PERSON

2025.02.17

「自分より実力がないヤツの出世が許せない」という嫉妬心の解消法

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「私のほうが実力はあるのに、『なんでアイツが?』と思う同期や後輩が出世やチャンスをつかんでいきます。彼らのことが許せないし、嫉妬する自分にも嫌気がさします。こんなときはどうすればいいんでしょうか?」という御相談をいただきました。

分かります。育成現場に15年いると、「なんでアイツが?」という愚痴や不満をたくさん聞きますし、僕自身も周りの出世を妬み、キラキラ輝いていくライバルたちが眩しすぎて目を背けてしまったことが何度もあります。

今回はそんな知見をふまえて、「自分より実力がない人が出世していくモヤモヤ感」との向き合いかたを、ゆっくりほぐしていきたいと思います。

「許せない」「見返したい」は30歳までに捨てましょう

まず、他者の出世に嫉妬してしまうのは、あなただけではありません。

そもそも私たちは、友人であっても嫉妬心を持たずに成功を祝福することは難しい生き物なので、みんな一緒。

「嫉妬」と英語の「Sit(くそ!)」が同音なくらい、その感情は万国共通です。

芸人の世界も同期やライバルが「先に売れる」ことに敏感なので、僕はいつも吉本NSC生たちに「嫉妬心は恋心くらい普通の感情だよ」と伝えています。

しかし、想像力が豊かな芸人の中には、「まったくアイツの面白さが分からない!」「いつか見返してやる!」と、先に売れたライバルを敵視したり恨んだりする生徒も出てきます。

みなさんの職場でも、出世した人物の日頃の態度や人柄がいけすかない場合、似たような感情になることがあるのではないでしょうか?

そんなとき僕は、「その感情も分かるけど、他人への“許せない”や“見返したい”は30歳までに捨てたほうが得するよ」と伝えています。

なぜ「30歳まで」なんでしょう?

これは1万人を育成して分かってきたことですが、誰かの出世を妬み、その人を仮想敵にして、「いつか見てろよ」と仕事に打ち込むことで成果を得た人は、キャリアアップした場所でも“また誰かを仮想敵にしないと動けなくなる”からです。

例えば、ある教え子は「同期を見返したい」という一念で売れっ子になりましたが“仮想敵を負かすことが成功パターン”になっていたので、やがて「あのMCが」「あのディレクターが」「あの会社の偉いさんが」と、敵視する人をつくらないと気が済まなくなったのです。

もうお分かりだと思いますが、誰かを敵視することは“つねに主人公は相手であり自分は脇役になる”ということ。

他人を軸にした人生は30歳までに捨て、自分軸で思考していく。それが人格と品格が求められるリーダーポジションへの備えになるんですね。

あの人の出世は「打順」の違いだったりもします

相談者さんのように、他人の出世が許せない理由は「私のほうが実力はあるのに、なんでアイツが?」が多いです。

かつて僕も同じような感情を抱いていましたが、育成者になると“出世=実力がすべてではない”ということが分かってきました。

あなたの出世を決める上役は「個人」よりも「組織」を念頭に考えています。同世代の中から誰かを抜擢するとき、実力も重要ですが、登用によって組織にもたらす効果も重視しているのです。

例えば、日本の野球の一番バッターは、たくさんホームランを打つ強打者ではなく、機動力のある選手ですよね?

最初に打席に入る彼らは、実力以外にこんなスキルの持ち主だったりします。

  • 投手により多くの球種を投げさせる→味方の目を慣れさせ、傾向と対策を練らせる
  • 出塁したら持ち前の走力で生還を狙う→成功体験を早めにチームにもたらす
  • ベンチに戻ったら相手のクセや情報を伝達する→コミュニケーション能力が高い

会社においても、実力よりもチーム(世代)にもたらす効果が高い人材を最初に登用して、組織のボトムアップを図っているケースが多くあります。

なので、「なんでアイツが?」という感情に振り回されず、自分の打順が来たら「自分らしいフルスイングをしよう」と、四番打者のような感覚でドシンと構えておく思考も大切なんですね。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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