芳賀セブンさんは、YouTubeやTikTok、InstagramなどのSNSの合計登録者数が約240万人に迫る人気YouTuber。パワーリフティング選手権での優勝などの実績に基づいた筋トレのネタから、ユーモアあふれるネタまで、振れ幅の大きさが人気の理由だ。どんなきっかけでYouTuberとなり、どんなアイデアで収益を上げられるようになったのか。前編では、「職業としてのYouTuber」というテーマでお話をうかがった。【特集 仕事に効くYouTube】
YouTuberの仕事って、意外と会社っぽいんですよ
──SNSの合計登録者数がまもなく約240万人に達する勢いです。この成長スピードは予定通りですか?
5年ほど前からYouTubeを始めていて、毎日動画を投稿するようになったのは2018年11月からです。そこから数えても約4年かかりましたけれど、本当はもっと早く大きくなっている予定でした。コロナ禍でいろいろな規制がかけられた時に、リスナーのみなさんのニーズに応える動画ができなかったのが予想より伸びなかった理由かな、と反省しています。
──なぜYouTubeを始めたのですか?
実は僕らはチームで活動をしていまして、高校の柔道部の先輩、ネット上では「ゴミ袋先輩」と呼ばれていますが、彼から誘いを受けて2017年の秋にチャンネルをスタートしました。それ以前はTwitterでつぶやいていて、あくまで趣味だったんですけれど、数千人のフォロワーがいました。それを見たゴミ袋先輩は、僕のことを発信が得意なやつだと思ったようです。
──ゴミ袋先輩に誘われて、すぐにYouTube一本に絞ったんですか?
誘われた時に勤めていた24時間体制の警備会社を辞めて、一度、昼職というか流通系の会社に転職しました。でも転職した会社のほうがキツくて(笑)、朝8時から夜の11時まで働いて、そこからジムに行って終電まで筋トレして、3時間睡眠でまた出社して、というスケジュールだったので長く続かなかったんです。それで半年ほどでその会社もやめて、2019年の2月頃からSNS一本に絞った感じですね。
──もともとはどんなYouTubeチャンネルを目指していたんですか?
LGBTQのお悩み相談室みたいなものを考えていました。でも当時は、ゲイであることを自覚してまだ日が浅いし、ゲイであることを悩んだりネガティブに捉えた事がなかったので、他人の悩み事にあまり共感出来ず、回答が「まー気にするな」の一択しかありませんでした。そこから徐々に形を変えて、もともと筋トレはしていたので、筋トレYouTuberみたいなものも掛け合わせたスタイルになっていきました。
ちなみに、今のメイド服のコスチュームは、ドイツのTikTokerである「Pedro(@buff_weeb)」という方をモデルにしたんです。でも、その人の姿によせて動画を撮ろうと思って、メイド服を買いに行ったのですが、女性用のサイズしかなくて。エプロンとカチューシャ、あとは蝶ネクタイしか着れなかったんです(笑)。それで、もともと着ていたタンクトップに合わせてみたところ、今のスタイルになりました。自分らしさを残しつつメイド服も取り入れられたので、結果的に気に入っています。
──ブレイクした瞬間はあったのでしょうか?
それは明確に3回ありましたね。最初は2019年10月で、海パン一丁で水泳部のゴーグルをかけて、「ターミネーター」のテーマ曲とともに海の中から出てきて「ジョン・コナーはどこだ?」って叫ぶ動画が最初にハネたんです。ちょうどその時に、テレビで『ターミネーター』が放送されたタイミングでもあったので、それで運よく注目されたのもあったと思います。あとは、「やたらと『ジム行く?』と言うボディビルダー(無職)」という動画が305万回再生、「指鍛えてて良かった」という動画が750万回再生を数えました。
──そういう動画のアイデアはどうやって生まれるのでしょう?
これを考えたのはゴミ袋先輩でした。表に出ているのは僕ですが、動画の企画だったり、企業とのやりとりだったり、チャンネルを支えているのはゴミ袋先輩です。
──芳賀セブンさんがめちゃくちゃやっているように見えて、実はチーム体制というのがすごくおもしろいですね。
タレントとプロデューサー、部下と上司、みたいな感じですかね。もはや会社ですよ。ゴミ袋先輩はすごく優秀な方で、もともとは誰もが名前を知っている会社で営業をやっていて、いまは家業を継いでいるんですが、そういう仕事をしながらYouTubeチャンネルも運営しています。
思うに、YouTuberでハネている人って、好き勝手にやっているように見えて、実は組織で運営しながら、計算して作り込んでいるんじゃないでしょうか。自分でやってみるとわかるんですが、ただ好き勝手にやってもダメで、きちんとコントロールしてくれる人と一緒にやらないとうまく行かないと思います。少なくとも僕の場合、自分1人ではYouTube事業を回す事は出来ません。色んな方の支えがあってこそですね。
──YouTubeチャンネルを続けていくうえで、大事にしていることは何でしょう?
YouTubeもTikTokも同じなんですけど、僕は、生きるのがつらいと感じていたり、人生を投げ出しそうになっている人に見てもらいたいと思って作っています。こんなに変なヤツだって楽しそうに生きてるんだから、俺ももうちょいがんばろうと思ってもらえたら本望です!
──ぶっちゃけ、収入も相当増えたと思いますが、いかがでしょう。
始めた頃は月に数万円とかでしたが、1番良かった月だとその150倍くらいは頂けたかな…今のところは(笑)。でもタワーマンションに住みたいとか高級車に乗りたいとかは自分の中には全然なくて、100円や200円のものを買う時に躊躇しなくなったり、タクシーに乗りたい時に乗ったり、後輩にご飯を御馳走したり、それくらいの収入があればいいかなと思っています。UNIQLOの服を着て、原付乗って、ワンルームに住むという生活が僕に合ってるし、実際に今幸せです(笑)。
──テレビ番組への出演が増えていますが、今後の仕事の広げ方についてどう考えていますか。
声をかけていただくのはうれしいですし、喜んで出演させていただきますが、あくまで軸足はSNSかなと思っています。フリーランスで活動していく、その自由な感じが自分に合っているのかな、と。会社勤めの頃を思い出しても、今の方が自分らしく生きていられるし、何かを表現できるYouTuberというのは性に合っていると思います。普段は面と向かってこんなことは恥ずかしくて言えませんが、こういう世界を拓いてくれたゴミ袋先輩には感謝しています。
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