情報番組『バイキング』にて、8年間にわたって“お昼の顔”を務めた坂上忍さん。現在は動物保護ハウス『さかがみ家』を開設し、ペットショップで売れ残った病弱なワンちゃんを引き取るなど、動物保護事業に力を注いでいる。2歳の芸能界デビューから絶え間なく精力的な活動を続ける坂上さんに、独自のビジネス論を語ってもらった。
実は役者に向いていない
8年間MCを務めた『バイキング』が2022年4月に放映を終了しました。まあ、思うようにいかないこともあったけど、『笑っていいとも!』という人気番組のあと、よくやり切ったなという満足感もあります。司会という役割が、僕に向いていたのかなとも思いますね。
というのも、僕は自分のことを「テレビに出る側の人間じゃない」と分析しているんです。2歳から芸能界にいて、「いまさら何を言っているんだ」と怒られそうですが、実際にそう感じるんですよ。僕は、「ナルシストになり切れない、中途半端なナルシスト」。自分に対して卑屈なところがあって、「オレだ、オレだ」と前に出ていけないんです。
役者でやっていくなら、「オレだ、オレだ」という勢いが欠かせない。以前、演技の勉強のために、津川雅彦さんが演じる濡れ場のシーンを見学させてもらったことがあった。もうね、津川さん、すごいんですよ。これ以上ないというくらいのスケベ親父で。スケべ以外の何者でもない。でもね、自分がスケベに徹することで、女優はかえって安心して、演技に集中することができるんです。
その現場を見て、僕にはここまでのベッドシーンは絶対にできないなと。餅屋は餅屋、役者は役者なんですよ。かといって、バラエティ番組にゲストコメンテーターとして出演するのも得意じゃない。僕は、そんなにおもしろい話ができないんですよ。
その点、MCという役割は自分に向いていた。MCの仕事にいちばん大切なのは、バランス感覚。「オレが、オレが」になりすぎてはいけないし、かといって自分のカラーは出さなければいけない。番組の構成や方向性も、もちろんテレビ局の方針はあるけれど、ある程度は自分の好きにできるし。そんなわけで、『バイキング』の仕事では「やり切った」という満足感を得ることができたんです。
ビジネスは「10年継続」が目標
僕は仕事をする上で「10年」というサイクルを意識しています。昔から「10年一区切り」と言われるけれど、まさにそう。10年はひとつの節目になる年月だと感じます。
だから、新しいビジネスを始める時に、「最低10年は続けないと」って考えています。2009年に子役スクール「アヴァンセ」を開設した時も、10年継続がひとつの目標だった。今、力を注いでいる動物保護の事業も同じ気持ち。今年4月に、千葉県袖ケ浦市に開設した『さかがみ家』を、なんとか最低10年はもたせたいなと。逆に言うと、10年続けばその後も安定して続けられるんじゃないかって思います。
『さかがみ家』はまだ始まったばかりで難題が山積みですが、事業は楽しいですよ。長年、自分が本当にやりたかったことが実現できているから。それに正しいことをしているといううれしさもあります。ビジネスは金を稼ぐことが重要ですが、どんな稼ぎ方をしているのかということも大切だと感じますね。
日本の動物保護は、世界から後れをとっていますが、少しでも追いついていきたい。その役割を担えるよう、これからも全力を尽くしていきます。