キリスト教会の闇を描く『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』~滝藤賢一の映画独り語り座67

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある!  役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!【滝藤賢一の映画独り語り座67】

過去、そして未来のためにトラウマを抱えた男たちが立ち上がる

ステイホーム中、どのようにお過ごしでしたか。私は斎藤 工さんから声をかけていただき、先日リモートドラマに出演したところ。彼の機動力には驚かされます。皆さまのなかには、この自粛期間があったからこそ、いろんなことを考え、模索している方もいると思います。

そこで今月は子供たちの未来のため、そして、自分の人生のため、中年男性が立ち上がる映画を選びました。監督のフランソワ・オゾンは『スイミング・プール』や『8人の女たち』で知られています。ギミック的な演出が特徴だそうですが、この『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は実話がベース。淡々と丁寧に演出されている。

テーマは、神父による児童性虐待への告発。フランスのリヨンで働く銀行員が、少年時代、自分に性虐待をしていた神父が老いてなお、子供と接する仕事をしていることを知り、教区に告発するところから始まります。彼の告訴をきっかけにひとり、ふたりと被害を公表する人間が現れ、ようやく社会問題へ。

2番目の告発者を演じる俳優は、以前この連載でも紹介した『ジュリアン』の壮絶なDV夫役のドゥニ・メノーシェ。あの時の彼の演技がトラウマになっている私は、観ていていつキレるかひやひやしました(笑)。そして、私が最も心を動かされたのは3番目の告発者として登場する男。神父による性被害のトラウマが人生に大きな悪影響を与え、どん底をさまよい続けている。それが同じ境遇の仲間を得ることで彼自身も環境も変わっていく。それ故に、ダメな時代に結びついていた恋人との不和につながってしまう。実に人間らしい。大切な何かを得ると、必ず大切な何かを失う。くう、考えさせられます。

昨年Netflixで観た『2人のローマ教皇』のように注目されている、キリスト教会という巨大組織が抱える問題。今回の作品は、加害者側の神父像の描き方も新鮮で、被害者の親たちの描かれ方も奥行きがあります。事件はまだ係争中だそう。早い解決を願いたい。

©Jean-Claude Moireau

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
フランスのリヨンを舞台に、教会のボーイスカウト活動を通して、性被害にあった当事者たちが20年後、30年後、告発へと向かう葛藤を描く。滝藤さんが「演じたい」と話すエマニュエル役のスワン・アルローは、この演技でセザール賞助演男優賞を受賞した。
2019/フランス
監督:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルロー
配給:キノフィルムズ/東京テアトル
7月17日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか
全国公開

Composition=金原由佳

滝藤賢一
滝藤賢一
1976年愛知県生まれ。大河ドラマ『麒麟がくる』に出演中。今秋『ヴィレヴァン!2 ~七人のお侍編~』(名古屋テレビ)もスタート。10月23日には映画も公開予定。
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