ゴルフ界でもサッカー界でも、大物選手の移籍で話題となっているサウジアラビア。その実態を探るべく現地に訪れたレポート3回目。今回は、サッカー以外の魅力をお伝えする。
サッカー観たり、和牛食べたり。サウジアラビアを旅するということ
サウジアラビアで和牛を食べられるとは思ってもみなかった。この5月に完成したばかりの超高級ショッピングモール「VIA RIYADH」を訪ねる。ロールス・ロイスやマイバッハなどがズラリと並ぶパーキングエリアを抜け、ラグジュアリーブランドの優雅なブティックを眺めつつ進むと、そこに墨書で描かれた「WAGYUMAFIA」のロゴがあった。
「2019年に熱烈な招致を受けて、サウジアラビアのイベントに参加したんです。男女が同じ空間で食事をするという、サウジアラビアではそれまで考えられなかった新しい食のイベントだったんですが、酒もない、和牛のことも知らない人たちにどこまで自分たちの魅力が伝わるのかすごく不安でした。でもフタを開けてみたら、延べ1500人が集まり大盛況。それがきっかけとなって今回のVIA RIYADHにも店を出してほしいという話になりました。このVIA RIYADHはサウジアラビアという国が変革していくことを象徴するプロジェクト。世界のそうそうたるレストランとともにWAGYUMAFIAが選ばれたことをとても光栄に感じています」
そう語るのは、堀江貴文さんとともにWAGYUMAFIAのプロデューサーをつとめる浜田寿人さん。今回、アル・ナスル、パリ・サンジェルマン、インテルの3チームが参加するジャパンツアーでは、ホスピタリティエリアでWAGYUMAFIAの名物カツサンドが振る舞われ(数量限定)、堀江さんがトークセッションを行うことになっている。
「WAGYUMAFIAの日本や香港の店には、サッカー関係者がよく来るんですよ。今度サウジアラビアのチームに入るベンゼマもうちのファンだし、ベッカムとかパリ・サンジェルマンのオーナーもそう。今回のジャパンツアーの件もそういう話のなかで決まったと聞いています」
今回、サウジアラビアを訪ねて感じたのは、この国ではこれまでの常識が通用しないということ。決してネガティブな意味ではない。50℃を超えるとてつもない暑さも、まったく意味がわからないアラビア文字も、突然始まる礼拝の時間も、新鮮で驚きに満ちている。だが、ビジネスとしてこの国と付き合うのは大変なのではないだろうか。
「まあ、いろいろ大変なことはありますよ。でもサウジアラビアの人は、本当に人柄がいい。それにビジネスの規模感とスピード感もすごい。すべてがダイナミックに決まっていくんです。いまサウジアラビアのサッカーリーグがとんでもない年俸でスター選手を集めているじゃないですか。ゴルフのLIVツアーもそうだし、VIA RIYADHも同じ。とにかく世界のトップクラスを集めて、そこから国を発展させていこうという思いを強く感じます。2019年、私たちが初めてこの国に来たとき、女性スタッフが空港で黒いベールを着せられたんです。でもたった4年で女性がそんな格好をしなくてもよくなったし、男女が同じテーブルで食事をする姿も珍しくなくなった。改革政策の『ヴィジョン2030』でサウジアラビア=石油というイメージから急速に変わりつつある。この国に来るなら、いまがいちばんおもしろいと思いますよ」
サウジアラビアでおすすめの食・時期・スポット
WAGYUMAFIAはもちろん絶品だったが、それ以外のレストランも軒並みおいしかった。サウジアラビアの地元で多く楽しまれているのは、レバノンやトルコなどと似たいわゆる中東料理。ひよこ豆をペースト状にした「フムス」や肉や豆をコロッケ状に揚げた「ファラフェル」、米料理の「カプサ」など。なかにはラクダ肉のような珍しい食材をつかったものもあるが、スパイスは全体的に抑えめで、日本人でも食べやすい。
観光旅行で行くなら、やはり夏は避けたほうがいいだろう。気温は早朝や夜でも35℃ほど。50℃を超えることもあるという日中に2〜3分でも外を歩こうものなら、体中がヒリヒリして猛烈な乾きを感じることになる。必然的に活動時間は早朝と夜に限られてしまうのだ。ならばと夜のマーケットなどを訪ねると、昼間はどこにいたんだろうと不思議になるほどの人であふれていて、飲食店も深夜まで多くの客でにぎわっている。これも夏ならではのサウジアラビアの景色なのかもしれない。
今回は首都リヤドのみを訪ねる弾丸ツアーだったが、帰国間際にリヤド市内からクルマで90分ほどの名所「エッジ・オブ・ザ・ワールド」を訪ねることができた。砂漠の真ん中を進んだところにあらわれた約300メートルの断崖。まさに“世界の果て”を思わせる景色に息をのんだ。
スター選手が集まるサッカーの試合はもちろん魅力的だ。でもそれと同じくらいの魅力がまだまだこの国にはある。サウジアラビアリーグの試合のスケジュールを見ながら、またこの国を訪ねてみたいと思った。