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2023.09.30

「あぁー生きていてよかった」ブルガリ ホテル 東京でミシュラン3つ星の鮨を味わう

当時31歳、日本史上最年少でミシュランガイド福岡・佐賀2014年特別版の3つ星を勝ち取った「鮨 行天」の鮨職人・行天健二氏。2023年4月にオープンした、ハイジュエラーである「ブルガリ」とミシュラン3つ星の「鮨 行天」が作り上げる「Sushi Hōseki - Kenji Gyoten」について、行天氏に独自インタビューした。

「Sushi Hōseki - Kenji Gyoten」は食の宝石の原石

「宝石」というブルガリのDNAに因んだ名前を冠した、カウンター8席のみの鮨処「Sushi Hōseki - Kenji Gyoten」。ブルガリ ホテル 東京40階の一角にかかる暖簾をくぐり目に飛び込んでくるのは、美しいヒノキのカウンターとともに、フロア3階分相当の圧倒的な天井高の空間。

福岡の「鮨 行天」で3つ星を獲得し、オーダーメイドのおまかせ料理で知られる鮨職人・行天健二氏が監修した同店。腕を振るうのは清水拓郎料理長、行天氏が全幅の信頼を置く人物だ。行天氏は自身の店との違いについて問われるとこう答えた。

「食材の仕入れや仕込み、鮨の握り方や職人の立ち居振る舞い、店内で使用する器まで、私が培ってきた技術や経験を生かして監修し、ブルガリ ホテル 東京のチームとともに『Sushi Hōseki - Kenji Gyoten』を創り上げてきました。魚介とその下処理、水、米、シャリの大きさや温度、醤油の量、ネタの幅や厚さ、いずれにも妥協を許さず向き合うことで、最上の鮨を提供しています。

福岡の『鮨 行天』と『Sushi Hōseki - Kenji Gyoten』の違いがあるとすれば、私自身がそこにいるかいないかということだけ。清水料理長しかり、スタッフは全員、私を含めて常に向上していこうという意識を日々共有しているので、変わりはないのではないかと思っています」

『Sushi Hōseki - Kenji Gyoten』は毎日の仕入れや仕込みにも関わり、日々密接なコミュニケーションをとって監修しているという。

行天健二氏(左)、清水拓郎料理長(右)。カウンターは無垢のヒノキの一枚板。つけ台には少し傾斜がついていて、鮨ネタが最も美しく見えるような工夫が施されている。

「『Sushi Hōseki』というブランドを今から作り上げていくという感覚です。その名の通り、宝石の原石ですから。いかに磨いていくのかが楽しみです。ブルガリという名前は今後、何百年経っても必ず残るものですし、歴史を大切にしてくださるでしょう。だからこそ、私が日々感じているのは、この店で次世代に何を残せて、 何を伝えることができるのかということなんです」

職人であり、経営者であり、プロデューサーという面を持つ行天氏は、常に考え、行動する。

「私たちの鮨とは何か、と聞かれたらひとつひとつが“完成された物“であることを目指しています。また、今日イカがあったから使うのではなく、なぜイカが獲れたのかを理解できているのがうちの鮨屋。さらに言うと、すごくウニを楽しみにしていたお客様が来たのに、店にはもうウニがない場合。その時、ウニが何を食べているのか、どんな香りや食感だったのか考えて、ウニの味を彷彿とさせるイカを出すなんてこともありました。白い色をしているのにウニの味がしたら逆にびっくりするじゃないですか。

お客さんの想像を越えれば、それはプロの料理となる。お客さんのために、心を砕き、時間をかける。何があっても、何がなくても作れる技術がある、それが職人だと私は思っています」

日本酒の香りが楽しめるようにと作った酒椀。

鮨屋として次世代に伝えていきたいこと

職人と言われるまでに15年、20年かかるのが鮨職人の世界。その道は厳しいと痛感しているからこそ、次世代の育成と伝承にも力を入れている。

「昔は見たらわかるだろうというのが鮨職人の世界でした。でもそれでは今、人はついてこない。今後まだまだ伸びるだろうとか、この人についていけば間違いないとか、希望と安心感が必要なんだと思うんです。ですから、日頃から声をかけたり、自分の考え方を伝えるようにしています。

「鮨 行天」のコースは普通のお店より高い設定です。ですが、私たちがその金額でやらないと、次世代はさらに厳しい世界になってしまうという危機感を持って取り組んでいます」

「鮨は感じてもらうもの」というモットーをもとに供されるのは、職人技が随所にちりばめられた鮨。最上のネタの味をさらに引き出す切りつけや握り方は、目にも麗しいが、口の中に入れた時にこそ、その技が光る。「Sushi Hōseki - Kenji Gyoten」のコースの冒頭には大トロ、中トロ、漬けマグロが続く。どんな意味があるのだろうか。

「私自身がマグロを好きだということがありますが、修行先でマグロから出していたから。昔からやっていることを私が今、やっているだけなんです。自分が共感して受け継いできたことなので、その答えは自分だけがわかっていればいいと思っています。1回味わっただけではわからないかもしれない。何回も通っていただくことによって、なぜそれをやっているかということをお客さんご自身が理解してくださいます。

美味しいお店、こだわっているお店はたくさんあります。その中でもうちは、先人が残してくれたことをメッセージとして出せる鮨屋でありたいと思っています」

進化を続けながらも、鮨という伝統ある日本の文化を後世に伝えていくのが行天氏の仕事。文化や歴史を大切にしながら、常に新たな作品をつくり続けているハイジュエラーのブルガリに相通ずるものがある。

「Sushi Hōseki - Kenji Gyoten」の鮨は、口に入れ、噛むごとに「あぁー生きていてよかった」と思わせてくれた。ただただ、旨いと唸り、その旨さの真髄に迫るべく通いたくなる、そんな鮨屋だ。ブルガリの精神と共鳴する食の「宝石」が、今後どんな輝きを放つのか見逃せない。

Kenji Gyoten
1982年山口県生まれ。祖父が鮨職人という家系に育ち、幼少期から鮨が生活の一部として育つ。家業を継ぐか悩み、18歳の時にニュージーランドにて自分探しの旅を経験したのち鮨を生業にする覚悟を固め、21歳で都内の名店にて研鑽を積む。その後、2009年に故郷の山口県下関市で開業し、2012年に福岡移転。「ミシュランガイド福岡・佐賀2014」にてわずか2店舗しか成し得なかった三ツ星を獲得し、県内屈指の予約困難店となる。

Sushi Hōseki - Kenji Gyoten
東京都中央区八重洲二丁目2-1 ブルガリ ホテル 東京 40F
営業時間:ランチ12:00〜14:00(火・金・土曜のみ営業)、ディナー18:00~20:00、20:30~22:30(定休日:日・水曜)
料金:おまかせコース<ランチ>¥32,000、<ディナー>¥45,000
席数:カウンター8席
TEL:03-6262-6624 (予約専用)

TEXT=谷内田美香(ゲーテ編集部)

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