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2024.01.30

有能な社員の見分け方、Z世代との付き合い方…孫正義も認めた起業家・菅谷俊二の妄想仕事術

さまざまな企業や産業のDX事業だけでなく、スマート農業で生産されたお米の商品開発や雑誌読み放題アプリの運営など、幅広いビジネスを展開するOPTiM(オプティム)の創業者・菅谷俊二に、多くの企業が抱える人材育成の問題やモチベーションの上げ方などを質問してみた。【1回目はコチラ

Q1.「オプティム」とはどういう会社ですか?

一言で表現するのは難しいんですが、「世界の人々に大きく良い影響を与える普遍的なテクノロジー・サービス・ビジネスモデルを創り出す」という企業理念に、本気で取り組んでいる会社だと思います。

それは「イノベーション」とも言えるのですが、私からすると少しチープな表現になってしまう気がして。

すべての人にとって、その価値が残り続けるような“普遍的”であり、且つ誰でも使うことができる“一般的”なものを創り出したい。その取り組みを楽しみながら、また思いやりの心を持ちながら実現していく。そんな企業を目指してオプティムは、これからも邁進していきます。

Q2. オプティムの最大の特徴は?

さまざまな特徴があるのですが、すべての事業やサービスの起点が“独創”から始まっていることは、オプティムならではの特徴のひとつだと思います。

オプティムは、単に市場が伸びそうだからとか、儲かりそうだからという理由で、その領域の事業に参入しません。そのサービスに“独創性”があり、我々が着手することで社会が良くなる。あるいは、我々にしか出来ないことがある。そんなサービスに心血を注ぐようにしています。

また、佐賀大学にビルを構えるオプティムは、日本で唯一の国立大学のキャンパス内に本店がある上場企業です。地域の皆様と、行政、農業、医療、建設領域などのイノベーションに取り組んだり、学生教育などに積極的に関わったりと、大学内に拠点を置く利点をフルに活用しています。

新興市場における特許資産規模1位(2014年時点)を誇る特許数の多さもオプティムの特徴。東京本店のエントランスには、会社が所有する数多くの特許証が展示されている。

Q3. 今後、オプティムが目指すものとは?

AIやIoTなどのテクノロジーの誕生で、第4次産業革命を迎えている今。世界が大きく変わっている時代なんだと思います。

例えば、携帯電話やスマートフォンが誕生する前と後の時代では、まったく違う世界が広がっている。AIやIoTも同じように、世界を大きく変えるもののひとつなのではないでしょうか。

オプティムは、そんな第4次産業革命の中心的な存在になれる会社を目指しています。AIやIoTなどのテクノロジーを使って、ひとりでも多くのお客様に喜んでもらえるサービスを提供する。それがオプティムの目指すところです。

Q4. 有能な社員を見分ける基準はありますか?

オプティムでは「スキルよりマインド」という言葉をよく使っています。科学技術は常に進化しているので、我々に求められるスキルも変わってくる。だからこそ、その人が仕事や人生に対してどう向き合っているかが重要になってきます。

例えば、陸上界のレジェンドと呼ばれるカール・ルイスでも、100mを普通に歩いたら2分くらいかかる。でも、小学生が本気で走れば、20秒くらいで走ることもできる。大事なのは“モチベーション”なんです。どんなスキルがある人でも、熱意を持った人には敵わない。

あとは、誠実さを持っているかどうか。もちろん誠実さにもいろんな形があります。でも、大原則として嘘を付かない。そして、仲間、家族、そして社会に対して真摯に向き合っているか、そういう誠実さは仕事にも現れると思います。

Q5. 社員とのコミュニケーションで大切にしていることは?

私も人間なので、すべての人が考えていることはわかりません。人間にもいろいろなタイプがあるので、私が理解していることをわからない人もいるし、逆もまたしかりです。

だからこそ、社員とコミュニケーションを取る時は、共通の理屈で話すようにしています。「こうやったらみんなが儲かるんだよ」とか「こうしたら社会にとって利益になるよね」って、事業を進める意義と理屈をしっかりと説明していく。

時には、情に訴えかけることもあります。自分が持っている夢や理想を話して、「みんなでやってみよう!」って投げかけてみる。それは、私の主観にはなってしまうのですが、自分の夢を語るのも大事なプロセスのひとつだと思っています。

菅谷俊二/Shunji Sugaya
1976年兵庫県生まれ。佐賀大学在学中に、第1回ビジネスジャパンオープンで「孫正義賞(特別賞)」を獲得。2000年6月、「ネットを空気に変える」を企業理念に、現在のOPTiM(オプティム)を創業。2014年に東証マザーズに上場し、2015年には東証一部への上場を果たした。著書に『ぼくらの地球規模イノベーション戦略』(ダイヤモンド社)。

Q6. 社員のモチベーションを上げる方法はありますか?

オプティムでは、すべての社員が“主人公”として働いて欲しいと考えています。なので、会社として社員のモチベーションを上げることには特に注力していて、できる限り多くの情報を共有することで、社員の可能性を最大限に広げられるようにしています。

でも、それ以上に社員のモチベーションを下げないことが肝心。人間のモチベーションほど、世の中で貴重なものはないので。折角、モチベーションを持った社員が入ってきてくれても、コミュニケーション不足などで生じる些細な誤解で、嫌な感情を抱かせてしまうこともある。

なので、社員とはしっかりとコミュニケーションを取るようにしています。例えば、月に1度は社内の全体ミーティングを開き、事業の課題や数値などを説明しながら、今自分が考えていることも話すようにしています。

また、全体ミーティングの後は、社内で全社員参加の飲み会を開催しています。社員同士で会話をしてもらうだけでなく、チームごとに会議室に来てもらい、私ともゆっくり話す時間を作る。そうすることで、社員が考えていることも理解できるし、私が思っていることも伝えることができます。

Q7. 若手社員の育成で心がけていることはありますか?

当たり前のことですが、若手社員がやろうとしていることの邪魔にならないように心がけています。オプティムにも、次代を担う若手が増えてきていて。彼らが情熱を持って、新しいことに挑戦していける会社でありたい。

実際、若手社員と接してみると育てるというより、逆にこちらが教えてもらうことの方が多いんです。今では、多くの領域に私の“先生”がいます(笑)。入社2年目の社員にChatGPTの大規模言語モデルを教えてもらったり、農業の分野でも知識のある若手に聞いたり。

もちろん若手社員の中には、仕事をする上での能力や誠意はあっても、コミュニケーションの取り方などに未熟な部分がある人もいる。そういう時は、他の社員へのものごとの伝え方や、お客様やクライアントへの接し方など、ちゃんと指導するようにしています。

農業のDX事業に着手した際には、若手社員と一緒に田んぼで田植えなどを体験した菅谷。サービスの開発だけでなく、実際にユーザーになりきって作業を経験させることも社員教育の一環。

Q8. 仕事のアイデアはどこから生まれてきますか?

私がよく使う言葉のひとつに、「常に妄想する」というものがあります。これは、あらゆる可能性を楽しみながら考えるという意味。

例えば、農業のDX事業でさまざまな問題や課題が見えてきた時、「これは医療の業界ではどうなんだろう」とか、「この技術がもっと進化すると、自分たちの生活はどう変化するんだろう」って、あれこれ頭の中で妄想をしてみるんです。

そうすると、ひとつの業界で起きている事例が、他の産業や業界にも当てはまることがわかってきました。いろんな分野に、適合できるようになってくるんです。新しいテクノロジーがいくつも登場している今、妄想できることがたくさんあるので、仕事のアイデアはこれからも尽きることがありません。

Q9. 仕事のモチベーションを保つコツは?

今の時代って、常に新しいビジネスやテクノロジーが生まれている。本当にワクワクしますよね。そんな“ワクワク”が、私の仕事に対するモチベーションになっています。

世界はこれからも変わっていくし、もしかしたら自分たちが世界を変えられることがあるかもしれない。そんなことを妄想していると、どこからか希望が湧いてきます。

すべての人に世界を変えられるチャンスがある。あとは、それを自分ごととして考えられるかどうか。主体性を持って世の中を変えていこうと思えれば、誰にとってもワクワクする時代になると思います。

Q10. あなたにとって「仕事」とは?

私にとって「仕事」とは、自分たちの手で生み出した「作品」でもあり、人生の大半の時間を費やす「緊張感にも満ちた最高の遊び場」です。

なので、今も経営者としてだけでなく、現役のプレイヤーとして働いています。むしろ、プレイヤーとして活動するために、経営者としての仕事をしていると言っても過言ではありません。

気の合う仲間たちと心地よい環境で、新しいサービスを作っていきたい。当然、この最高の環境を維持するためには、結果を出し続けないといけないという緊張感もあります。だからこそ、経営者として仕事に全力で取り組めるんです。

TEXT=坂本遼佑

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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