入団から7年。通算平均で年間約156本のヒットを放ち、盗塁王6回、ベストナイン5回など、安定した成績を残し続ける阪神・近本光司。それには大きな理由があった。

「正解か、不正解か。成功か、失敗か。情報が多いなかで、僕たちは“どっち”を急ぎすぎているのではないか?」、と近本選手は話す。結果のみを追わず、検証する、揺らぐ、保留する、を大切にしてきた。その独特の思考法を心にセットしておくと有益だ。
僕たちは「どっち」を急ぎすぎている
スマホを忘れて出勤したらどんな気分になるだろう。いや、そんなことは起こりえないのかもしれない。家の扉を開けた瞬間に直感的に気づくだろうし、クルマであれば「携帯電話が接続できませんでした」と知らせてくれる。我々の日常にスマホは欠かせない。なければ不安すら覚えるほどに。
それでも想像してみてほしい。スマホがない一日を。連絡ができない、メールが見られない、道順を調べられない……「答え」がわからない。
スマホの中にはたくさんの便利なものが溢れ、触っていれば、なんだか「答え」がわかった気になる。実際、だいたいの「答え」はわかる。
人気球団、阪神タイガースに所属する著者・近本光司はそんな状態を「(なんだかなぁ)楽しくない」と表現する。
プロ野球選手であり、大谷翔平、鈴木誠也といったトッププレイヤーと同い年。近本もまた、彼らに肩を並べる日本球界の顔のひとりである。
近本は足が速い。その証拠にプロ入り7年で6度の盗塁王に輝く。速すぎる。なのに「早すぎる」ことには抵抗を覚える。「決めつけるのが、早すぎやしないか?」と。
初の著書のなかで近本は「ないことは僕の人生の重要な一部になっています」と書いた。
近本は、「わからない、才能がない、持っていない、打てない、未来が見えない」といった「ない」と感じる瞬間に生まれる感情を「揺らぎ」と捉え、その「揺らぎ」に対し、独自の方法論(下図)を駆使してプロ生活を送ってきたという。

超一流というのは「自分のペース」を持っているのだ、と思い知らされる。
本書が秀逸なのは、その「自分のペース」を誰もが獲得できるよう、ヒントがちりばめられている点だ。先のフレームワーク然り、目の前の出来事への見方、考え方然り。タイトルにある「白と黒の間」はその象徴的な概念だ。
スマホがすぐに教えてくれる「答え」は誰もが知る「答え」だ。近本はそれに満足しなかったから今がある。
もしスマホを忘れたら。発見だらけの一日になるかも──近本の言葉にそう思わされる。

