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2022.11.13

【鳥居みゆき】性的マイノリティは背徳感の嬉しさもある。思い込みや決めつけは危険

お笑いタレント、女優、作家としてマルチに活躍する鳥居みゆきさん。最近はEテレの子ども向け番組『でこぼこポン!』への出演でも注目を集めている。学生時代、周囲から「変だ」と言われ、生きづらさを感じたという鳥居さん。芸人を目指したきっかけや自分を表現するための思考法など、話を聞いた。

鳥居みゆき

私に「変だ」っていう人こそ、変なんだ

子どもの頃から人前に出るのが得意じゃなくて、話をするのが気恥ずかしかった。めちゃくちゃ人見知りだったんですよ。人付き合いなんてしなくていいと思っていたから、友達もほとんど皆無。それで、周りから「あの人、変だ」って言われるようになって。でも、私は私なんだから、人と同じである必要はない。「変だって言うほうが変なんだ」って考えていましたね。

自分を表現できる場がほしかった。それが“お笑い”だったんです。初めは芸人ではなく、脚本か演出をやりたかった。当時、私が見ていた舞台のコメディが全然おもしろくなくて、私だったらもっといいものを作れるのにと思って。でも、おもしろくないのは脚本や演出が悪いのか、演者が悪いのかがわからない。いろいろ考えた末、「一度は演じる側の立場になってみないと、おもしろい脚本を書くことはできない」という結論に至って、お笑い芸人になることにしたんです。

お笑い芸人は、性分に合っていました。定時の仕事に就くより自由にいられるし、人と違う価値観をもっていても構わない。お笑いの世界では「変だ」って言われることが、ある意味ほめ言葉なわけじゃないですか。だんだん「この道を極めたい」とか、「有名になりたい」とか、「全身にツノを生やしたい」とか、いろんな意欲が湧いてきたんです。

最初のころは「有名になりたい」って欲はそんなになくて、「単独ライブができれば、いいな」くらいに考えていました。でも、知名度がないと、ライブに人が集まらないということに気づいたんです。有名になればそれだけお客さんが来てくれて単独ライブが開けて、やりたいことがやれるようになる。テレビ出演はやりたいことへの近道かもしれないと思えたんです。まあ実際は大変でしたけど。

下積み生活も経験しましたが、少しずつ人気が出て、ヒットネタも生まれた。私のことを評価してくれる人が出てきてくれて、お笑い番組で賞をいただいたりもした。評価されるのはうれしいけど、正直、過去のことはどうでもいい。過去の栄光に縛られたくないし、それが私の未来を狭めてしまうことにもなると思うんです。一度評価されたネタでお客さんが喜んでくれたとしても、それは想定内のことでつまらないじゃないですか。

「鳥居さんらしさって何?」と聞き返したい

それと、私は人から「いつもの鳥居さんらしく」と言われることが大嫌い。「あなたは私の何を知っているんですか?」と聞き返したくなります。ハイテンションで爆発状態なのも私だし、嫌々な気持ちで仕事しているのも私。人間って、たいていの人はネガティブな面とポジティブな面を併せ持っているんじゃないかと。思い込み的な判断で、私の自由を奪ってほしくないですね。

最近の世の中は、そういう思い込みや決めつけが多いような気がします。たとえば、LGBTQ問題。社会では「どんなセクシャリティの人も平等に受け入れよう」といわれているけど、すべての人が望んでいるわけではないと思う。私はバイですけど、「マイノリティの背徳感がうれしい」ってところがあるし。公にすることだけが正解じゃない気もするんです。

今は多様性の時代っていいながら、かえって窮屈な時代になっている。女性の社会進出に関してもそう。女性の地位が上がるのはいいことかもしれないけど、「社会進出が正解」という風潮になってほしくない。「今のままでいい」とか、「別に活躍したくない」と思っている女性もいるはずですから。

タバコ問題に関しても、なんとかしてほしい。私はタバコが大好きでルールを守って吸っていますが、それでも嫌われる。「今は多様性の時代。お互いを認め合い、つながっていかなきゃならないんじゃないの」って言いたくなりますね。

私の人生はまだまだ旅の途中。自分は「これでいいんだ」なんて満足せずに、これからも自分らしく生きていきたいと思います。

Miyuki Torii
2001年に芸人デビュー。「ヒットエンドラーン」のネタでブレイクする。映画やドラマのほか、小説の刊行などマルチに活躍。発達障害をテーマにした番組『でこぼこポン!』(Eテレ)に出演中。

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■鳥居みゆき「仕事とは、“自分が狂わないための時間潰し”です」【岸博幸 対談】

TEXT=川岸徹

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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