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2022.04.28

【Cocomi】「私の音は私だけのもの。歌と同じです」──連載「NEXT GENERATIONS」Vol.3

新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載「NEXT GENERATIONS」。今回は、2022年4月29日にデビューアルバム『de l'amour』が発売となるCocomiをクローズアップ。今、世界で活躍するクラシック界のスター達が集結した記念すべきデビュー作品に期待が集まっている。フルート奏者Cocomiに、アルバムの製作過程や、音楽家としての向き合い方を聞いた。インタビュー前編。【後編はこちら】

Cocomiだからこそのフルートの演奏

「ほんとに?」

フルート奏者のCocomiはアルバムデビューが決まったことを聞いた時、驚きとよろこびで、思わず聞き返した。

2021年3月18日、世界睡眠デーのキャンペーンで、Cocomiは作曲家でピアニストのチャド・ローソンのオファーを受けた。コラボレートした曲は「STAY」。チャドのさざ波のようなピアノに導かれ、透き通るようなフルートの音色を聴かせた。このコラボレーションが注目され、複数のレーベルで争奪戦が繰り広げられた。そんないきさつでつくられたのがアルバム『de l’amour』だ。

「ファーストアルバムなので、今私がいる理由を示せる曲や、私を育ててくれた曲をレコーディングしたいと思いました」

まず選んだのは3曲。ラフマニノフの「ヴォカリーズ」、プーランクの「愛の小径」、フォーレの「夢のあとに」だった。

「『ヴォカリーズ』はチェロでの演奏を聴いたときに、胸が震えました。あのとき、歌詞はないけれど、歌だと思いました。『愛の小径』と『夢のあとに』は歌曲。ソプラノ歌手のかたがたの歌唱を聴き続け、私は歌が好きなんだとあらためて感じました」

歌が好きだからだろうか、『de l’amour』はフルートでメロディが奏でられているにも関わらず、歌っているように聴こえる。フルートの音色はCocomiが発する“声”だ。

「実は『de l’amour』を録音することが決まり、声楽の先生のレッスンを受けました。歌手は、どこで息継ぎをするのか、どんな発音をするのか、徹底的に研究しています」

そんなプロセスを踏んだことによって、ほかの演奏家とは違うCocomiだからこそのフルートの演奏になった。

「このアルバムの収録曲はフルートのために書かれていない曲がほとんどです。なので、フルートでどのようにして原曲に寄り添う音にするか、追い求めました。楽器と必死に向き合いました」

理想の音を追い求めた結果、1枚のアルバムで3本のフルートを使い分けることになった。

「今メインで演奏しているフルートはパウエル フルートというハンドメイドのブランドです。『愛の小径』で選んだのはオーラマイトというシリーズで、外側がシルバー。内側が14カラットのゴールド。比較的軽量で音が温かいことが特徴です。『タイスの瞑想曲』を演奏したのは、ボディはすべてゴールドで、キー(トーンホール=穴をふさぐ蓋)がシルバーのモデル。重量があり、音もドーンとしっかりした重量感を感じます。『夢のあとに』で選んだのは、すべて純金のモデル。やはり重みがあります。

楽器は同じモデルでも1本1本個体差があります。そして、演奏家の呼吸器や口のかたちや舌のかたちによって、まったく違う音が生まれます。だから、私の音は私だけのもの。歌と同じです。そこがこの楽器の最大の魅力の1つだと感じています」

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モデルと音楽家、互いに相乗効果を生む

歌うように奏でる──。そこにはシンガーでもある両親の影響もあるのだろうか。

「演奏しているときに、自覚はありません。でも、歌うように演奏することについては、潜在的といいますか、親から受け継いだものが私の血の中に流れていると思っています」

Cocomiは、ミュージシャンとしてのデビューより前に、モデルとしてデビューしている。2020年にDiorとアンバサダー契約。同時にメジャーなラグジュアリー系女性月刊誌の表紙を飾った。さらに、日本以外のアジア各国のファッション誌の表紙にも登場した。

モデル・Cocomiと音楽家・Cocomiは相乗効果を生んでいる。

「モデルのお仕事は、洋服をまとったときにいかに自分を表現できるかが問われます。音楽も同じです。演奏したときに、いかに自分を表現できるかが問われる。実際に、私自身、脳の同じ場所を使っていると感じています。

たとえば、今日着ている青いワンピースは晴れた空のイメージです。春の空の下にいる気持ちになり、大きく深呼吸をして撮影に臨みました。頭の中にある悩みはひとまず横に置いて。そのとき、思いました。あれっ、こんな気持ちって、最近どこかで体験したかも、と。ふり返ると、『タイスの瞑想曲』をレコーディングしたときも似た感覚だったことに気づきました。撮影と音楽は同じ感性で臨んでいるのだと思います」

【後編はこちら】

『de l'amour(通常盤)』 ユニバーサルミュージック ¥3,080、『de l'amour(初回限定盤)』ユニバーサルミュージック ¥3,850 ヤマノジュニアフルートコンクール最優秀賞、日本奏楽コンクール最高位をはじめ、さまざまなコンクールで賞を獲得しているフルート奏者、Cocomiのデビューアルバム。「大好きな曲をレコーディングしたい」という彼女の意思で、マスネの「タイスの瞑想曲」、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」、プーランクの「愛の小径」など名曲10曲を透き通るような音色で、歌うように、楽しそうに演奏していく。4月29日発売。

Cocomi
3歳からヴァイオリン、そして11歳にフルートを始める。
ヴラディーミル・アシュケナージ、エマニュエル・パユのマスタークラスを修了。
これまでに、ヤマノジュニアフルートコンクール優秀賞3回、最優秀賞1回並びに特別賞受賞。2019年には、日本奏楽コンクールで最高位を受賞。管楽器部門第1位とともにフランス近代音楽賞受賞。
現在、桐朋学園大学音楽学部 カレッジ・ディプロマ・コースに在学中。フルートをNHK交響楽団首席フルート奏者である神田寛明氏に師事。
2021年1月には、東京フィルハーモニー交響楽団の「ニューイヤーコンサート2021」にソリストとして出演。同年、京都の西本願寺で無観客で収録された「音舞台」への出演も果たす。
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NEXT GENERATIONS

新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載。毎回、さまざまな業界で活躍する10〜20代の“若手”に、現在の職業にいたった経緯や、今取り組んでいる仕事について、これからの展望などを聞き、それぞれが持つ独自の“仕事論”を紹介する。

TEXT=神舘和典

PHOTOGRAPH=丸谷嘉長

STYLING=Ryoko Kishimoto

HAIR&MAKE-UP=菊地美香子(TRON)

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