セレブリティがこぞって旅のコーディネイトを依頼するのが、富裕層向けコンシェルジュサービス、アルカディアの才津香果(さいつかぐみ。以下かぐみ)さん。これまで自身の旅にかけてきた自腹総額は9億円超え。非日常を求め世界を回り続ける彼女が紹介する、脳がバグる驚きの旅とは。連載第5回目は、究極のホスピタリティビジネスのカタチに迫る。
海もスパも、レストランもすべて自分だけのもの
7000以上の島々からなる国、フィリピン。その南西部の小さな島で夜、空を見上げると、数多の星が強い光を放っている。街の明かりなど届かぬ孤島、そしてこの島にゲストは自分たちだけ――。「マニラからヘリコプター(5人乗り)で約2時間15分、ひと組のゲストで1島を貸し切るリゾート『バンワ・プライベート・アイランド』に到着します。島内には6つのヴィラとレストラン棟、プールはもちろんテニスコートにゴルフコースまで。すべてをひと組のゲストで独占できるという贅沢なリゾートです」
わずかひと組のゲストからのあらゆる要望に応えられるよう、島内にはバトラーを含める60名ものスタッフが待機している。
「レストランやルームサービスでは、メニューにないものであっても、大抵のオーダーは何でも通ります。『お好きなものをお好きだけ』という究極のオールインクルーシブスタイル。ゲストを満足させたい、とホスピタリティに満ちた人が自分たちのためだけに60名もいる。
私もコンシェルジュという仕事をしていますが、お客様にご要望をぶつけてもらえると嬉しいですし、ご要望がはっきりしていれば仕事もしやすい。だから私もゲストの時は、わがままを言うようにしています。日本人は遠慮深い方が多いのですが、このようなハイエンドなリゾートでは、要望を言えてこそ楽しみ尽くすことができると思っています」
赤い花と夕景のロマンティックディナー
この滞在でのかぐみさんのわがままとは、『薔薇のロマンティックディナー』だった。
「ヴィラのプールに薔薇の道をつくって、そこでロマンティックなディナーをしたいとお願いしました。薔薇の花は島内にはなかったのですが、それでも赤くて薔薇によく似たお花を島内から集めて敷いてくれました。バトラーさんだけではなく、キッチンやランドリーのスタッフさんまで、どんどん部屋に集まってきて、まさに総出で、でも楽しそうに花をセッティングしてくれたのが印象的でしたね」
薔薇の花が用意できないなら、どうするか。代案を立て、人を集めて即座に動く。NOとは決して言わず、自分たちのできうる最大限を楽しみながら行う。それはまさに、ホスピタリティ産業だけでなく、すべての仕事において必要な姿勢だろう。
このリゾート、3泊以上からの利用で、日本円で1泊およそ1600万円。その価値は、どれだけわがままを言えるかで大きく変わってくる。
才津香果/Kagumi Saitsu
1982年生まれ。アルカディア代表取締役。国内外の富裕層に向けた、会員制のコンシェルジュサービス会社を運営。ギフトのセレクトから、ラグジュアリーな旅の手配までオーダーメイドで富裕層の要望をかなえる。
※旅のご相談はhttps://arkadear.comまで。