時を重ねることで役者は磨きをかけていく。そんな時間を味方にしたいと町田啓太は語る。映画、ドラマ、舞台で活躍する気鋭の俳優が2022年秋にオープンしたIWC 新宿ブティックで出合った“時”とは――。
大変な時間ほど、乗り越えればいい経験になる
現在出演中のNHK教養番組『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』では、圧倒的な情報量を一気に解説。俳優・町田啓太の言葉には単なる台詞を越えた、見るものを引きつける強いプレゼン力を感じさせる。
「僕自身、長台詞に苦手意識があったので集中的に取り組んでいた時期もありました。それが巡りめぐっているんでしょうね。俳優はアウトプットが多い仕事ですが、この番組を通してインプットもさせてもらってます」
苦手をひとつひとつ克服していく。本格的に俳優の仕事を始めてからの12年間は、そうしたことをひたすら積み重ねてきた。
「やればやるほど課題をいろいろ発見できて、それを掘っていく作業がすごく刺激的で楽しい。デビュー当時と比べて仕事への向き合い方やマインドも変わりましたし、役柄にも広がりを持てるようになったと思います」
2023年1月3日に放送されたNHK正月時代劇『いちげき』では幕末を舞台に、農民ながら武士に強い憧れを持つ男を演じた。虐げられてきた嫉妬心、越えられない壁に必死に抗いながら武士になろうと奮闘するその一途さは、町田の俳優としての歩みにも重なる。
腕時計には昔から興味があるという町田は、この日訪れたIWC 新宿ブティックで整然と並べられた時計に目を輝かせた。
「空間全体に余裕みたいなものが感じられますね。時計も上品さと機能性が両立していて、魅力的です」
店内に流れる静謐(せいひつ)な時に重ねるのは、自らと向き合う時間だ。意外にも、仕事で達成感や充実感を覚えることは少ないという。
「むしろ反省ばかり。そんな時は仲間との一体感、友人や家族との時間が僕を支えてくれます。そんな瞬間を大事にしつつ、これからもいろいろな挑戦をしていきたいです」