PERSON

2025.01.17

実は同期一番のバケモノ芸人。河本が語る相方・井上聡のすごさ

放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年以上にわたって人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんが、人気芸人・クリエイターと対談する本連載。今回のゲストはNSC大阪校13期で同期だった、次長課長・河本準一さん。駆け出し時代の青春の日々や、多くの大御所から可愛がられる河本さんの社交術、生活保護受給問題や感極まって涙を流した先輩芸人への思いなどを全7回にわたって聞いた。第3回。

桝本さんと河本さん

今も月の半分は井上と一緒に仕事をしている

河本 最近「次長課長が2人で活動しているのを見ませんね」って言われるけど、舞台としては月に10本出ているし、大阪で番組もある。2週間に1回ラジオもやってるし、月の半分は一緒に活動してるね。

桝本 テレビを見る側の人間が間違えがちなポイントは、テレビで見かけなくなる=その芸人さんが終わった、と思いがちなことだよね。

河本 あと、井上としてはもう、テレビは精一杯やりきったと思う。ジャッキー・チェンにも3回も会えてるし(笑)。

桝本 あいつ、芸能界に入ってきた理由は「ジャッキー・チェンに会いたいから」やからな。

河本 そのジャッキーに3回も会って、しかも井上に会うとジャッキーは爆笑する。なぜかといったら、広東語のセリフを完コピしているから。

なので、井上のなかで今は仕事のセカンドステージ。憲さん(木梨憲武さん)と一緒で、もう好きなことだけをやらせてくれという段階。でも、井上とは仲いいよ。僕たちがネタやっている時って、中学生の頃の休み時間の2人そのままだし。「休み時間」って聞くと手を抜いてるみたいだけど、そうじゃなくて、「2人で喋ってるだけで面白い」って感覚。今でも俺は、誰よりも井上を笑かしたいと思ってる。井上が笑うと客も笑うし、その時間が楽しい。

桝本 30年間、そんなに仲よくやれる秘訣は何?

河本 NSC入ってからコンビ組んだ人とは違って、お笑いを目指す前からの仲だから、相方の人となりを分かっていることかな。だからキレる瞬間も、ウケる瞬間も分かる。ダウンタウンさんもナインティナインさんもそうだよね。

河本さん
河本準一/Junichi Komoto
1975年岡山県生まれ。NSC大阪校を経て、同郷の井上聡とのお笑いコンビ「次長課長」として1995年にデビュー。2002年に東京進出後、一躍人気芸人となる。近年はYouTuberとしても活動するほか、地元・岡山での農業や社会貢献活動にも取り組んでいる。

生活保護の騒動下でも「河本が出ないなら自分も出ない」と言った

河本 生活保護の問題が出て、スポンサーが「河本が出るなら番組から降りる」って言ってきた時も、井上はプロデューサーに「河本が出ないなら僕も出ません」と言ってた。そういう形で『火曜サプライズ』とか『シルシルミシルさんデー』とかは、全部コンビで降板したね。井上がそのことで僕に直接何かを言ってきたことはないけど。

桝本 言葉がすごく少なくて聡っぽいわぁ。僕は実は聡とはそんなに交流ないけど、言っていることはちゃんとまともなヤツなんです。

河本 僕よりまとも。僕のほうが感情的です。

桝本 あと、愛情深い。

河本 井上のほうがマネージャーにも親身。マネージャーからいろいろ相談を受ける時は「河本、忙しいんだから先に出ろ」って言われて、あいつはマネージャーと2時間喋ってから帰る。そういうヤツ。

桝本 基本的に聡のほうがストイックだよね。『エンタの神様』のディレクターからよく聞いてたのは、ネタに関して井上を納得させるのが大変だったって話。実はその時、俺は作家として『エンタの神様』に参加していた。作家がボケ案などを提案して、それを総合演出の五味(一男)さんがまとめて、芸人さんにプレゼンする流れだった。

河本 僕は番組に出さえすればウケる自信があったので、ネタは何でも良かった。当時は五味さんが「犬井ヒロシ1分半」「インパルス7分」「友近7分」みたいに分数を決めていて、「今回は次課長9分ね」ってディレクターから下りてくる。そうなったら9分のネタをつくらなきゃいけないじゃない?

俺としては「ルミネで10分やってるネタを1分縮めりゃいいでしょ?」って感じで、早く作って帰りたい。でも、井上が認めない。何でかっていうと、五味さんから入った「あそこにこの動きを入れて欲しい」という指示に井上が納得しないから。それをディレクターが朝まで説得してた。

桝本 五味さんは、演出家の性分として自分が選んだボケを芸人にやらせたい。でも芸人さんにもプライドがある。何だかんだで受け入れていく芸人さんが多いんですけど、井上は納得いくまでひたすら粘るタイプなんだよね。

河本 俺としては眠たくて眠たくて「この1行のボケで何時まで話すんだよ」って感じで。

桝本 井上は怠け者じゃない。

河本 逆にこだわり過ぎていて、ディレクターが困るくらいお笑いに対してまじめ。

桝本 13期一番のお笑いモンスターは、次長課長の井上かもしれない(笑)。

※4回目に続く

桝本さん
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子をM-1決勝に輩出している。

TEXT=古澤誠一郎

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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