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2023.01.29

【泉谷しげる】実はコンプレックスの塊!? 暴れん坊キャラに隠された思いとは

「バカヤロー!」とばかり言っている暴れん坊。唯一無二のキャラクターで老若男女を問わず多くのファンに愛されてきた泉谷しげる。そんな泉谷の真の姿とは? 学生時代から音楽を愛し、「泉谷さんが大好きでした」というゲーテ統括編集長・舘野晴彦が、泉谷しげるのプライベートの顔に迫る──。動画連載「2Face」とは……

コンプレックスの塊だった青春時代

1948年に青森県で生まれた泉谷しげる。青春時代を過ごした'60年代はロックブームで、泉谷もビートルズやローリング・ストーンズに憧れ、15歳でギターを弾き始めた。ロックの不良っぽさに惹かれ、自分も"悪い男"になりたいと願った。だが、その道は険しかったという。

「オレはガキの頃から身体が弱くて、それが嫌で仕方がなかった。船酔い、車酔い、神経質、赤面症。そういうの、全部やってんの。遠足でバスに乗ると酔っちまうから、いちばん前に座らされてよ。一度でいいから後ろの座席に乗りてえって、憧れたな。

だから、まずは身体をなんとかしねえとダメだなって。音楽を始めてからは、不良にならなきゃいけねえって思った。弱っちいヤツの音楽なんて、誰も聴きたいと思わねえだろ。ミュージシャンっていうのは、不良のエネルギーがないと女が寄ってこねえんだ。

そう思って、特訓を始めたワケよ。時間ができるたびに海へ出かけて、ボートに乗る。強制的に自分を船酔いさせて、ゲーゲー吐いて、ちょっと休んでから、またボートに乗る。その繰り返し。それで、酔いやすい体質がずいぶんマシになった。今では家族の中でジェットコースターに乗れるの、オレだけだもん」

荒治療を重ね、ひとつずつ弱点を克服していったという泉谷。そんな泉谷に、今、怖いものはあるのだろうか?

「怖いものは自分自身。オレがオレじゃなくなったらどうしようとか、周りのヤツラに媚びを売るようになったら終わりだなって思う。今、74歳だろ。やっぱり老人になっちまったなっていうのは感じる。"かわいいじいさん"のように扱われることも増えたしな。

でも、なめられたくはねえ。男っていうのは、たとえ強がりでも強く見せねえとダメなんだ。オレは何歳になっても、泉谷しげるだ。なめてかかると、えらい目にあうぞ、バカヤロー! てな」

暴れん坊キャラは本当の自分の裏返し

泉谷しげるの決めゼリフ「バカヤロー!」。どキリとする言葉だが、泉谷が言うと、なんだかにんまり嬉しくなってしまう。口が悪いのに憎めない。そのキャラクターはどのように作り上げられたのか。

「話したように、オレはガキの頃から身体が弱かったから鍛えてきたわけなんだけど、性格も強くはねえんだ。嫌になるくらい臆病なんだ。ガキの頃って、自分にないものに憧れるだろ。オレの理想は孫悟空。ハチャメチャで、無礼で、態度が悪くて、でも憎めない。本気で孫悟空のようになりたいって思って生きてきた。

だから、ガキの頃から口は悪かったよ。でもそれが、シンガーとしてデビューする時には役に立ったと思う。プロっていうのは記憶に残らなきゃいけねえから、キャラが薄いヤツは、なんとか濃いキャラを作ろうと努力するんだ。でもオレには必要なかったからな」

「時代もよかったよ。'64年に東京オリンピックがあって、強い男がモテたからな。オレもそのブームに乗っかって、身体とキャラを磨いた。コンクリートのブロックでバーベルを作って、持ち上げたわけだ。バーベル上げをやってたから、背が伸びなかったかもしんねえな(笑)」

74歳になった今も、泉谷しげるは逞しい。ロックフェスで若いミュージシャンに囲まれても、負けないエネルギーを放つ。

「ライブに来てくれたお客さんは、弱々しい泉谷しげるなんて見たくねえだろ。だから、やることはやっている。ライブの前は食事をリンゴだけにしたりとかさ。でも、あまり話したくはないんだ。トレーニングとか、努力とかっていうのは、人知れずやってたほうがカッコいい。

そんな人知れず身体を鍛えてるヤツは、カッコいいと思うよ。ジムに通ったり、パーソナルトレーナーをつけたり、いろいろやってみりゃあ、いいんじゃないの。それでこっそりとやる。男っていうのは、ここぞっていうときに成果を見せるもんだ」

いくつになっても安穏と過ごすことなく、絶えず進化を続ける泉谷しげる。今後、どんな姿を見せてくれるのか。

「何においても、精度を上げていくっていうことだな。音楽や芝居はもちろん、人間がやるべきことすべての質を高めていきたいんだ。今は大変な時代だろ。

オレは50代から、自分で料理を作るようになった。腕前はまだまだなんだけど、そういう基本的なところからコツコツと精度を上げていきたい。いずれは、目をつむっても料理ができるくらいに(笑)。そのためにも、身体を鍛え、サバイバル能力を高めていく。人間なんだけど、野獣のようにも生きていきたいと思う。どこにでもいる"かわいいじいさん"には、絶対にならねえよ」

1971年のメジャーデビューから半世紀以上にわたって愛され続けてきた泉谷しげる。なぜ、泉谷しげるはこれほど人を惹きつけるのか? その理由が垣間見えた。周囲に流されない確固たる強さをもち、そして優しい。その強さと優しさは、幼い頃からコンプレックスの克服に力を注ぎ、コツコツと培ってきたものだったのだ。泉谷しげるのプライベートの顔は、孫悟空をも凌ぐ、勇ましさと愛に満ちた顔だった。

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「バカヤロー」ばかり言っている野獣キャラで人気を集め、近年はチャリティ活動に励むいい人キャラで時代を切り拓いてきた泉谷しげる。自身のキャラの変遷や、昭和の大スターから学んだキャラの作り方を指南する。

Shigeru Izumiya
1948年青森生まれ。3歳より東京都目黒区で育つ。'71年、アルバム「泉谷しげる登場」でデビュー。俳優としても活躍し、ドラマ「Dr.コトー診療所」や「三匹のおっさん」などに出演。

Haruhiko Tateno
1961年東京都生まれ。'93年、創立メンバーの一人として幻冬舎を立ち上げて以来、各界の著名人たちの多彩な作品を世に出し続ける。2006年に「GOETHE」を創刊し、初代編集長も務めた。

動画連載「2Face」とは……
各界の最高峰で戦う仕事人たち。愛する仕事に熱狂する姿、普段聞けないプライベートな一面。そんなONとOFFふたつの顔を探ると見えてくる、真の豊かな人生に迫る。

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TEXT=川岸 徹

PHOTOGRAPH=倭田宏樹

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