会員制とは、仕事場と家庭以外の“拠点”であり“サードプレイス”、そして、そこは人生を間違いなく豊かにしてくれる。いい大人たるもの持っておきたい、それが現代における最新のメンバーシップだ。今回は、大阪の会員制鮨店「mikami limited 50(ミカミ リミテッド 50)」を紹介する。【特集 会員制という愉悦】
食通の心を穿(うが)つ職人魂に圧倒される会員制鮨店
世界を代表するトップシェフがお忍びで来店した際、天衣無縫なその仕事ぶりに「クレイジー!」と驚嘆したという。
大阪の会員制鮨店「mikami limited 50」の店主、三上雅博氏は北海道・小樽で生まれ育ち15歳から鮨の道へ。腕利きの漁師だった祖父への憧れもあり「魚をもっと輝かせたい」という思いは日に日に強くなっていった。
細やかな仕事が求められる“光物”好きが高じて、18歳で大阪が誇る箱寿司の老舗へ。包丁一本さらしに巻いて、を地で行く修業時代を経て、36歳の時にミナミの鮨店で付け場を任され、予約困難な人気店へと押し上げた。
職人とは往々にして、自らが心血を注ぐ仕事以外には不器用なものである。心おきなく鮨道を邁進できるようにと背中を押してくれたのは、独立前に働いた店で出会ったたくさんの“恩人”だった。
一途に技を磨く職人とその姿に感銘を受けた人々の深い絆によって生まれたのは、天下の台所ならぬ「天下の美食空間」だ。薪の香りがふわりと漂う空間はどこか浮世離れした雰囲気が漂い、店主と女将に温かく迎えられながら、静かに非日常の世界へと引きこまれる。
その日の仕入れはもちろん、メンバーによってつまみや握りの構成も変わるが、白眉(はくび)はやはり、研ぎ澄まされた技が光る握りだ。
「自分の都合で仕事をしない」というポリシーを貫くことは常に過酷で、自らを極限まで追いこむことにもなるが、それを苦ともせず、ひたすらに魚と向き合い、仕込みに没頭する。そうした切磋の結晶ともいえる握りは、総合芸術のようなインパクトで食べ手の心を強く揺さぶる。
例えば、2枚づけにした身の間に食用バラと海苔をかませ錦鯉に見立てた平目や、ねっとりした口どけ、サクッとした食感という概念を超えた未体験の味わいのイカ、桜の薫香をほのかに含ませた伝助穴子や3種の部位を重ね合わせ“一匹の魚”として供する鮪など、「クレイジー」を超越した仕事にただただ感嘆のため息がもれる。
会員と一部の幸運の持ち主のみが知る、夢物語のようなひと時。来訪が“正夢”となることを心から願いたい。
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新規の会員募集は受けつけていないため、メンバー同伴での来店時に相談を。入会金はひと口¥1,000,000から。オープン時に出資をした50人のメンバーによる特別な食空間で、芸術的な鮨を堪能したい。
mikami limited 50/ミカミ リミテッド 50
住所・TEL:非公開
※営業時間、休業日などは予約状況によって変動
料金:¥35,000~
この記事はGOETHE2023年10月号「総力特集:会員制という愉悦」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら