世界のサッカー地図が大きく変わるのかもしれない。サウジアラビアリーグのクラブがものすごい勢いで選手を集めているのだ。昨シーズン約286億円という破格の年俸でアル・ナスルがクリスティアーノ・ロナウドを獲得し大きな話題となったが、今シーズンはさらにその勢いが加速している。
なぜサウジアラビアリーグは、スター選手の獲得にこだわるのか
「リーグの強豪、アル・ヒラルはメッシに年俸約750億円という超破格のオファーを出したといわれています。大谷翔平の来季以降の年俸は約80億円程度といわれていますが、これはメジャーリーグの史上最高額。そう考えると、メッシに提示された年俸がとんでもないことをわかってもらえると思います。結局メッシはアメリカMLSのインテル・マイアミに移籍することになりましたが、年俸は約70億円。アル・ヒラルの10分の1でした」(スポーツ紙記者)
メッシがダメなら、というわけではないだろうが、アル・ヒラルはPSGのネイマールやレアル・ソシエダの日本代表・久保建英らにも交渉を持ちかけているとか。ライバルチームも黙ってはいない。アル・イテハドがレアル・マドリードからベンゼマ、チェルシーからカンテ、セルティックからジョタを、アル・ナスルがインテルからブロゾビッチを獲得した。
「サウジアラビアリーグが手をのばしているのは選手だけではありません。アル・イテファクはリバプールのレジェンド、スティーブン・ジェラードを監督として招聘。アル・ヒラルはモウリーニョと交渉しているという情報もあります。とにかく驚くのは、年俸の高さ。結局断りましたが、現在年俸約3億円といわれている久保建英には、約63億円が提示されたといわれています。おそらくサウジアラビアから声がかかった選手、監督はみな現状の10倍から20倍の金額を提示されているはずです」(同前)
なぜサウジアラビアリーグは、それほどまでにスター選手の獲得にこだわるのだろうか?
「W杯を誘致したいという強い思いのあらわれでしょう。隣国のカタール大会が成功したことがよほど悔しかったのではないでしょうか。前回のW杯でアルゼンチンに勝ったことで、サウジ国内のサッカー熱はかなり上がっています。以前のサウジリーグはお金持ちの道楽でした。でも、その子どもたちの世代がヨーロッパやアメリカに留学したことで、スポーツをビジネスとして考えるようになり、マンチェスターシティやPSGなど、ヨーロッパの強豪チームを買収し大きな成功を収めています。そんな“留学組”が、次は国内リーグを盛り上げようとしているのだと思います」(スポーツライター・上野直彦さん)
スター選手を集めれば、リーグ全体のレベルが上がる。それはかつてJリーグが通った道程でもある。
「Jリーグも初期は同じようにジーコやストイコビッチなど海外のスター選手を招聘。それがリーグを盛り上げ、日韓W杯に繋がり、日本代表もW杯の常連国といえるほどの成長を遂げた。サウジはいま、日本がたどったような成長曲線の入り口にいるといっていいでしょう。近い将来、サウジが強豪国と呼ばれるようになっても不思議ではありません。これからサウジアラビアリーグがどんどんおもしろくなると思いますよ」(上野さん)
そんなサウジアラビアの強豪、クリスティアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルがこの夏来日。PSGやインテルと試合を行う。欧州リーグのチームばかりが注目されがちだが、急成長を遂げつつあるサウジアラビアリーグのアル・ナスルからも目が離せそうにない。