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2021.02.20

人間、佐藤可士和の素顔を物語るびっくりエピソード

完璧主義、クール、理論派で怖い人……。稀代のクリエイター・佐藤可士和の実の素顔とは? 妻でビジネスパートナー、人生をともにする悦子さんから名言(迷言?)満載のエピソードを教えてもらった。

「コンマ何ミリの世界で生きているんだから」

オフィスの打ち合わせスペースには長テーブルと片側8脚ずつ、計16脚の椅子が等間隔で並ぶ。「スタッフが使用後に椅子を整えるのですが、その間隔が何ミリかずれていても佐藤は嫌なので、等間隔を測るための専用定規をつくりました。『少しずれていてもわからないのでは? 』と問うと『わかる。コンマ何ミリの世界で生きているんだから』という名台詞が誕生。ちなみに自宅にもダイニングテーブル用の、オフィスより間隔の狭い定規があります。もちろん使用後は家族の誰も椅子に触らず、並べ直すのは佐藤自身です」。

「洗わなくていい! 俺が食器を洗うから」

ハードな毎日をこなす佐藤のストレス解消法は、家族が寝静まった夜中、また、朝起きてからの皿洗い。「夕食後、まだ洗っていない食器類を洗おうとすると『洗わなくていい』と自ら黙々と皿を洗う。整理整頓し、掃除をしてから仕事に向かうとスカッとした気分になり、何より気持ちいいらしいのです。ちなみに家族旅行のスーツケースのパッキングも全員分、佐藤が行います」。

「セルフィッシュじゃないとやりたいことができない」

「息子の英語の課題で父親について〈He is nervous,mature and selfish.〉と書いた一文を見つけ、『本質を摑んでいない? 』と本人に見せたところ、『すごいわかってる! selfishじゃないと、自分がやりたいことをできないからね』と喜んでいました。しかし、息子の解説によると『パパはガシャンと音を立てると雑だと怒るくせに、自分もよくガシャンガシャンとやっている』と。若干セルフィッシュの捉え方が違うような……」

「欠点を埋めるのではなく、長所を伸ばす」

ブランディングの基本は欠点を埋めるのではなく、長所を伸ばすこと。「欠点を埋めたら角が取れて、丸く引っかかりのないものになってしまう、とクライアントに説いているにもかかわらず、息子に『絵を描くのもいいけど、もっと運動したほうがよくない? 』など、ついバランスをとろうとする台詞が多め。それを指摘したところ『クライアントの気持ちがわかった』と大いに反省していました」。

「フィーの端数(はすう)をまけろって、クリエイションの全否定だよ」

「会社設立当初は佐藤自身が契約やフィーの交渉をしていました。ある日、普段穏やかな佐藤が『デザイン料の端数をまけろと言われたけど、それってクリエイションの全否定だよ』と怒り心頭の様子。でも話を聞いてみると、ほんの気持ち程度のディスカウント。クリエイターにお金や契約の話をさせてはダメだと思い、私がマネージャーになる決心をするきっかけとなりました」

「極真空手の道場訓は、ブランディングの真髄だ」

「家で長男が『一つ、吾々(われわれ)は、生涯の修行を空手の道に通じ、極真の道を全うすること』と、極真空手の道場訓を読む声を聞いた佐藤は『ブランディングの真髄だ』と大感激。目指す理念を貫きとおすことができなければ、存在感が際立たず、何をやっているのか世の中に認識してもらえません。この一文にブランディングの真髄を再確認し、常に自分自身にも問いかけながら仕事をしています」

「片山さんがやってくれるなんて嬉しくて!!」

「ある案件で佐藤は『この空間をデザインできるのは片山正通さんしかいない! 』と切望。当時面識はありませんでしたが、飛びこみで電話をかけて相談。でも、片山さんはスケジュール的に難しく、断るためにオフィスまで来てくれました。片山さんが来ると聞いた佐藤は、引き受けてくれたものだと勘違い。開口一番『片山さんがやってくれるなんて嬉しくて! 』と満面の笑みで出迎え、説明を始めてしまったのですが、後に『あまりに喜ぶから断れなかった』と、片山さんが打ち明けてくれました」

「思っていたより、いい人でした」

「初対面の相手によく言われる言葉です。佐藤のポートレートの印象なのか、作品に強くて明快なものが多いせいか、初めて会う相手が緊張していることが度々あります。打ち合わせは、相手のやりたいことを聞きだし、真意を理解するための場と思っているので、決して意見は押しつけず、佐藤は聞き役に徹する。話しやすい雰囲気も心がけるので、相手は予想外の『いい人』と感じるらしいです」

「ROMじゃなくて全部RAMなんだ」

「記憶力がいいはずの佐藤なのに、スケジュールは何度伝えても忘れます。前日に説明しても、当日の朝『今日、なんだっけ? 』と。さすがに4回聞かれた際に『もう3回伝えたけど』と言うと『何度も聞いていいことは忘れる。俺の頭はROM(保存領域)がなくて、全部RAM(作業領域)。だからこれだけの処理能力があるんだ』と言い切る始末。聞けばいいことは覚える必要はないと開き直っています」

「いつも最悪のシナリオを想定して、仕事をしている」

「私が新規案件を相談すると、佐藤はいつも最初に否定的な言葉を羅列します。でも、仕事が上手くいくと自分は最初からやりたいと思っていたと言うので、『それなら常に否定しないで』と言ったところ『いつも最悪のシナリオと最高のシナリオを想定している。最悪を想定するから否定もし、クライアントにも厳しいことを言う。それがリスク回避になって上手くいく』と言われ、妙に納得しました」

「国立新美術館には、もっと強いシンボルが必要」

競合プレゼンだった国立新美術館のシンボルマークデザイン。英語名「THE NATIONAL ART CENTER,TOKYO」の略称“NACT”をデザインに使用してもよいとのこと。「佐藤は『NACTでは弱い。国立新美術館の“これまでにない新しいあり方”をコンセプトに、強いシンボルが必要』と考え、海外に向ける意味でも漢字の“新”をモチーフに別案を提出し、その案が現在のシンボルマークに採用されました」。

「そんなんで、パフォーマンス落ちませんか? 」

独立したばかりの頃、体調不良で打ち合わせに臨んだ佐藤。「多忙を極めるなかで時間をやりくりしたであろう某経営者から『風邪ですか? そんなんで、パフォーマンス落ちませんか? 』と厳しい言葉を受け、驚きとともに、自らの不甲斐なさを指摘してくれたことに感謝していました。それ以来、ダレ気味の時は私も『そんなんで、パフォーマンス落ちませんか? 』と言うようにしています(笑)」。

 

Illustration=村上テツヤ

TEXT=今井 恵

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