GOURMET

2023.07.05

総額100億円超のストラディヴァリウスの音色を、最高峰のシャンパーニュを飲みながら聞いた

世界最高峰のシャンパーニュ、KRUGを飲みながら、ベルリン・フィルの名手が奏でる音楽を聴く。しかも楽器は、あのストラディヴァリウス。その数はなんと11挺だ。

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至高の音を奏でるストラディヴァリウス

それは魂を震わす音色だった。

誕生から300年。その名を歴史に刻む遺産であり、世界一高い楽器として知られる「ストラディヴァリウス」。名工アントニオ・ストラディヴァリ(イタリア、1644~1737)が製作した弦楽器は、世界中の演奏家やコレクターの垂涎の的となっている。

そのストラディヴァリウスを弾くのは、世界一のオーケストラとも称される名門中の名門、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。コンクール優勝者など一流のプレーヤーたちが集まり、そのメンバー構成は、まさにクラシック音楽界の銀河系軍団と呼ぶに相応しい。

この日、至高の音を奏でたストラディヴァリウスは11挺。内ヴァイオリンは7挺、ヴィオラは2挺、チェロは2挺で、その総額は100億円を超える。現在、世界に現存するストラディヴァリウスは600から700挺、一説によるとヴィオラは世界中で10挺ほどしか存在しないと言われており、今回はその内の2挺が揃ったわけだ。

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この日のストラディヴァリウスは、弦楽器商社の日本ヴァイオリンが用意した。

ベルリン・フィルによるストラディヴァリウスの特別なアンサンブル。伝説の名器と世界最高峰の名手たちが織りなす極上の音色は、聴く者たちを圧倒し、心を揺さぶった。

クリュッグのミュージックペアリング

この音楽会は世界最高峰のシャンパーニュメゾン、クリュッグが弦楽アンサンブル、ベルリン・フィルハーモニック・ストラディヴァリ・ソロイスツ(13人編成)の来日に合わせて企画。クリュッグのシャンパーニュを飲みながら、至極の演奏を堪能するために催された。

常に最高のシャンパーニュを世に出すべく、複数の収穫年、そして多数の区画から構成されるワインを巧みにアッサンブラージュするクリュッグ。この日、振る舞われた「グランド・キュヴェ」は、その年の気候に左右されることなく、毎年、最高の豊潤さを目指したものだ。

その味わいは鍛錬に鍛錬を重ねたブレンドチームによって造られている。テイスティングされるワインは毎年4000種ともいわれ、その内ブレンドされるのは120種以上。グランド・キュヴェは、卓越したアッサンブラージュをメゾンの奥義とするクリュッグだからこそのシャンパーニュだ。

クリュッグを語るにあたって、音楽は決して外せない。シャンパーニュと音楽という、一見、何のつながりもないように思える組み合わせだが、クリュッグでは耳に響く音楽は、シャンパーニュの香りや味わいと共鳴するとの考えのもと、これまでにミュージックペアリングを提案してきた。

ちなみにこの音楽会では、バッハ『2つのヴァイオリンのための協奏曲』には単一年のヴィンテージ「クリュッグ 2008」、ヴィヴァルディ『四季より「春」』には「クリュッグ グランド・キュヴェ 164 エディション」、チャイコフスキー『弦楽のためのセレナーデ』には「クリュッグ グランド・キュヴェ 170 エディション」をペアリング。その豊潤で深みのあるマッチングは完璧だった。

そしてもうひとつ、シャンパーニュ造りにおいてもクリュッグは音楽的なアプローチを取る。シャンパーニュ地方にある個々の区画を演奏家と捉え、毎年400といわれる候補の区画を‶オーディション″し、その個性を見極め、どのキュヴェに用いるか決めるのだ。

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常日頃から「偉大なシャンパーニュには音楽性がある」と語る、オリヴィエ・クリュッグ現当主。

音楽会に参加した6代目当主、オリヴィエ・クリュッグ氏は言う。

「毎年オーディションをし、採用しなかったものにはこう言います。『今年は演奏できませんが練習をしていてください』と。そしてしばらくたってから、そうした演奏家であるベースワインを組み合わせて演奏させる。それがグランド・キュヴェなのです」

「クリュッグ グランド・キュヴェ 164 エディション」を口に含む。オリヴィエ氏は続ける。

「164 エディションは本当に素晴らしい演奏家が集まっています。その組み合わせはなんといいましょうか、ヴァイオリン奏者を減らして重音奏者を多めに集めた感じでしょうか。ぜひ目を瞑ってゆっくりと、音楽を聴いている時のようにクリュッグを味わってください。クリュッグは飲むものではなく、聴くものなのです」

11挺のストラディヴァリウスによる、重厚な音色が幾層にも重なり合った調べは、多重奏のシャンパーニュと豊かに組み合わさり、その余韻はいつまでもなくなることなく、心に刻まれた。

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ベルリン・フィルの名手たち。演奏後、クリュッグで乾杯!

TEXT=八木基之(ゲーテ編集部)

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