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2023.11.29

野村克也の持論「外野手出身に名監督なし」は本当か!?

戦後初の三冠王で、プロ野球4球団で指揮を執り、選手・監督として65年以上もプロ野球の世界で勝負してきた名将・野村克也監督。没後3年を経ても、野村語録に関する書籍は人気を誇る。それは彼の言葉に普遍性があるからだ。改めて野村監督の言葉を振り返り、一考のきっかけとしていただきたい。連載「ノムラの言霊」24回目。

野村克也連載第24回/外野手出身に名監督なし

現日本プロ野球の外野手出身監督は新庄だけ

「外野手出身に名監督なし。守備のとき細かいプレーを考えない外野手は、監督に向いていない」

野村克也の辛辣な言葉だった。

「一般的な言葉の使い方として、ある事象に直接関係のない第三者に対して『外野がうるさい』とか『外野は黙っておけ』と言うだろう。大事なことは内野で行われるから、そう言うんだろうな」

例えば「無死走者なし」から「無死走者一塁」「無死走者一・二塁」……「二死満塁」まで、アウトカウント別走者の状況は全部で24通りある。

特に「一死一・三塁」の状況において、「バント」「盗塁」「強攻」に対する守備体型など、捕手、二塁手、遊撃手でないと、対応がなかなか難しい。

以後、野村の言葉を検証していく。

カッコ内は、現役時代に守った主なポジションである(内野手でも、二塁・遊撃を守れた選手は、そちらでカウントする)。

2023年のセ・リーグ監督は、岡田彰布(阪神=二塁手)、三浦大輔(DeNA=投手)、新井貴浩(広島=三塁手)、原辰徳(巨人=三塁手)、高津臣吾(ヤクルト=投手)、立浪和義(中日=遊撃手)。

2024年は原に代わり、阿部慎之助(捕手)が新たに就任する。

パ・リーグの監督は、中嶋聡(オリックス=捕手)、吉井理人(ロッテ=投手)、藤本博史(ソフトバンク=二塁手)、石井一久(楽天=投手)、松井稼頭央(西武=遊撃手)、新庄剛志(日本ハム=外野手)。

外野手は新庄ひとりであり、パ・リーグにおいて2年連続最下位である(プロデビューは遊撃手だが、外野手でゴールデングラブ10度受賞)。

一方、セ・リーグで2年連続最下位の立浪は、遊撃、二塁、三塁の3ポジションでゴールデングラブ賞を受賞している。さらに1・2番のチャンスメーカーも、3・5番のポイントゲッターも任されるマルチプレーヤーであった。

外野手出身監督の日本シリーズ進出は3%→20%に激増

1950年から始まり2023年で第74回を数える日本シリーズ。これまでに出場した、セ・パ合計148チームの監督の出身ポジションを集計してみた。

・投手=のべ24人
・捕手=のべ25人
・一、三塁手=のべ56人
・二塁、遊撃手=のべ31人
・外野=12人

一、三塁手が多い理由は、日本シリーズに監督として多く出場した川上哲治(巨人)と王貞治(巨人、ソフトバンク)らの出身ポジションが一塁手、長嶋茂雄(巨人)と原辰徳(巨人)らの出身ポジションが三塁手だからだ。

野村が冒頭の言葉を発したのも、むべなるかな。外野は3ポジションあるが、日本シリーズに出場した監督はのべ12人しかない。

しかも、1950年から2000年の出場102チームのなかで外野出身は、1974年の与那嶺要(中日)と、1981年の大沢啓二(日本ハム)、1991年の山本浩二(広島)の3人しかいない(約3%)。

外野手出身で日本一になったのは、2001年の若松勉(ヤクルト)が初めてで、それ以降は2011年と2014年の秋山幸二(ソフトバンク)、2016年の栗山英樹(日本ハム)。

しかし、秋山と栗山は外野手に転向してゴールデングラブ賞を受賞しているが、もともとは内野手なのである。

つまり、純粋な外野手としての日本一は若松しかなく、若松はコーチ時代、野村の薫陶を受けているのだ。

とはいえ、野球は進化している。

2016年と2017年など、高橋由伸(巨人)、金本知憲(阪神)、緒方孝市(広島)、真中満(ヤクルト)、アレックス・ラミレス(DeNA)と、セ・リーグ6球団中5人が外野手出身監督である(中日は捕手・谷繁元信と投手・森繁和だった)。

しかも、緒方はリーグ3連覇を成し遂げている。

2001年以降2023年までの日本シリーズ進出「外野手監督」は、出場46チーム中、実に9チームに増加した(約20%)

野村に反論。「こんなに考えて外野手は守っている」

「守備のとき外野手は考えていないと言った野村監督に反論があります」

そう反論するのは赤星憲広(阪神)だ。確かに赤星に取材すると、そこまで熟考して守っているのかと驚かされる。

「捕手と正反対の位置を守るので、捕手と同じような視野を持つ選手が存在してもおかしくないと思いませんか。

この打者に対して投手はどんな球種を投げるのかを考え、打球が飛んでくる方向をあらかじめ予測する『ポジショニング』が重要。

点差、アウトカウント、走者の状況によって、次に自分がすべきプレーをシミュレーションしておくのです」

赤星は、ゴールデングラブ賞を6度受賞した名外野手だった。

「そもそも配球を読めと教えてくれたのは野村監督です。外野でゴールデングラブ10度の阪神の先輩・新庄さんも、ものすごく考えて守っていました」

野球は変わる。新庄や赤星のように「ポジショニング」や「戦局」をかなり考えて守る外野手が増え、そんな選手たちが監督になってから活きているのだろう。

野村の薫陶を受けた外野手・真中満(ヤクルト)は2年連続最下位のチームを引き受け、就任1年目にしてリーグ制覇に導いた。

稲葉篤紀(侍ジャパン)は、2020東京五輪で日本を世界一にのし上げた(稲葉は外野、内野の双方でゴールデングラブ賞を受賞)。

2年連続最下位の新庄に対し、厳しい声は意外に少ない。なぜならその采配によって万波中正田中正義らが覚醒、過渡期のチームを育成しているのを周囲は知っているからだ。

来たる2024年、新庄の腹心となる2軍監督は稲葉だ。2人とも「野村チルドレン」である。

「外野手出身に名監督なし」は、今は昔。新庄、稲葉の2人をはじめ、今後「外野手出身監督」がどんな成果を挙げていくか、楽しみは尽きない。

まとめ
かつては「名監督なし」と言われた外野手において、好成績をあげる監督が増えてきた。野球は進化してきているのだ。それと同様で、かつては高い評価ではなかったポジションも、進化してきている。

著者:中街秀正/Hidemasa Nakamachi
大学院にてスポーツクラブ・マネジメント(スポーツ組織の管理運営、選手のセカンドキャリアなど)を学ぶ。またプロ野球記者として現場取材歴30年。野村克也氏の書籍10冊以上の企画・取材に携わる。

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TEXT=中街秀正

PHOTOGRAPH=毎日新聞社/アフロ

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