吉本NSCの人気No.1講師・桝本壮志氏の最新刊『時間と自信を奪う人とは距離を置く』の刊行記念イベントの一部を特別公開した記事をまとめてお届け! ※2026年2月掲載記事を再編。

1.否定的なことばかり言ってくる上司とどう向き合えばいいの?

皆さん、日々いろいろな方と接する中で、心が疲れてしまうこともありますよね。私は吉本興業の養成所(NSC)で16年ほど講師を務め、1万人以上の若者を見てきました。そのなかで、伸びていく人と停滞する人の差は、実は「人間関係の距離感」にあると感じています。
私が皆さんに提案したいのは、大切なものを奪う人からの「戦略的な撤退」です。
まず、皆さんの「時間」を奪う人。自分の都合だけで急な予定を押し付ける上司や、生産性のない愚痴を延々とこぼす人などですね。
そしてもう一つが、皆さんの「自信」を奪う人です。「お前には無理だ」「その業界は向いていない」と、根拠もなく可能性を否定してくる人たち。実は、こうした人々との距離をどう保つかが、人生において極めて重要な戦略になります。
2.いまだに緊張して身体がこわばってしまう自分を治すにはどうすればいい?

大事なプレゼンの前、心臓がバクバクして手に汗を握ると、「あぁ、自分はなんてメンタルが弱いんだ」と否定的に思ってしまいますよね。でも、実はこれ、考え方が「逆」なんです。
緊張というのは、皆さんの脳と身体が「今から人生を左右するような大きな勝負が始まるぞ!」と察知して、最高のパフォーマンスを出すために全エネルギーを動員して準備を整えてくれている、いわば「味方のサイン」なんですよ。
私はこれまで、くりぃむしちゅーの上田晋也さんやビートたけしさんのような、いわゆる百戦錬磨のスターの方々と数多くお仕事を共にしてきましたが、あの方々でさえ本番前には、独特の緊張感を持って現場に立たれています。
たとえば、ビートたけしさんが本番前に楽屋やスタジオの袖でタップダンスを踊るのは、単なる趣味ではなく、身体の中に溜まった緊張を物理的にほぐし、その強大なエネルギーを正しい方向に逃がしてあげるための、プロとしての「儀式」でありルーティンなんです。
3.クリエイティブな発想をするためのコツは”制限すること”

「自由に企画を考えていいよ」と言われるのが、実はクリエイターにとって一番難しいことなんです。皆さんもそう思いませんか?
若手の皆さんが陥りがちなのは、「何でもいいから面白いことを」という無限の選択肢という大海原に放り出され、どちらへ泳げばいいか分からず翻弄されてしまうことです。実は、クリエイティブの本質というのは、何もない空間から生み出すことではなく、あえて「制限(リミット)」を設けることにあるんです。
例えば、大ヒットした映画『カメラを止めるな!』を例に挙げてみましょう。あの作品は、わずか300万円という極めて限られた制作費、そして無名の俳優陣という、一見すると絶望的な「制限」がありました。
しかし、その強烈な不自由さがあったからこそ、それを突破するために「ワンカットで撮り切る」「構造を二重にする」といった、独創的な作品が絞り出されたんです。もし潤沢な資金があり、有名な俳優を何人も使えたとしたら、あのようなエッジの効いた歴史的傑作は生まれていなかったに違いありません。
予算がない、時間がない、場所がない。その「ない」こそが、脳をフル回転させる最高のガソリンになるんです。
4.明石家さんまの「ひゃー」という2秒の間、タモリの「へえ、そうなんだ」のシンプルな相槌。実はとんでもないトーク力の極意

「トーク力=面白い話をすること」と思われがちですが、実は全く違います。私が考える「本当にトーク力が高い人」とは、実は「喋る能力」以上に「適切な相槌」と「深い頷き」ができる人なんです。お笑い界のトップで16年以上講師として若手を見てきましたが、喋りすぎる子よりも、実は黙って聞いている時の姿勢が良い子の方が、結果として現場で重宝され、売れていく傾向にあります。
この「聞く力」の究極の体現者は、タモリさんと明石家さんまさんです。
まず、タモリさんの凄さについてお話ししましょう。私は長年『笑っていいとも!』などの現場でタモリさんの振る舞いを見てきましたが、タモリさんのトークには一切の「力み」がありません。
相手が世界的なハリウッドスターであっても、近所の子供であっても、全く同じフラットな温度感で永遠にくだらない話を続けられる。これは、相手を否定せず、すべてを肯定的に受け入れる「究極のフラットな受容」があるからです。
5.部下や若者との飲み会では、どんな風に接すればいいのかわからない

「最近の若いもんは……」なんて言葉をつい口にしたくなることもあるかもしれませんが、それは非常にもったいないことだと私は思っています。実は、人間は35歳を過ぎたあたりから、意識的に自分を追い込んでおかないと、どんどん「情報弱者(情弱)」になっていく宿命にあるんです。
住む場所が固まり、付き合う友人が固定され、お金の使い道までパターン化されることで、自分の中のアンテナがどんどん閉じてしまうんですね。
だからこそ私は、吉本興業の養成所(NSC)で10代や20代の若者たちと向き合うとき、常に「教える側」の講師ではなく、誰よりも「彼らから情報を吸い取る側(教えを請う側)」でいようと決めています。
彼らが熱中している新しい流行や、名前も知らないようなアーティストについて、「それは何が面白いの?」「どういうところが魅力なの?」と素直に、そして前のめりに聞くようにしているんです。たとえ自分が全く興味のないジャンルであっても、一度自分の色眼鏡を外して聞いてみる。すると、彼らの瑞々しい感性を通して、世界が違った色に見えてくることがあります。

