PERSON

2025.02.13

胃もたれするから肉を避ける、はNG。ずっと食べられる人が長生きする【和田秀樹×菊池武夫④】

日本を代表するファッションデザイナーの菊池武夫さんに、『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る。連載4回目。

食事はやっぱり肉が好き

和田 食事の好みは?

菊池 なんでも食べます。今はタンパク質が気になるので、納豆もね。昔は食べられなかったのですが、克服できました。むしろ、好きになった(笑)。

和田 すごいですね。私は今でも食べられません(笑)。そのくせ、人には納豆を勧めるんですよ。タンパク質を摂れるし、脳卒中の予防にもなりますから。

菊池 でもやっぱり、僕は肉が好きですね。本当に好きで。

和田 お肉は何が?

菊池 牛肉。でもね、豚も羊も食べるし、鶏も食べますよ。

和田 非常にいいことですね。日本の料理って、いろんな食材を食べるところがいいんです。例えば、鮨屋に行っても10種類ぐらいの魚を食べるでしょ。

菊池 そうですね。

和田 いろいろ食べることで、不足するものがなくなるんです。

菊池 雑食がいいんですね。

和田 そう。年を取るほど足りないときの害が増えてきますから、多数の品目を食べたほうがいい。中年になると「肉を食べると胃もたれする」なんて言う人がいますが、ずっと食べられる人が長生きするんですよ。

菊池 僕、脂身とかが好きで。ヒレ肉、シャトーブリアンなんかはまあまあ食べられますけど、ヒレ肉でも赤身は全然ダメ。

和田 なるほど(笑)。

菊池 今でも全然、胃もたれや胸やけなんかもしたことがない。

菊池武夫/Takeo Kikuchi
ファッションデザイナー。1939年東京都生まれ。1970年にBIGI、1975年にMEN’S BIGI、1984年TAKEO KIKUCHIを設立。DCブランドブームの火つけ役。現在も、TAKEO KIKUCHIのクリエイティブディレクターとして精力的に活動している。

長生きの人は胃腸が強い

和田 胃が強いんですね。「長生きの家系」というものがあるなら、それは胃が強いことだと思います。栄養をきちんと取っている人のほうが絶対に長生きしますからね。

菊池 うちのおふくろは96歳まで生きました。

和田 やっぱり。胃は大事にしたほうがいい。例えば僕に胃がんが見つかったとしても、手術はしないと思います。がんだけ取ってくれるならまだしも、胃を半分取られたり、3分の2取られたりするのは許せない。栄養状態がガクッと悪くなるので、がんで死なない代わりにヨボヨボになっちゃう。

菊池 そうですよね。

日本の医療は栄養学を軽んじすぎている

和田 僕が日本の医学の一番悪い点だと思っているのが、栄養学を軽んじていることです。昔からそうで、その結果、日露戦争では戦死者の3倍が栄養不足で死んでいます。栄養不足のため、脚気(かっけ)になったんです。

菊池 原因に気づかなかった?

和田 気づいていながら改めなかったのです。このため太平洋戦争では、さらに多くの犠牲者が出ました。戦死者の4倍ほどの人が餓死で亡くなっています。その数、400~500万人ですよ。

菊池 むちゃくちゃですね。

和田 唯一、それに対抗したのが高木兼寛という海軍の軍医です。兼寛はイギリスに留学した際に「イギリス人は体も大きい。脚気もいない。結核もいない」と気づき「日本人はもっと肉を食べないと」と、海軍に肉食を勧めたんです。牛肉は高価だったので豚肉にしたのですが、どうも人気がない。そこで日本人が好む味を試行錯誤してできたのが“海軍カレー”ですよ。

菊池 あの横須賀カレー? それが始まりなの。

和田 そうです。それが広まり、今やカレーは国民食ですよ。

菊池 始まりはポークカレーだったんですね。

和田 世界中でも珍しいですよね。インドは豚を食べないし、イスラム圏の人も豚を食べない。中華にはカレー粉で味付けした料理があるけど、ポークカレーを食べるのは日本ぐらいでしょ。

菊池 でも一番おいしいんじゃないかな。

和田 しかもポークカレーは何にでも合う。うどんを入れてもおいしい。

菊池 高木兼寛さん、僕はあんまり名前を聞いたことがないけど、功労者なんですね。

和田 はい。それなのに結局、日本の医学はずっと栄養学を無視し続けてきたんです。僕らが子どものころはまだ「食べないと大きくなれない」とか「元気になれない」などと言われましたが、僕らよりも10歳下ぐらいの人からは、わずか1%~2%しかいない肥満児を問題にして「食べるな」と言い出した。

菊池 子どもは食べなきゃダメでしょう。

和田 その通りです。栄養をちゃんと取っているほうが、薬なんかよりよっぽど健康にいいと、僕は信じています。

菊池 実感として、それは正しいと思いますね。

和田秀樹/Hideki Wada
精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

ウイスキーとジャズが好き

和田 お酒は飲まれますか。

菊池 飲みますよ。僕ね、体質的に飲んでも飲まなくてもいいんですけど、バーなんかで飲むのが大好きなんです。

和田 似合いそうです。

菊池 なんでも飲めますけど、やっぱりウイスキーがお酒のナンバーワンかなと。

和田 なるほど。

菊池 親父はね、子どもが酒飲むのを全然嫌ってなかったんです。「飲めるなら飲め」っていう感じだったので。だから若いころから(笑)。

和田 いいですね。夜、仕事終わりにバーに行くなんて素敵です。30分でも1時間でもくつろぎの時間を持つのは、精神的な健康にもいいことですから。

菊池 たしかに。

和田 菊池さんはジャズがお好きだとか。

菊池 そうですね。

和田 ウイスキーを飲みながら、ジャズを聞くなんて格好いい。

菊池 自宅で飲むときは部屋を暗くして、ボーッとしています。

和田 ゆったりくつろげるので、とてもいいと思います。ジャズはどんなものを?

菊池 この間ね、馬場智章さんの演奏を聴いたけど、いいですよ。めちゃくちゃいい!

和田 サックスの?

菊池 そう。久しぶりに鳥肌が立ちましたよ。

和田 ちなみにジャズではないですけど、今ニュースになっているニュージーンズとかは。

菊池 BTSとかはね、もうずいぶん前から最高だと思って。

和田 さすがですね(笑)。

※5回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=杉田裕一

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年3月号

自分らしい、靴と鞄

GOETHE(ゲーテ)2025年3月号

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年3月号

自分らしい、靴と鞄

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ3月号』が2025年1月24日に発売となる。今回の特集は“靴と鞄”。エグゼクティブが実際に愛用するものから、オンとオフを格上げし、ライフスタイルを充実させる「自分らしい」靴と鞄を紹介する。表紙にはSnow Manの目黒蓮が初登場。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる