PERSON

2025.01.16

sio鳥羽周作が伝授、クレーマーやSNSアンチを抱き込む神対応術

仕事が上手くいく人といかない人の差はどこにあるのか? それは「いかに他者への想像力を発揮し、意中の人にモテるかが鍵」と語るのが、「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏だ。多くのクライアントに選ばれ続けてきた鳥羽氏が、そのノウハウを伝授する『モテる仕事論』より一部を抜粋・再編集して紹介する。第3回は、クレームやSNSのアンチを味方につける方法について。【その他の記事はこちら】

鳥羽周作

クレームは愛の裏返し、ピンチはチャンス

うちの店にも、お客さんからクレームが来ることはあります。そして僕は、クレーム対応が非常に得意です。実際、店にクレームが来たら、大体僕が対応します。

クレームを言うお客さんに対して、僕からの第一声は決まっています。

「ありがとうございます!」

そしてこう続けます。

「それほど我々のことを思って怒っていただき、本当にありがとうございます。普通は面倒臭くてそこまで言ってくださる方は滅多にいないのに、わざわざ言ってくださり、感謝しかありません。次からは必ず対策をして、二度とないようにします。ですので、お客様もぜひまたいらしてください」

誠心誠意応えれば、ほとんどのお客様は受け入れてくださり、最終的にはファンになってくれます。つまり、クレームを受ける時は、新たなファンを作るチャンスでもあるのです。

クレームを言うお客様の中には、必ず「こうしてほしかった」という思いがあります。その思いを受け止めて改善することを、僕はほかのさまざまなことと同じ次元で捉えます。それは僕がビジネスにとって何より大事だと考える「愛と想像力」の問題だからです。

そもそもクレームも、ある種の愛だと僕は思います。愛の裏返しこそがクレームです。そこをくみ取ることができれば、クレーム対応はそれほど大変なことではないと僕は思います。

以前、ある飲食チェーンとコラボした時、初日に200件くらいクレームが来たことがあります。あるはずの商品が置いていないとか、サンプルと実物が違うとか。

僕は基本的にはアイデアを提供する立場だったのですが、SNSをしていたから、クレームが僕のところにも全国からたくさん来ました。その一つ一つに、どこのお店か聞いて、「お店と共有します。すみませんでした」と謝りました。

SNSのアンチへの対応も、これと同じです。「アンチはかまってほしいだけなのだから、スルーが一番」と言う人もいますが、僕はそうは思いません。

アンチもクレーマーと同じく、心の底には愛がある場合もあります。嫌悪の裏返しは、愛だと僕は思います。だからアンチの方にむしろ愛を持って接すれば、やがてファンになってくれることがすごく多い。

またSNSは、一対一ではありません。その人とのやり取りは、ほかの大勢の人も見ています。なのでアンチへの対応は、自分の価値基準や度量を示せる機会とも言えます。

対応する時は、決して否定的なことは言いません。「そういう考えもあると思うけど、僕はこう考えます」というような言い方をします。

するとたいてい「汚い言葉を使って、すみませんでした」と返ってきて、ファンになってくれます。やはり、何事も愛を持って接するのは、とても大事なのです。

前にSNSで、「お前、禊(みそぎ)もすませていないのに、レシピの投稿してんなよ」と言われたことがあります。それに対しても、怒らず感謝の言葉を添えて、引用リポストしました。

また、僕がSNSでよく使う、ヤバいをもじった「トバい」という言葉が鼻につく、という投稿を見かけた時は、こんな言葉をつけて引用リポストしました。

〈鼻についてしまってすみません。だけど、作っていただけて、めちゃくちゃうれしいです。ありがとうございます〉

するとこう返ってきました。

〈トバい、深いですね。自分で作って食し、いろんなことが伝わりました。もう鼻についてませんよ〉

どちらの場合も、もし僕が「うるせーよ、お前」と、やったりすると、おかしなことになってしまう。そうせずにあえて感謝すると、すべてうまくいく。それを見たほかの人が、こんな投稿をしていました。

〈鳥羽さんは抱き込み方がすごい。そりゃモテるよ、この人〉

自分にネガティブなことを言ってきたり、攻撃してきたりする人には、すべて感謝のスタンスを持つ。いい意見も悪い意見も、自分に矢印が向いている点は同じです。

それをベースにして、すべてに対し、感謝することが大事。そういう姿勢を取っていると、まわりは必ずいい評価をしてくれます。

鳥羽周作/Shusaku Toba
レストラン「sio」オーナーシェフ。sio代表取締役。 Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31歳で料理の世界へ。 2018年「sio」をオープン。同店はミシュランガイド東京2020から6年連続で掲載。 現在、「sio」「sio Aoyama」「o/sio」「o/sio FUKUOKA」「㐂つね」「ザ・ニューワールド」「おいしいパスタ」「NAGANO」「FAMiRES」と9店舗を展開。書籍/YouTube/SNSなどで公開するレシピや、フードプロデュースなど、レストランの枠を超えて様々な手段で「おいしい」を届けている。モットーは『幸せの分母を増やす』。

TEXT=鳥羽周作

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