らない新興蒸留所の実力

堀上氏が店を開いた当時、国内に7つのみだったウイスキー蒸留所は、今や100に迫ろうとしている。とはいえ、それら新興蒸留所のウイスキーを求めて来店する海外からのゲストは決して多くない。

「大手メーカーのウイスキーや『イチローズモルト』の評判もあり、海外からの旅行者にとって、今やジャパニーズウイスキーは鮨と同じくらい人気です。しかし、彼らの多くはまだ日本の新しい蒸留所を知りません。だから当店ではそうした新興蒸留所のウイスキーをお薦めし、トライしてもらっています」

スコッチの多くが10年以上の熟成期間を経てボトリングされるのに対し、まだ歴史の浅い日本の新興蒸留所では、3年から5年程度の熟成でウイスキーをリリースせざるを得ない。

「熟成は短くとも、海外のお客さんに日本の新興蒸留所のウイスキーは好評です。熟成が早くダイナミックに進む環境もありますが、創業からわずか数年でこれだけのクオリティのウイスキーがつくれる日本の新興蒸留所の実力に驚かされますし、世界に誇れるものだと思います」

ジャパニーズウイスキーの伝道師がそう語る、世界がまだ知らない日本の蒸留所のポテンシャル。さらなる熟成を経てそれが存分に花開く時、日本のウイスキーに真の黄金期が到来するのかもしれない。

Shot Bar ゾートロープ
製品をリリースするほぼすべての国内蒸留所のウイスキーが揃う。店主の国産ウイスキーの知識とフランクな接客も、ウイスキーファンに愛される理由だ。

住所:東京都新宿区西新宿7-10-14 ガイアビル4 3F
TEL:03-3363-0162
営業時間:17:00~23:45(最終入店23:00)
定休日:日曜・祝日 
料金:¥1,500~¥3,000(中心価格帯)

【特集 ニッポンのSAKE】

この記事はGOETHE 2024年1月号「総力特集: ニッポンのSAKE」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら

TEXT=西田嘉孝

PHOTOGRAPH=太田隆生

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