MAGAZINE &
SALON MEMBERMAGAZINE &
SALON MEMBER
仕事が楽しければ
人生も愉しい

PERSON

2024.07.12

大イベントを数々成功させてきた西野亮廣が、札幌ドームの赤字の理由を、誰よりもわかりやすく、誰よりも鋭く解説! 集客に困ってやった“画期的な改善(それも10億円)”が、そもそも大間違い!

23万部のロングセラー『夢と金』の著者であり、今、ビジネスパーソンが追うべき人物の筆頭である西野亮廣さん。実は西野さんは、1万人以上を動員する武道館や、幕張メッセなどの“大箱”でのイベントも成功させてきた。先日「札幌ドーム赤字」のニュースが話題になっていたが、そんな「エンタメ屋」での視点から、その原因を鋭く斬り、解決策を提示する! イベント運営に関係する人、みんな聞くべき凄い内容! 今回も、音声メディア「voicy」で配信中の「#西野さんの朝礼」から編集してお届けする。(※今回の記事を音声で楽しみたい方はvoicyから)

今日は【窮地に追い込まれている札幌ドームの「そうじゃない感」】です。

第152回
“施設はいい”のに、なぜ集客できないのか? アーティスト(出演者)の気持ちへの想像が「素人レベル」すぎる!

西野亮廣

僕は敵ではなくて「どうか持ち直して欲しいな」と願っている人間です

何かと話題の『札幌ドーム』が日本ハムファイターズの本拠地移転後初めてとなる決算(2023年度)で、約6億5000万円という過去最大の赤字となったことを発表しました。
ちなみに1年間の売り上げは前年度から57%減少して、約12億7000万円だそうです。

くれぐれも言っておきますが「売り上げ」が12億7000万円です。

日ハム戦が年間60試合ほどあったそうなのですが、それがゴッソリと無くなった為、イベント日数は22年度の124日から23年度は98日に減少したそうで、「これはヤバイぞ。もっと使い勝手をよくせねば! たぶん、会場が大きすぎるから皆、利用してくれないんだ!」となったのか、なんと10億円をかけて、アリーナを暗幕で区切って、入場者数を約2万人規模に縮小する「新モード」を提案したものの、23年度の利用はわずか3日だったそう。

やることなすこと裏目に出ちゃって、「日ハムに意地悪をしたバチが当たった」みたいな昔話みたいな展開になっていますが、これに関して、普段、大きなホールなどを利用させてもらっているエンタメ屋からお話しさせてください。

テレビのコメンテーターさんとかは、普段あまり大きなホールを借りたりしていないと思うので、こっち側の意見を聞くことって、あまり無いと思うので、とくに札幌ドーム関係者の方は耳を傾けていただけると嬉しいです。

僕は敵ではなくて、死体蹴りをするような人間でもなくて、「どうか持ち直して欲しいな」と願っている人間で、札幌ドームの偉いさんからすると、「ていうか、お前は何者だよ? 一タレントでしょ?」と思われるかもしれないので、簡単に自己紹介をしておくと、集客の要でもある色恋やエロやインフルエンサーを一切排除して、ものすごい角度から、ものすごく集客している人間です。
あとは過去の実績を調べてください。

そもそもの問題として「北海道公演」は昔から鬼門

きっと札幌ドームさんは「もっとアーティストさんに利用して欲しい」と思われていることでしょう。

札幌ドームの最大収容人数は53,820人で、固定客席数だけでも41,566席あります

そりゃ、これだけの席数を埋めてくれるアーティストさんが利用してくれたら最高だと思うのですが、そういった大きな場所を利用する側からすると、まず『札幌ドーム』ウンヌン関係無しに、そもそもの問題として「北海道公演」が昔から鬼門なんです。

これは北海道の方なら今ごろ首を上下にブンブン振られていると思うのですが、北海道って、よく「全国ツアー」から外されるんです。
北海道公演だけ無いんです。

理由はいくつかあって、まず北海道って他の都市に比べてシンプルにお客さんの集まりが悪いんです。
これは僕の主観ではなくて、各アーティストが数字で証明しているので調べてください。
いろんな大物アーティストが北海道公演だけは苦戦しています。

そして、お客さんが集まらない割に、機材移動費がメチャクチャ高いんです。
船で運ばなきゃいけないので。

で、これが厄介なことにツライのは運営側だけじゃなくて、お客さんもなかなか厳しい目にあっています。
たとえば『札幌ドーム』でライブがあったとしても、道外のお客さんを数万人運ぶだけの「移動手段」がないんです。

飛行機をイメージしてください。
1日に数便しか飛んでないじゃないですか?
でも、飛行機ってせいぜい200〜300席でしょ?
なので、「札幌公演のチケットを取れても、札幌まで行けないので、札幌公演は諦めます」ということが起きている。

これは『札幌ドーム』の責任じゃなくて、日本列島の責任です。

北海道に人を数万人運ぶのって、そもそも無理ゲーに近い。

となってくると、『札幌ドーム』はメインターゲットを飛行機や船に乗らなくていい道内の人」にしなきゃいけない。

北海道内から数万人のお客さんを年間に何十回も呼べるアーティストなんて地球上に一人も存在しないので、結論としては『札幌ドーム』は何が何でも日本ハムファイターズを手放すべきではありませんでした

これは言うまでもありませんが、北海道に大きなハコを増やすことはできますが、北海道に球団を増やすことはできないんです。

べつの球団が北海道にお引越しするメリットは1つもないし、じゃあ「新球団を作ればいいじゃないか!」となっても、対戦カードの都合上、それぞれのリーグで偶数じゃなきゃいけないから、増やすとなると一気に4球団増やさなきゃいけない。
これは現実的じゃないですよね。

とにかく、北海道に大きなハコを増やすことはできますが、北海道に球団を増やすことはできないんです。

となってくると、ハコ側と球団側、この二者の交渉において、立場が弱いのは明らかにハコ側(札幌ドーム側)になるわけで、札幌ドームがファイターズに対して強気の交渉をする…というのは社会人としては狂気の沙汰です。

この場合、ハコ側に交渉の余地なんてないんです。
圧倒的に不利だから。

交渉にあたられたファイターズ側の方の本音は「ちょっと待って、マジで言ってる? いやいや、この条件を断ったら、あなた方が損をするから、ここは飲んでよ。できれば一緒にやりたいんだって」だったと思います。

これに関しては後の祭りなので、死ぬほど反省して(いろんな人に謝って)、次に進みましょう。

「新モード」が使ってもらえない理由

問題は、日本ハムファイターズが出ていったその後の札幌ドームの打ち手のダメダメっぷりです。

「ハコが大きすぎるから、暗幕で区切ろう! そうしたら利用してもらえるだろう!」とか何とか言って、10億円かけて、巨大な黒いカーテンみたいなの作ったわけですが、誰ですか、あれを提案したの?

あれは、大きなお金を払ってホールを借りるアーティスト側の気持ちを何も理解できていない。

簡単に説明します。

時々、Xとかで、アーティストが(ライブのカーテンコールか何かで)客席をバックに撮った写真が流れてくるじゃないですか?
アーティストって、皆、あの写真を撮りますよね。
#僕も昔撮ってました

あれって、どういう意味か分かります?
なぜ、アーティストがあの写真を撮っているか分かりますか?

アーティストや芸人が大きなハコでやる理由って、箔をつける為であり、見栄を張る為であり、自分を肯定してもらう為なんです。

表現者は皆、最初は、お客さんが1人か2人しかいない客席に向かって音楽を鳴らしたり、大声で漫才をしていたんです。
そりゃあ、もう、みじめだし、「俺、世の中に必要とされてないんだな」と思いながら、安い焼酎を飲んで家に帰って、屁こいて、悔し涙を流して寝るんです。

皆、そんなところからスタートしているから、大きなホールでやれることが決まり、さらに、その客席が埋まっていたら、「俺は間違ってなかった」と思えるし、昔から応援してくれていたファンの方に「あなたは間違ってませんでした」と感謝を伝えることができる。

アーティストや芸人が大きなホールを借りる時には、その背景に、そんな物語があるんです。

そんな中、アリーナの半分が大きなカーテンで区切られてごらんなさいよ。

お客さんからは「ああ、この人達は『札幌ドーム』を埋めることができないから、カーテンで区切って、客席を強引に減らしているんだな」と思われる。
当然、アーティスト側も、そう思われてしまっている自分に対して「ここまできたぞ!」とは思えない。

「5万席は多いからカーテンで区切って、半分の2万席にしちゃえー!」じゃないんです。

日本武道館あるじゃないですか?

僕も二度ほど利用させてもらったことがあるのですが、日本武道館って、実はすごく良くできていて、ステージの組み方で座席数を8000席~13000席まで変えられるんです。

真ん中に土俵みたいにステージを組んだら1万3000席だし、端っこにステージを組んだら8000席なんです。

ステージの組み方で5000席も変わってくるんですね。

だけど、端っこにステージを組んだアーティストのライブを見て、「ああ、武道館のフルバージョンを埋められないから、端っこにステージを組んでるんだな」とは誰も思わないじゃないですか?

これ、やっている方も思わないんです。
つまり、アーティストの見栄やハッタリや物語が守られるんです。

「お客さんが1人しかいなかった俺が、ついに武道館でライブができるようになったよ」と思えるんです。

武道館って、そういった表現者が抱えている古傷を守ってくれるから、メチャクチャ使いやすいんです。

札幌ドームの暗幕の「新モード」は、ここからどれだけ宣伝したところで需要は無いと思います。
そういうことじゃないので。

認知されていないわけじゃないです。
イベント屋は皆、札幌ドームの新モードは知っている上で使っていないんです。

10億円はドブに捨てたと思って諦めてください。

じゃあ「札幌ドームはどうすればいいの?」巻き返す方法は一択です

じゃあ、「札幌ドームはどうすればいいの?」という話になるわけですが、くれぐれも施設が悪いわけじゃないんです。

施設はすごく良いと思います。

ただ、判断がイチイチ間違っているというか、(何の根拠もない)素人の思いつきの域を超えていない。

なので、自分達で判断するのではなく(自分たちで判断したら、謎の巨大カーテンに10億円を使っちゃうので)、ちゃんと現在進行形で結果を出しているプロを雇って、その方の言うことを聞いてください。

ここから巻き返す方法は、その一択です。それ以外、無い!
札幌ドーム、頑張れっ!!
めっちゃ応援してますっ!!

注目のビジネス書

『夢と金』が各ランキングの年間1位に!

■楽天Kobo ビジネス書2023年間ランキング1位
■2023年オリコン年間”本”ランキング「自己啓発書」ジャンル1位
■ビジネス書累計が100万部突破!
※Amazonランキング書籍総合1位にも! コチラから

ミュージカルのお知らせ

知らせ! 2025年8月9日〜30日、ファミリーミュージカル「えんとつ町のプペル」が大劇場・オーケストラ版での上映決定!

■最高の星空をみんなで作ろう! 「ステージ上だけでなく、客席の床にも星の照明を埋め込んで、会場全体を光らせる」ためのクラウドファンディング、スタート!

お知らせ! 家庭の事情でエンタメを受け取れない子供達をミュージカル『えんとつ町のプペル』に無料招待したい!

経済的な理由でイベントに参加することが難しい子供達を、ミュージカル『えんとつ町のプペル』(2025年8月9日〜8月30日)に無料で招待して、日本にも楽しい世界や夢や希望があることを伝えよう!

さらに! ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の『VIPファミリールーム』をお求めの方は、YouTubeの西野亮廣チャンネルに上がっている動画の概要欄で買えるようになっているので、是非、チェックしてみてください。

映画のお知らせ

最新作のコマ撮り短編映画『ボトルジョージ』が、サンフランシスコ国際映画祭にノミネート!

アメリカでもっとも歴史のある映画祭「サンフランシスコ国際映画祭(San Francisco International Film Festival)」にノミネートされました。その他、New York Asian Film Festival(2024年7月12日)、JAPAN CUTS(2024年7月13日)、LA Shorts International Film Festival~ロサンゼルス国際短編映画祭~(2024年7月24日)からも招聘。

西野さんの『ボトルジョージ』に対する想いとは? こちらをチェック!

ボトルジョージ

発売中&予約受付中

《大阪平野の夜景を一人占め》HIBARI GOLF(宝塚市)のVIPラウンジ『星の絨毯』(2024年9月オープン)の【共同オーナー】(年間3日×7年分の貸し切り利用権)募集中!

■『星の絨毯』の【1日利用権】も仮予約受付中!

イベントのお知らせ

『西野亮廣講演会』全国各地で続々開催決定!

『西野亮廣講演会』のお知らせです。
下記の都道府県で開催が決まっています。

  • 8月26日(月)に東京
  • 8月29日(木)に山口
  • 9月3日(火)に北海道
  • 9月5日(木)に兵庫
  • 9月11日(水)に香川
  • 9月18日(水)に愛知
  • 9月25日(水)に静岡

私、西野亮廣がマイク一本で1時間半ほど喋る変なイベントです。チケットをお求めの方は、『西野亮廣全国講演会』で検索してみてください。サロンメンバーさんが作ってくださったイイ感じのホームページに飛びますので、そちらから。会場によっては、まだ、チケットを発売してなかったりしますが、そのへんはご容赦ください。

書籍のお知らせ

  • 最新絵本『みにくいマルコ~えんとつ町に咲いた花~』のご購入はこちら
  • 73万部の絵本『えんとつ町のプペル』のご購入はこちら

NFTのお知らせ

子供たちに絵本を贈るプロジェクト「『CHIMNEY TOWN GIFT』のNFT」が話題に!

バンドザウルスのお知らせ

オンラインサロン・SNS・Note・Voicy


TEXT=西野亮廣

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2024年11月号

一生涯、筋肉投資。

ラウール

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2024年11月号

一生涯、筋肉投資。

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ11月号』が2024年9月25日に発売となる。今回の特集は“一生涯、筋肉投資”。肉体を磨き続ける男たちのトレーニングメソッドを紹介する。表紙はSnow Manラウール。ニュートラディショナルなモードの最新ルックを艶やかに着こなした。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる