言うことを聞かない、反発する、親を毛嫌いする。そんな思春期の子どもとの正しい接し方について、教育者歴30年以上の高濱正伸氏が秘策を伝授! 【その他の記事はこちら】

過保護な母を引き離すのは、父親の役割
思春期の子どもとの接し方に悩むお母さん、お父さんは非常に多いですね。この時期は、身体ももちろん変わりますし、好きなものや考え方、周りの環境、つきあう友達も変わります。そうなると、幼児期には絶対的な存在だった親が「たいしたことないな」と思えてくるわけです。それなのに、幼児に対するのと同じような接し方をしていたら、子どもがウザがるのも当然。幼児期が芋虫なら、思春期は蝶となって飛び立つ時期。親は、子どもに「葉っぱを食べなさい!」と指示するのではなく、子どもが独り立ちできるよう、飛び方や敵から身を守る方法を教えなくてはならないのです。
ところが、この切り替えができない親御さんは意外と多い。とくに、お母さんと息子の関係は要注意。お子さんが引きこもっているという相談もよく受けますが、子どもが思春期になっても、お母さんが手取り足取りベッタリで、過保護、過干渉というケースが多く見受けられます。45歳の息子を連れたお母さんが、「この子、私が起こさないとダメなんです」と言っていたりして。それは、息子が中学に入った時点で辞めるべきことなのに。
そこで、お父さんの出番です。子どもに対して、つい口を出したり、手を出したりする妻に対して、「君が主導する時期は終わっている」と、全力で止めてください。妻がすんなり聞いてくれる保証はありませんが、多少夫婦間でバトルがあったとしても、将来悲惨なことになるより、ずっと良いと思います。
思春期の子どもは“外の師匠”に委ね、そっと見守る
お父さんもお母さんも、子どもと距離を置くべき思春期は、外部の力を借りることが大切。学校や塾の先生、部活の顧問や家庭教師、近所の頼れるおじさんやおばさんでも構いません。子どもが憧れ、尊敬できるような“外の師匠”となる人がいるのなら、思い切って委ねた方がいい。というか、師匠を見つけることが、親の役割といっても過言ではありません。
歴史を紐解いても、第一線で活躍している人の多くが、思春期に良き師匠と出会い、その影響を受け、大成しています。『私の履歴書』(日本経済新聞朝刊の最終面で1956年から続く名物コラム)などを読むと、一目瞭然。「野球部で監督に厳しくされたから、今があります」とか、「この道に進もうと決めたのは、あの先生のおかげです」といったエピソードは山ほど出てきます。
ちなみに、「ワガママになりやすい」とか「打たれ弱い」など、親の愛情を一身に受けるからこその“ひとりっ子問題”も、外の師匠で解決が可能。代表的なのは部活動で、大勢の仲間にもまれたり、指導者から理不尽な仕打ちをされたり(もちろん体罰やパワハラなどは論外ですが)といった経験は、過保護にされがちなひとりっ子を強くしてくれます。
ただし、親が勧めたのではなく、子ども自身が選んだ場であることがポイント。自分で選んだプロジェクトだから、やらされている感なく、苦しくても頑張り、やり遂げようとするのですから。我が子が理不尽な目に合っているのは、親として忍びないと思いますが、「自立への一歩だ」と自分に言い聞かせ、そっと見守ってください。山村留学やボーディングスクールなど、親から物理的に離れる経験も良いと思います。親が驚くほど成長し、たくましくなって帰ってくるはずです。
ひとりっ子に限りませんが、辛い経験は子どもの心を強く磨るというのが、私の考え。心身に危険が及ぶようなことは別ですが、多少のトラブルであれば、親は口を出さない方がいい。もっとも、お母さんが、常に子どもの側に立ち、寄り添おうとするのは、母の性。だからこそ、お父さんには、「この辛さが、この子にとって将来プラスになるはず」と、妻を諭してほしいと思います。
思春期の娘とは距離を置き、息子とは男同士のつきあいを
ただでさえ厄介な思春期の子どもですが、異性はとくにそう。「お父さんキモ!」「臭いから近寄らないで」と、娘に毛嫌いされ、悩んでいるお父さんのなんと多いことか。でも、これ、生物学的に致し方ないないこと。娘がお父さんの臭いを忌み嫌うのは、近親相姦を防ぐためですからね。「小さい頃は、あんなにベッタリしてくれたのに」と嘆く気持ちはわかりますが、大人になればまた戻ってきてくれますから、この時期はガマンして距離を置きましょう。
もっとも、同性である息子に対しては、お父さんが果たすべき役割が残っています。「仕事場に連れて行き、働く父の姿を見せる」「男だけでキャンプをする」「セックスのことを正しく教える」など、息子が、お母さんだと気恥しいとか抵抗感があるようなことを、してやってほしいのです。
なかでもおすすめなのは、小学校卒業前後に、息子とふたり旅をすること。目的地はどこでも構いませんが、個人的には、知覧の特攻平和会館や、広島・長崎の原爆関連施設など、心を揺さぶられるような場所が良いと思います。男同士なので、さほど会話は盛り上がらないかもしれませんが、息子にとって忘れ難い思い出になること、間違いなし! 「ママ、今は怖いけど、結婚した時はかわいかったんだよ」なんて話もいいですね。男同士の会話をするということは、子どもを大人扱いしている証。父と息子の関係は、間違いなく変わります。
とはいえ、思春期の入り口ですから、息子は嫌がるそぶりを見せるかもしれません。でも、親が自分のために時間をとってくれるのは、内心嬉しいもの。「小学校卒業したらパパと二人旅をしよう」と、前もって布石を打っておくのも一案。私が知る限り、父と息子旅の経験がある親子は、子どもが成人した後も関係は良好なので、ぜひとも実践してください。 同様に、母親は思春期の娘に対する役割があります。“親と子”ではなく、自分は先輩OL、娘は新人OLだと思って、女性同士の会話をすること。恋バナなんて最高ですね。
高濱 正伸/Masanobu Takahama
1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立、会員数は23年目で20,000人を超す。花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック作問委員。環太平洋大学(IPU)客員教授。武蔵野美術大学客員教授。日本棋院顧問。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー。「メシが食える大人」「モテる大人」を教育理念に、子どもの非認知能力育成を実践。近年は家庭教育や父親教育にも注力し、講演は年間300回を超える。著書多数。

