夏の余韻を感じながら楽しみたい、シャンパーニュにまつわるトピックスを厳選して5つのメゾンごとにお届けする。【特集 情熱の酒】
クリュッグ:妥協なき男が生みだした唯一無二のシャンパーニュ
メゾンの創設者ヨーゼフ・クリュッグの夢から生まれた、唯一無二のシャンパーニュがクリュッグ グランド・キュヴェ。アッサンブラージュ(ブレンド)されるおよそ200のベースワインは、それぞれがオーケストラの楽器奏者のごとく個性豊かな音色を奏で、ひとつのシンフォニーとなって響き合う。ラベルに刻まれたエディションナンバーは、メゾンがそれまでにグランド・キュヴェをリクリエイト(再現)してきた回数。最新のグランド・キュヴェは170エディションだ。
これは2014年収穫の葡萄からつくられたワインを中心に、11の異なる年のリザーブワインを含め、合わせて195種類ものベースワインをアッサンブラージュしたもの。使用された最も古いワインは、98年のオジェのシャルドネという。
「ノーコンプロマイズ(妥協なし)が創設者ヨーゼフ・クリュッグの信条。彼の夢を再現することが私たちの仕事です」と、2022年4月、メゾンの社長に就任したマニュエル・レマン。45歳の若さながら、18年にわたりモエ ヘネシーのシャンパーニュ部門で枢要なポジションを担ってきた。フランスにおける理工系の最高学府、エコール・ポリテクニークの出身で、技術面の知識にも明るい。メゾンの顔であるクリュッグ6代目当主のオリヴィエ・クリュッグ、女性シェフ・ド・カーヴのジュリー・カヴィルと信頼関係を築き、オーケストラの指揮者のようにメゾンをまとめていきたいと話す。
グランド・キュヴェの170エディションに話を戻すと、まさにグラスの中のオーケストラ。メニルのシャルドネ、ヴェルズネのピノ・ノワール、サント・ジェムのムニエなどが厳かに響き合う。唯一無二のシャンパーニュづくりに生涯をかけた男の夢が、一杯の中に凝縮する。
Manuel Reman
インド人の父とフランス人の母を持ち、フランスのノルマンディー地方で育つ。エコール・ポリテクニークを卒業後、ボストン・コンサルティングを経て、2004年にモエ ヘネシー入社。2022年4月、クリュッグの社長兼CEOに就任。
ローラン・ペリエ:ヴィンテージ信奉を打ち破り異なる3つの年を組み合わす
多くのメゾンがそのフラッグシップを単一収穫年のヴィンテージとするなか、「異なる特徴を持つ3つのヴィンテージを組み合わせたら?」という逆転の発想で生みだされたのが、ローラン・ペリエのグラン シエクル。バランス、力強さ、エレガントさ、それらの特徴が特に秀でた3つのヴィンテージをアッサンブラージュした。
ちなみにグラン シエクル(偉大なる世紀)と名付けたのは、フランス第五共和政の初代大統領シャルル・ド・ゴールだ。
メゾン マム:5つのグラン・クリュと4年の熟成のコンビネーション
メゾン マムのウルトラプレミアムレンジであるRSRVシリーズ。RSRVの4文字は、メゾンと深い繋がりを持つ友人や愛好家のため、特別なキュヴェをセラーに秘蔵しておく際の識別コードだった。
そのRSRVシリーズから「メゾン マム RSRV 4・5」が登場。メゾンが所有する5つのグラン・クリュの葡萄のみアッサンブラージュし、最低4年間熟成。最上級のピノ・ノワールとシャルドネがもたらす調和と、熟成による複雑味が楽しめる。
コレ:100年の歴史が物語る特別なキュヴェの極上の味わい
アイ村に1921年創業したシャンパーニュ・コレが、メゾンの100周年を記念しリリースした特別なキュヴェが「n21(ヌメロヴァンテアン)」。
1961年にまで遡り、21の秀逸な年のワインをアッサンブラージュ。瓶詰め後、7年間の熟成期間を経てリリースされた限定品で、グラン・クリュとプルミエ・クリュのブドウのみという贅沢さ。エレガンスとフィネス、そして、フレッシュさと果実味により、奥行きと長い余韻、舌の上で踊るようなきめ細やかな泡が楽しめる。
ボランジェ:ピノ・ノワール100%のパワフルで肉厚な風味
ジェームズ・ボンドお気に入りのボランジェといえば、黒ブドウのピノ・ノワールを主体とした豊かなボディが特徴。2年前、メゾンはピノ・ノワール100パーセントのブラン・ド・ノワール、PN シリーズをリリースした。
最初の「PN VZ15」はヴェルズネのピノ・ノワールが主体、次の「PN VZ16」もヴェルズネ。そして第3弾が「PN TX17」。TXはモンターニュ・ド・ランスのエキゾチックな果実とスパイシーで複雑なアロマが渾然一体となり、深い余韻に満たされる。