PERSON

2021.12.31

【西野亮廣】アメリカとも日本とも違う! 「韓国」のエンタメが成功する理由を分析する──連載「革命のファンファーレ2」Vol.23

毎度お騒がせしております。キングコング西野です。
今回の記事は、毎朝voicyという音声メディアで配信している「#西野さんの朝礼」でお話したことから、編集して紹介させていただきます。(※今回の記事を音声で楽しみたい方はコチラ

今日は「『応援広告』を考えた先に、韓国の恐ろしさを知る」というテーマでお話ししたいと思います。

【連載「革命のファンファーレ2~現代の労働と報酬」】

第23回「成熟」を売るか? 「成長」を売るか? 両方売ることに成功しているのが韓国だ!

アメリカに『応援広告』が根づかない2つの理由

先日、ものすごーく久しぶりにクラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げました。
ニューヨーク・ブロードウェイのデジタルサイネージに『映画 えんとつ町のプペル』のCMを流す費用(広告費)を集めるクラウドファンディングです。

すでに、たくさんの方に御支援いただいていて、現時点で、支援者数は「901名」、支援総額は「915万円」となっております。(12月29日現在)
本当にたくさんの御支援ありがとうございます。

支援は引き続き募集中です。
「ただただ支援」と称した西野の御礼の手紙(メール)は超絶オススメです。
こちらは、御礼の手紙とは名ばかりの、私、キングコング西野による約2000~3000文字のメンヘラ文章を送りつける段取りとなっております。
海外進出にあたって、いろいろと心境の変化がありましたので、そのあたりを、全力でぶつけようと思います。受け止めてください。

さて。
今回の企画に関しては、当然、僕が単体で動いているわけではなくて、アメリカの配給会社さんと情報を逐一共有しながら、一緒に進めています。
『映画 えんとつ町のプペル』のアメリカ公開は12月30日からだよ。

その中で、ちょっと面白かったのが、「今回のブロードウェイのデジタルサイネージの広告費用は、クラウドファンディングで集めましょう」と提案した時に、ちょっと驚かれたこと。
そして、実際にクラウドファンディングをスタートさせて、支援が集まっていく様子を見て、さらにメチャクチャ驚かれていたことです。

僕がクラウドファンディングの音頭をとっているものの、支援を集めているということは、要するに「ファンの方が広告を出している」という状態。
これって、韓国だと全然当たり前だし、ここ数年は、日本でもよく見かける光景ですよね。
いわゆる「応援広告」というやつです。
広告って、個人で出せなかったりすることもあるので、応援広告をサポートするサービスがあったりするぐらい、今となっては、韓国や日本じゃベターな文化です。

それが、アメリカの配給会社さんには、この文化がすごく新鮮に映ったらしい。実際、アメリカにも似たようなノリはあるらしいのですが、ここまでスムーズに話が進まないらしいです。

今回のクラウドファンディングは、「やる!」と言った翌日には立ち上がっていました。
アメリカの配給会社さんは、終始、「こんなことがあるんですか!」といった感じ。

スムーズに進まない理由の一つには、アメリカが「権利の国」というのも大きいと思います。
韓国の場合は、たしかオーディション番組か何かで「この写真素材は、誰でも使っていいっすよー」みたいな感じで、権利を軽く解放したんですよね。

『えんとつ町のプペル』は、その先駆けで、全ページ無料公開するは、絵本の素材はフリーにしちゃうは…とにかくハチャメチャです。
だけど、それがあったので、ファンの方がその素材を使って、自分達で広告を出し始めた。

でも、アメリカでは、その手はなかなか打てない。
これは、どちらかというと『権利』の問題です。
「アメリカは権利が厳しいから、お客さん主導のアプローチがとりにくい」という側面がある。
そう言われると、アメリカと「応援広告」の相性があまり良くないのも納得がいきます。

が、僕は、もう1つ、アメリカに応援広告が根づかない理由があると思っています。
それは「エンタメの味わい方の違い」です。

韓国の応援広告文化は、やっぱりオーディション番組がキッカケになっていたりしますし、あと日本だと「推しメンの為に」みたいなノリがありますよね。
すごく乱暴な分け方をすると、「成熟した姿」を売るのがアメリカなら、「成長していく姿」を売るのが日本や韓国で、“応援シロ”でいうと、当然、後者の方が大きい。

歌舞伎なんか観ていても、お客さんは「あの勸玄君が立派に舞台に立っている」という味わい方をしていたりします。
そこでは「成熟」じゃなくて「成長」を買っている

これが土台にあるから、「応援広告」というのが、僕らにはスポッとハマるんだろうなぁと思います。

「成熟」も「成長」も売るのが韓国

ここまで、「成熟を売るか?」「成長を売るか?」という二元論で話してきましたが、これが、ちょっとゾッとする話で、ここ最近の韓国は、成長も成熟も売ってるんですよね。

ここについてあまり議論されてませんが、本当に上手だなぁと思っていて、韓国は「叙々苑よりも美味しいお肉をBBQ場で提供する」みたいなことをやっていて、結構、無双状態だなぁと思っています。

AKBが「歌やダンスが上達していく成長」を売っているのならば、
BTSは「活躍するステージが上がっていく成長」を売っていて、歌やダンスはブッちぎりで成熟してまーす、みたいな感じ。

世界戦になると「去年より歌が上手くなりました」という伸び率はまったく相手にされなくて、シンプルにクオリティー勝負になってくるので、韓国のやり方が一番良い気がします。
見事ですよね。
こういった感じで、「文化」から打ち手を因数分解していくと、「じゃあ、自分はどうするかな?」と考えるようになるので楽しいです。

現場からは、以上でーす。

西野亮廣氏ポートレイト

西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1 本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。

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TEXT=西野亮廣

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