アサヒグループ食品代表取締役社長の川原浩氏と、永谷園ホールディングス執行役員副社長の上田谷真一氏。“ファンドのご縁”なふたりを紹介する。

いつしか同じ業界に
川原 たしかファンド系の人たちの集まりで紹介を受けたんですが、一緒に食事に行ったのは、しばらく経ってからでしたね。
上田谷 最初の印象は、なんかえらくファンド臭くない人がいるな、でした。爽やかで。でも食事をしているとき、それが変わって、とても頭脳明晰な人だな、と。体験が整理されていて。
川原 話をして僕がすぐに上田谷さんを好きになっちゃったのは、自分がたどってきた道のなかで関わってきた人が、驚くほどリンクしていたことでした。学生時代はマッキンゼーでアルバイトしていて、ブーズ・アレン・ハミルトンは実は内定をもらっていたりもして。共通の友人もとても多かった。
上田谷 音楽もそうですね。僕も大学時代にバンドをやっていて。ジャンルはやや違いますが。
川原 それで上田谷さん自身はコンサルタントから始まって事業会社に移って、どんどんキャリアを深めていっていて。いつも一歩先を行っているイメージで、話を聞くと刺激だったし、とても勉強になりました。
上田谷 僕のような雇われ系の仕事って、雇い主はやっぱりファンドなんですよ。だから僕にとっては、ファンドの人たちがどう考えて行動しているのか、気心のわかっている人から聞くことができたのが貴重でした。
川原 経営者としての話も、いろいろ聞きましたね。ディズニーストア時代、全店を回ってスタッフみんなと話をすると聞いて、すごく共感したし、リスペクトしました。この人はウォームハート、クールヘッドを地で行っている人だな、と。
上田谷 いえいえ。僕は30代で事業会社に移った時、もう実業界に行くのは年齢的に難しいかなと思ったんです。でも、川原さんは50代でのファンドから事業会社への転身でしたので。
川原 僕自身も驚きました(笑)。だから、上田谷さんのところに相談しに行って。
上田谷 他の人なら反対しました。でも、川原さんならできると思ったんですよね。素直に相手に興味が持てるし、それが相手に伝わる。知らない会社に乗りこむ時は、キーマンといかにちゃんと信頼関係を築けるか、が大事なんです。川原さんは、スルッと自然に相手の懐に入りこんでしまう人なので。
川原 たくさんアドバイスをいただきました。そうしたら、同じ業界で仕事をすることになって、相談しづらくなった(笑)。
上田谷 いえいえ、一緒に業界を盛り上げていきましょう。

川原 日本凍結乾燥食品協会にお誘いしたら、あっという間に入ってもらえて。朝に詳細を送ったら、昼くらいに返事が来て、びっくりしたんです。伝統的な会社だから、1週間くらいは検討されるのかと思っていたので、はやっ!と思って。
上田谷 僕にとっては初めての業界ですし、やっぱり横で協力したほうがいいこともありますよね。フリーズドライというものを、もっと啓蒙しないと。
川原 課題はいろいろありますよね。インスタントと間違われることもそう。凍結して乾燥させているので、熱もかかっていない。真空なんですよね。
上田谷 運ぶのにも、水分がないので軽い。乾燥したものを運んだほうが環境にもいい。
川原 しかも常温保存。
上田谷 止まらないですね(笑)。お互いしばらく仕事をバリバリやると思いますが、今後はもうちょっとプライベートの深掘りをしていきたいですね。
川原 そういえば、お誘いいただいた浅草演芸ホールでの古典落語、楽しかったです。
上田谷 僕は子どもの頃から好きなんです。古典落語はほとんどストーリーが頭に入っていて。寄席の雰囲気も好きで、適当に途中で出て、ホッピーとか引っ掛けて飲むのも好きで。
川原 まさしく、それが良かった。落語についての上田谷さんの話も面白かったです。僕は鮎釣りにハマっていまして。上田谷さん、きっとハマると思います。こんな話もゆっくりしたいですね。

アサヒグループ食品代表取締役社長。1966年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業後、日本長期信用銀行入社。その後、JPモルガン証券、日本ゼネラル・エレクトリック、カーライル・ジャパンなどを経て、2021年3月より現職。

永谷園ホールディングス執行役員副社長。1970年埼玉県生まれ。東京大学卒業後、ブーズ・アレン・ハミルトン入社。その後、ディズニーストア、クリスピークリーム、TSIホールディングス等の社長などを経て、2025年より現職。