PERSON

2025.08.21

中田英寿「ジーコから習ったことは、真面目に生きろということ」

サッカー日本代表元監督のジーコ氏が、被爆80年を迎えた広島で2025年7月に慈善試合「Zico All-Star Game For Peace HIROSHIMA 80 Years」を開催した。Jリーグでも活躍したブラジルの英雄が発起人となった一戦にブラジル、日本などからサッカー界のレジェンドが集結。1万5128人の観衆を集めた「エディオンピースウイング広島」を沸かせ、世界に平和のメッセージを発信した。

ジーコ氏

世界的なスターが広島に集結

「Zico All-Star Game For Peace HIROSHIMA 80 Years」では、実に豪華な顔ぶれが広島を彩った。

「WORLD REGENDS」は中田英寿氏が指揮。ロナウジーニョ、マイコン、アウダイール、ドゥンガ、セードルフ氏ら世界的スターに加え、アルシンド、モネール、シジマール、ポンテ、フランサ氏らJリーグで活躍した往年の名選手も名を連ねた。

対する「JAPAN REGENDS」は“サッカーの神様”ジーコ氏が監督を務め、宮本恒靖、中澤佑二、内田篤人小野伸二、中田浩二、本山雅志、久保竜彦、秋田豊、北澤豪氏らがプレー。元ポルトガル代表MFクアレスマ氏の2得点などで「WORLD REGENDS」が3-1で勝利した。

発起人のジーコ氏は「素晴らしいイベントになって満足しています。ブラジルで20年続けてきたイベントを、戦後80年の節目に広島で開催できてよかった」と実感を込めた。

過去に6度の手術を受けた古傷の左膝に激しい痛みを抱えており、7度目の手術が必要な状態。ピッチに立つことはできなかったが「このイベントが開催できるなら、私は監督でもロッカー内の仕事でもなんでもやります」と笑顔で語った。

言わずと知れたサッカー界のレジェンド。約20年前から世界平和を願う慈善試合を母国ブラジルで実施しており、戦後80年の2025年は世界で唯一の被爆地である日本で初開催した。

1991年に日本リーグ2部の住友金属(鹿島アントラーズの前身)に入団し、Jリーグ創成期は鹿島アントラーズでプレー。日本サッカー界にプロ意識を植え付けた。

2002~2006年には日本代表監督を務め、2006年のW杯ドイツ大会で指揮。現在も鹿島アントラーズのアドバイザーを務めており、日本を「私の第二の故郷」と公言している。

中田英寿「これだけ長く続けられるのは彼の人間性」

国内外のレジェンドが一同に介したのも、ジーコ氏が発起人だったからに他ならない。  

ジーコ政権下の日本代表で中心選手だった中田英寿氏は「ジーコから習ったことは、真面目に生きろということですね。このチャリティーマッチも彼はもう21年続けていて、本当に大変だと思う。自分もチャリティーマッチを何度もやったことがありますけど、いろんな問題があって、1試合でも大変。これだけ長く続けられるのは彼の人間性だと思います」と強調した。

慈善試合前にジーコ氏は中田氏らとともに広島市の平和記念公園を訪問。原爆死没者慰霊碑に献花と黙とうをささげ「2度と起きてはいけないこと。世界中で今も紛争が絶えないなかで広島を忘れてはいけない。平和のメッセージを伝え続けたい。スポーツには国境がない。お互いが尊敬することで平和が生まれる」と世の中から紛争が無くなることを願った。

セレブリティやスポーツ選手による慈善活動が社会貢献の一環として広く認知される時代。日本のスポーツ界では東日本大震災や能登半島地震など非常時に慈善活動を行う団体や選手は多いが、日常でのチャリティー意識は世界に比べてまだ薄い。

ジーコ氏は「条件が整えば広島でチャリティーマッチを継続すべきだと思う。それは歴史的にすごく大事なことになる。観客席には子供も多かった。このようなイベントは日本の未来のためにもなる」と来年以降の継続に期待した。

中田氏は「鹿島アントラーズがジーコの意思を継いで毎年開催した方がいい」と提案した。世界で紛争が絶えない今、唯一の被爆国としてスポーツ界からも発信できることはある。広島で開催されたレジェンドマッチは世界平和を願うジーコ氏からの日本サッカー界へのメッセージでもあった。

ジーコ/Zico
本名はアルトゥール・アントゥネス・コインブラ。1953年3月3日生まれ。ブラジル・リオデジャネイロ州出身。フラメンゴやイタリア・セリエAのウディネーゼで活躍、ブラジル代表でも3度W杯に出場。一度引退したが1991年に鹿島アントラーズの前身住友金属に入団。1993年Jリーグ元年の第1ステージで鹿島アントラーズを優勝に導いた。2002年に日本代表監督に就任。2006年W杯ドイツ大会に出場したが1次リーグ敗退した。その後はトルコ1部フェネルバフチェやイラク代表などの監督を歴任。現在は鹿島アントラーズのアドバイザーを務めている。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=YUTAKA/アフロスポーツ

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