ドバイに渡り活躍する、日本のビジネスパーソン。職種や渡航の経緯はさまざまだが、みんなが口を揃えて「思い切ってドバイに来てよかった」と言う。今回は、スパとプロダクツを展開するルフロ代表取締役の三田直樹氏がドバイを選び、そこで働く理由に迫った。【特集 熱狂都市・ドバイ】
ドバイをハブとして日本の湯治を世界のTOJIへ
都市型湯治をコンセプトにしたスパとプロダクツを展開するルフロ。創業者である三田直樹氏はもともと投資銀行マンだったが、秋田県の玉川温泉に入ったことで湯治の魅力にとりつかれ、人生が一変した。
数多くの文献を読み、日本全国の温泉や研究者を訪ねるなどして、源泉付近の鉱石から濃縮還元温泉原液、「クラフト温泉」を抽出する独自製法を開発。そのエキスをお湯に混ぜれば温泉となり、浸かるだけでなく、薄めて飲んだり、ミストにして浴びることも可能だ。また、その効果を体験できる湯治施設を西麻布や鎌倉に展開。その高い効能が認知され、全国から多くの著名人やアスリートなども通っているという。
「当社がミッションに掲げているのは、『日本の湯治を世界のTOJIに』。日本は地球上の温泉の源泉の約8割を有し、地形的にも掘削(くっさく)がしやすい稀有な国。いわば温泉は、日本が誇る素晴らしい資源です。国益に資することをしたいという思いもあって創業したので、温泉をさらに世界へと広げていきたいと考えていました」
その実現に向け2022年3月、ドバイに初の海外拠点を開設した。中東を選んだ理由のひとつは、石油という資源で発展してきた中東なら、温泉の資源価値を評価してもらえると感じたから。
「何回か足を運ぶなかで、国土の大部分が砂漠に覆われたドバイは特に資源に対する憧れが強く、大地の恵みである温泉への関心の高さを実感したんです」
ドバイではまず、温泉の効能を手軽に実感できる“飲泉”の展開からスタート。ミネラルウォーター、「SAYU WATER」をリリースした。
「中東では近年、肥満や糖尿病が大きな社会問題になっています。温泉のミネラル成分豊富な『SAYU WATER』は、飲み続けることで基礎代謝が上がり、体質改善も期待できるということもあり、現地では好意的に受け止められていますね。今後は中東の伝統的文化、ハマムになぞらえ、蒸し湯施設の展開も予定しています」
起業のしやすさもドバイ進出の決め手となった。石油に次ぐ産業を模索しているUAEは、ドバイを中心に規制緩和を行い、スタートアップ企業を積極的に誘致。初期費用をできるだけ抑え、スピーディに事業を進めたいと考えていた三田氏にとって、絶好の場所だったのだ。
また、現在ルフロが支社を置くDSO(ドバイ・シリコン・オアシス)には、居住地や学校、商業施設も隣接し、職住接近が可能。治安もいいため、2児の父である三田氏が本格的にビジネスをスタートする条件が整っていたことも大きい。
「ドバイは人口の約9割が外国人で、世界各地の企業が進出してきています。世界中に温泉の魅力を発信するショールームとしてのポテンシャルの高さにも惹かれました」
しかし、未知の国という意識が強いからか、ドバイでビジネスを仕かける日本人はまだまだ少ない。
「こちらでは日本のアニメも大人気ということもあり、中東は親日的。日本人はどんどん挑戦すべきだと思います。ドバイではビジネスや街の成長を日々実感できますし、大きな刺激になる。私自身、毎日が楽しくて仕方がありません!」
About Craft Onsen
My Dubai Episode
スマートシティ化で位置情報を正確に把握!
三田氏が住むデジタルパークの地面には、センサーが張り巡らされている。「登録すれば人の位置情報が把握でき、子供たちがどこにいるか瞬時にわかるので、親としては安心。個人情報ダダ洩れですが(笑)」
Favorite Item
三田直樹/Naoki Mita
ルフロ代表取締役
1976年神奈川県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、大手商社にて石油トレーディングに従事。その後海外経済メディアや外資系証券会社などを経て、2013年にルフロを創業。2022年、初の海外拠点となるLe Furo FZE Dubaiをドバイに設立した。
この記事はGOETHE2023年12月号「総力特集: ヒト・モノ・カネが集まるドバイ」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら