プロレスラーに必要な能力というのは多岐にわたり、肉体を駆使した総合エンターテインメントなどとも呼ばれるプロレス。身体能力の高さに、盛り上げに必要な惹きつける魅力、さらにはキャラ立ちや試合を盛り上げるクリエイター面、そのすべてが備わっているのがトッププロレスラーだ。鍛え上げた肉体と華やかさを兼ね備える女子プロレスラーたちはどのように肉体と向き合っているのか。『ゲーテ3月号』のタンパク質特集の扉を飾り、実生活でも「タンパク質」を重視しているという中野たむに、肉体との向き合い方を聞いた。 【特集 タンパク質】
3時間ごとにタンパク質を摂る毎日
──中野さんがタンパク質を意識して摂取するようになったのはいつ頃ですか？
私はもともとアイドル活動をしていたのですが、「タンパク質が重要だな」って思い始めたのは、アイドルからプロレスラーに転向してからです。
当時の所属団体の代表が「プロレスラーは食べんとあかん！」という方で、いっぱい食べさせてくれたのですが、普通に太ってしまって……。
動きづらいし、見た目も可愛くないので、パーソナルトレーニングを受けて肉体改造しました。そこでタンパク質を摂って、筋肉量を減らさずに絞る方法を覚えて、10kgほど脂肪を落としました。
──1日のルーティンを教えてください。
まず朝起きたらすぐ、1時間ほどランニングマシンで早歩きしています。エネルギー源が枯渇している状態での有酸素運動は脂肪が落ちやすくて、早歩きくらいの速度のほうが燃焼作用も高いみたいです。その時に、疲労軽減や筋肉回復のためBCAA（必須アミノ酸）を飲んでいます。
有酸素運動が終わったらタンパク質がメインの朝ごはんを食べます。
以前パーソナルトレーナーさんから「3時間ごとにタンパク質を摂らないと、筋肉が落ちていって代謝も下がる」ということを聞いたので、朝食後は3時間経つごとにタンパク質を20gずつ摂るようにしています。だから、基本的には一日中ずっとタンパク質を摂取している感じです。
タイトルマッチなどの大事な試合の前には、このルーティンを守るようにしているんですけど、プロレスラーは遠征が多く、つい美味しいものを食べて、崩してしまうこともありますね。
3月22日愛知県安城市生まれ。アイドル活動を経て、2016年にプロレスラーデビュー。2017年に女子プロレス団体「スターダム」に所属。2020年にリーダーとして「COSMIC ANGELS」を結成し「アーティスト・オブ・スターダム王座」を戴冠。史上最多となる7度の防衛に成功し、週刊プロレス主催のプロレスグランプリ「ベストユニット」に3年連続で輝く。2023年には団体最高峰のベルト「ワールド・オブ・スターダム王座（赤いベルト）」と「ワンダー・オブ・スターダム王座（白いベルト）」を戴冠し、史上2人目の赤白2冠王者となり、東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」女子プロレス大賞受賞。X：@tmtmtmx Instagram：@tam_nakano
低糖質レアチーズケーキ、プロテイン蒸しパンなどタンパク質スイーツを独自に考案
──タンパク質は主に何から摂取しているんですか？
プロテインから摂ることも多いのですが、「咀嚼できる固形物から摂取したほうが良い」というのを聞いて以来、基本的に鳥のささみを食べるようにしています。常に冷蔵庫に5㎏くらい冷凍のストックがあります。
食べる時は、シリコンスチーマーに冷凍したささみをポンポンポンっと3個入れて、キノコや野菜も一緒に入れてレンジでチンしています。そのままだと味気ないので、キムチとか好きな味のものと一緒に食べていますね。コンビニのサラダチキンもよく食べます。
プロテインを固形物にすることもあります。水に溶かしたプロテインをシリコンスチーマーに入れてレンジでチンすると、バリバリのおせんべいみたいになるんですよ。これが持ち運びに便利です。
私は食べるのが大好きなので、食事制限は頑張っているんですけど、つい甘いものを食べてしまいがち。「我慢しなきゃいけないけどどうしても食べたい」という時にプロテインに頼っています。
──「食べるのが大好き」ということですが、ささみやプロテイン以外で、美味しくタンパク質が摂れるおすすめの食べ物ありますか？
そうですね。お刺身とかお寿司が好きなので、マグロの赤身やイカ、タコ、貝類などはよく食べます。
あとは、カッテージチーズがすごくいいですよ。カッテージチーズにレモン汁と甘味料のラカントを混ぜるとレアチーズケーキになります。これは脂質も糖質もほとんどなくて、ほぼタンパク質のみなのでめちゃくちゃおすすめです。
あとは、自分でプロテイン蒸しパンを作りますね。プロテインにおからパウダー、サイリウム、ベーキングパウダー、甘味料のラカントを入れてレンジでチンするだけ。すごく簡単に作れて持ち運びもできます。
タンパク質だけ摂取して生きていたい
──かなり工夫してタンパク質を摂取しているんですね。ちなみにXのプロフィールにある住所は「ろーるけーきのまんなかのふわふわ」となっていますが、ロールケーキは食べないんですか？
真ん中のフワフワ部分に住んでいますけど、ロールケーキは食べません！
タイトルマッチなどの特別な試合で勝って「いい試合ができたな」という時には、ケーキとかピザとかジャンクなものを、その日だけ食べるということはあります。でも試合に勝った時だけで、負けたら落ち込んで寝ます。
──プロレスラーは相手の技を受けたり、受け身を取ったりするので、適度に脂肪をつけることが必要そうに思いますが、そこは何か意識していますか？
脂肪って意識しなくても、遠征先でご飯食べたりしていつの間にかついちゃうんですよ。それに私の場合は、体質的に節制しないと脂肪がつきすぎちゃう。
あと、プロレスを始めるとみんな脂肪がつくんです。受け身を取っていると、食生活を変えなくても、体を守ろうとして脂肪が自然についてくるみたいですね。
たぶん、タンパク質さえ摂っていれば、人間は健康的に美しく生きていけるはず。髪のツヤや肌のハリなど美容にも効果的なので、タンパク質だけ摂って生きていきたいくらいです！（笑）
