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2024.08.10

【バービー】町おこし・下着プロデュース…もがきながら掴み取った、自分が自分であるための道

デビュー後すぐにブレイクするものの30代前半までは、仕事も人生も迷走気味。そんなバービーさんが、自分がわくわくすることを次々と仕事にできたのは「人とのご縁のおかげ」だという。そうした縁を手繰り寄せる秘訣とは。

サポートする人が現れるのは「下心がないから」

2016年から故郷、北海道夕張市栗山町の町おこしに携わり、2017年にはガーデンデザイナーの資格を取得してフラワーショーなどにボランティアで参加。2020年には念願の下着プロデュースをスタートするなど、さまざまな分野で活動しているバービーさん。そのどれもが、20代から30代にかけて、自分探しに迷走した末に見つけた「笹森花菜(本名)がしたかったこと」ばかりだ。

町おこしは、大学進学以降の10年以上を都会で暮らしたことによって故郷のすばらしさを再認識したのがきっかけ。ガーデンデザイナーは、自分が本当に好きなものは何かを見つめ直した際、子供の頃から植物が好きだったことに思い至り、資格を取得。今や、『趣味の園芸』(NHK出版)で連載を持つまでに。

「ピーチ・ジョンさんとのコラボ下着が発売されるようになったのは2020年ですが、その2〜3年前からずっと『下着のプロデュースをしたい!』って、周りに言いまわっていたんです。既存のブラには、私のようにアンダーバストが大きい人向けでかわいいデザインがあまりなかったから。

ツテを求めて、経営者が来るような店を飲み歩きましたし、話がある程度まで進んだ案件もあったんですが、実現には至らなくて。もう無理かなと思っていた時、なじみのスタイリストさんがピーチ・ジョンさんとつないでくださって、商品化が実現しました。

町おこしにしても、ガーデンデザイナーにしても、人とのご縁のおかげで、やりたかったことが形になりつつあります。人に支えられているラッキーさは、めちゃめちゃあるんですよ、私。本当にありがたいなって思います」

周りの人が応援し、手を貸したくなる。その理由はどこにあるのかをたずねると、「うーん、なんでしょう」と、しばらく考え込んだ後、「下心がないからかもしれません」という答えが返ってきた。

「人間関係をつくるのは昔から得意なタイプではないので、私に対してというより、私がやりたいことに賛同して、手伝ってくださる方が多い気がします。私に、これで儲けたいとか名をあげたいみたいな下心がないから、応援してくれるのかなって。だから、みんないい人ばかり! 利益狙いの人は、メリットのなさを早々とかぎとってすぐに離れていくんですよね。経営者の友達からは『それで採算とれるの?』と呆れられますが、その人が、心配して(利益が出そうな)別の話を持ってきてくれたりして(笑)」

うまく回る時が必ず来ると信じていた

心がわくわくしたら、まずは行動に移す。かなりのチャレンジャーと見たが、「無鉄砲過ぎて、周りが大変だと思います」と、笑う。

イギリスのフラワーショーのボランティアに参加した際も、ネットで募集を見つけ、事務所に相談する前に申し込みボタンを押していたとか。

「勇気を出して挑戦する、というより、気がついたら挑戦していたという感じですね。

それこそ、30歳前後は自分探しに一生懸命で、思いつくままいろいろ手を出していました。だから、失敗もたくさんしていますし、形にならなかったこともいっぱいあります」

トライ&エラーを続けて確信したのは「うまくいかない時もあれば、不思議なくらいうまく転がる時もある」ということ。

「同じことをしていても、見向きもされない時期もあれば、拍車がかかったように進むこともある。きっとタイミングなんでしょうね。

それがいつ来るかわからないけれど、どういうわけだか自分のなかに『拍車がかかる時が絶対に来る』という自信があるんですよ。だから、町おこしや下着のプロデュースは、何度つまずいてもあきらめなかったのかもしれません」

“セルフラブのアイコン”から意識的に降りた

バービーさんは、ここ数年、女性誌での連載やラジオ、YouTubeなどで、生き方や性、ジェンダー、結婚観などにまつわる本音を吐露し、女性を中心に共感を得ている。

なかでも支持されたのが、自分の個性や身体的特徴を否定せず、大切にするという考え。結果、瞬く間に “セルフラブ”のアイコンとして、メディアで取り上げられる機会が増えていった。

「私がラジオやエッセイでそんな話をし始めたのは、4〜5年ほど前。ボディポジティブとかルッキズムといった言葉が日本でも話題になった頃で、時代とかみ合ったのでしょうね。時代に必要なことを発信する存在として、オファーをいただくようになりました。

ありがたいことではあるのですが、それが続くうちに私が言っていないことも、まるで私の言葉のように扱われるケースが増えてきたんですよね。自分の意志で発言し、その言葉が正しく届くのなら嬉しいんですが、神輿をかつがれているような状態でいたら、自分がどんどん消費されていくような気がして」

自分の発言に背びれ、尾ひれがつき、知らないところで拡散され、時にはその責任まで負わされる。そんな怖さをひしひしと感じたバービーさんは「意図的にアイコンという役を降りなければ」と考え、そうした仕事をセーブするように。

芸人として下積みなくブレイクした時も、時代の代弁者としてもてはやされた時も、その状況に驕(おご)ることも浮かれることもなく、自分の本音と真摯に向き合う。

自身を無鉄砲と称したが、そうした冷静さと謙虚さ、そして、バランス感覚を併せ持っているようだ。

「分単位でスケジュールが入っているくらい仕事が忙しくて、やりきった感も感じていた頃でもありました。ちょうどプライベートでも変化があって、少しゆるやかに生きていきたいと思うようにもなっていたんですよね」

その変化とは、一般男性との結婚、そして妊活だ。最終回となる次回は、プライベート、とくにパートナーシップの築き方について話してもらう。

バービー
1984年北海道生まれ。2007年、お笑いコンビ、フォーリンラブでデビュー。芸能活動のほか、町おこしや下着プロデュースなど、多方面で活躍。近著に『わたしはわたしで生きていく。』(PHP研究所)がある。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=彦坂栄治

STYLING=里山拓斗

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