身長172cm。野球選手として決して恵まれた体躯ではない。それにもかかわらず、なぜ阪神・近本光司選手は毎年活躍を続けられるのか? その秘密は、近本選手が編み出した思考術にあった。野球(スポーツ)だけではなく、仕事や勉強、 もっと言えば人生の礎になりうる、近本流思考術を記した『僕は白と黒の間で生きている。』から一部抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

毎試合繰り返す「インプット、アプローチ、アウトプット」の作業
最近、同い年でキャッチャーをしている長坂(拳弥)に、「(近本って)ほんまに野球好きやな」と言われました。
「えっ?」と思いました。天邪鬼(あまのじゃく)のようですが――野球が何よりも大好き! と言えるほどではない。これが本音です(笑)。
それは野球以外にも好きなことがあるから。
アニメを観たり、ポッドキャストを聞いたり、コーヒーを淹れたり、美術館に行ったり、家族でディズニーランドに行ったり、いろんな人の思考に触れたり……そういう瞬間を差し置いて、野球が一番! というわけではないのが僕の考える「近本」です。
でも長坂がそう言う理由は納得できました。
僕は、考えることが大好きで、それが性分にも合っています。それゆえ、毎試合「インプット、アプローチ、アウトプット」の作業を繰り返しています。
インプットとは、試合前までに行う準備です。相手投手の特徴や傾向、球の軌道をイメージして、その日の対策を決めます。例えば、翌日はジャイアンツの赤星(優志)投手と対戦することがわかっているとします。赤星投手は、低めのストレートが「シューッと」伸びてくる、という特徴があります。
だから僕は、そのボールを「打つか」「打たないか」を考えます。
今の調子の僕に「打てるか」「打てないか」も考えます。
「打ちに行って、フォークボールが来たら振って(空振りして)しまうな」
「じゃあ、低めの真っすぐの見逃し三振はOKにするか?」
「三振は嫌だけど、それくらいの割り切りは必要かも?」
「で、あれば、高めに来たボールは絶対に打ちに行こう」
「その高めから来た、そろそろ来るかもしれないフォークをどう打つかが重要だ」
「でも、一応カーブだったらどうするかも決めておこう」
データや映像、これまで書いてきたメモを見ながら、そうやって打席のイメージを作り、再びメモしたりします。
試合前の練習では、自分の身体の状態もインプットしていきます。太ももが張ってるな、ストレッチの仕方を少し変えよう。いつもより身体が軽いな、しっかり練習から振っておこう。打撃練習に入れば、インプットした対策を実践できるようにアプローチを調整していきます。
アウトプットは実際の試合です。
インプットしたことをベースにして試合で取り組んでみる。そのアプローチの結果は、その場で出てきます。もしいい結果にならなければ、
「あれ、練習ではできていたのに、なんで打席ではできなかったんだ?」
「いやー、なんで咄嗟(とっさ)にあのアプローチにしてしまったんだろう?」
とベンチで振り返り、すぐにメモをします。これがアウトプット。
「次の打席にどう生かせるか」
「あの打席のアプローチを、次の試合でやってみたらどうだろう?」
そうして、またデータ、映像、メモを見ながら翌日に臨んでいく……。
アプローチに必要なコンディション調整やトレーニングも欠かせません。こうやって打つ、を体現するためには、その身体(関節、筋肉など)が思う通りに動いてくれなければ、選択肢が狭まってしまいます。
だから、毎朝、筋トレをするし、マイ枕やマイふとんを遠征先に持参するなどコンディショニングには相当気を使います(最近はこれにコーヒーマシーンも加わりました)。
と、こうした作業を毎日毎日している姿を客観的に見て、長坂は「野球が好きだな」と言ったのだと思います。
なるほど、と思ったのですが、実際に僕が好きなのはこの「インプット、アプローチ、アウトプット」の過程です。これがめちゃくちゃ楽しい。
これはきっと、ビジネスの世界でもそうなのかもしれませんね。

