仕事が上手くいく人といかない人の差はどこにあるのか? それは「いかに他者への想像力を発揮し、意中の人にモテるかが鍵」と語るのが、「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏だ。多くのクライアントに選ばれ続けてきた鳥羽氏が、そのノウハウを伝授する『モテる仕事論』より一部を抜粋・再編集して紹介する。第1回は、モテるの大前提となる“相手に対する想像力”について。【その他の記事はこちら】
相手に対する想像力を発揮する
相手に対する想像力を最大限に発揮し、相手が大事にしていることを理解し、それを褒め、やるべきことを順序立てて行う。そうすれば相手に好かれるし、必ず「モテ」ます。すべてはこれにつきると思います。
目的のゴールは、例えば恋愛の場合は「この人と付き合いたい」と思ってもらうこと、仕事の場合は「この人と仕事をしたい」と思ってもらうことです。自分の中でそういう方法が確立されると、再現性が出てきます。
恋愛の場合は、あまり何度も使うことはないかもしれませんが、仕事の場合は、より多くの人とたくさんかかわらなければならないので、方法を確立させることはとても重要です。
まず誰と仕事をしたいかを決め、その人が何を大事にしているかを調べ上げます。そして相手のいいところをロジカルに伝えた上で、「僕ならこんなことができます」と情熱をもって提示します。
そんな風に、ほかの人なら入っていけないところまで入っていけば、まず間違いなく成功します。
ビジネスなど、人と何かをする場合、自分ではなく、まず相手のことを考える。その場で求められているものは何かを常に考え、それを提示することが大事だと思います。
恋愛でもそうです。女性は聞き上手な男性の方が好きなようです。おそらくその理由は、自分が尊重されていると感じるからでしょう。
僕は割とよくしゃべる方ですが、それでも女性が話し出すと、「そうだよね」とか「そこをわかってもらえると全然違うよね」という風に、聞き役に回ります。結局仕事も恋愛もクライアントワークなのだと僕は思います。
愛とは、相手に対する熱意のことです。そして何か成し遂げたいことがあれば、それを胸に秘めるより、口に出す方がいいと思います。
僕は、ニューバランスのスニーカーが大好きで、ずっと愛用しています。いっときは、毎月6足ほど買っていたこともあります。
ある時、僕の思いが通じてニューバランスの方にプレゼンする機会をいただけることになりました。初めて先方にお会いした時、最初は用意したプレゼンの資料を出しませんでした。
「僕は、本当にニューバランスさんが好きなんですよね。今日もこうして履いてきました」
こう言って僕は、自分の足元を見せます。すると当然、向こうの方は笑顔になります。
「あ、ほんとだ。ありがとうございます!」
この時点で向こうは、僕の熱量にすでに打たれています。そこで僕はおもむろに企画書を取り出します。
「一緒にお仕事をさせていただけたらと思って、企画書を作ってきたんですけど、お目通しいただけませんか」
そしてニューバランスの方が企画書に目を通し始めると、僕はこう言いました。
「僕はニューバランスさんの、単に流行を追いかけるのではなく、本質を追求しているところが大好きなんです。僕の料理も流行の盛り付けをしているわけじゃないし、わかりやすい下品な味にする気もないです。本質と向き合って、丁寧に取り組んでいらっしゃるところが、僕とよく似ていると、僭越(せんえつ)ながら思っているんです」
相手が何を大切にしているかをきめ細かく、きちんと理解した上で、そこをリスペクトすることが大事です。そうすれば必ず相手に刺さり、こちらの考えていることは実現します。
僕が、大好きなニューバランスのスニーカーをお金がなくても買い続けたことは、いわば投資です。また、無理して買い続けてきたことが、僕の自信にもなっていました。これだけの熱意を持っているのだから、必ずいつか思いは通じる。僕はそう信じて疑っていませんでした。
もちろんそういう僕を見て、「やめとけよ」と言う人もいます。でも僕は聞く耳を持ちません。自分にしかわからない感覚でやっているのだから、人に何と言われようと関係ありません。
そのような揺るぎない気持ちこそが、物事を成就させるのだと思います。
鳥羽周作/Shusaku Toba
レストラン「sio」オーナーシェフ。sio代表取締役。 Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31 歳で料理の世界へ。 2018年「sio」をオープン。同店はミシュランガイド東京2020から6年連続で掲載。 現在、「sio」「sio Aoyama」「o/sio」「o/sio FUKUOKA」「㐂つね」「ザ・ニューワールド」「おいしいパスタ」「NAGANO」「FAMiRES」と9店舗を展開。 書籍 / YouTube / SNSなどで公開するレシピや、フードプロデュースなど、レストランの枠を超えて様々な手段で「おいしい」を届けている。モットーは『幸せの分母を増やす』。