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2026.01.02

子育てに戸惑う父親へ。花まる学習会・高濱正伸、我が子が“メシが食える大人”になるためにすべきこと

先が見えない時代、どう育てれば、我が子が幸せな人生を送ることができるだろうか。子育てに戸惑う父たちに向け、カリスマ教育者・花まる学習会の高濱正伸氏が、参加者も運営スタッフも全員“男”で開催する特別講義を開講! 【その他の記事はこちら】

1993年、「メシが食える大人」=自立した人間、「モテる人」=魅力的な人を育てることをミッションに掲げ、「花まる学習会」を設立し、近年は家庭教育にも注力している高濱正伸氏。気づきあり、笑いあり、涙ありの保護者向け講演会には悩める母たちが殺到、最近は、父親限定の子育て講演会も開催している。告知をするや否や500人以上の参加希望者が集まるほど、盛況を博しているという。

父親教育の第一人者は、迷える父たちに何を語っているのか。その一部を5回にわたってお届けする。

必要なのは基礎学力+「思考力」「やるべきことをやる力」「ハカセ力」

先日、AIの第一人者が主催した会合に参加したのですが、衝撃的なことがありました。参加者の多くは一流企業の経営陣でしたが、うちひとりが、「AIと対話する1時間は、とても刺激的で、勉強になる。経営に関するアドバイスなど、会社としてもプラスになることが多かったので、コンサルティング会社の契約を打ち切った」と言ったのです。大学生の希望就職先の上位になっている花形職業は、すでにAIにとって代わられつつある。AIの進歩、力は、我々の予想をはるかに超えていると実感しました。

建築家の友人も、同じようなことを言っていました。ChatGPTに指示すれば、リクエストした通りの設計図やデザインが、構造力学まで踏まえて、瞬時に上がってくるのだとか。AIの台頭で、いろいろな職業が消滅すると言われていますが、その未来はすぐそこまで来ているんですね。

そんな時代でも、我が子を“メシが食える大人“にするにはどうしたらいいか。それは、基礎学力の上に自分なりの強みを持っている人間に育てることに尽きます。その強みとは、「思考力」、「べき力」、そして、「ハカセ力」。「思考力」とは、自分の感性や気づきに注目し、考え抜く力ですが、これはAIにはできません。「べき力」とは、やるべきことをやる力。フォロワー的な仕事にはなりますが、決められていることを当たり前にできることは、どんな時代でも必要とされます。

最後の「ハカセ力」は、関心のあること、好きなことにひたすら突き進む、探求する力を指します。専門性やオタク力と、言い換えても良いでしょう。最たるケースが、大谷翔平選手。彼がこれほどの選手になったのは、才能ももちろんあったと思いますが、それ以上に野球が好きでたまらなかったから。どうしたらもっとうまくなれるか、メジャーで活躍できるかを、高校生の頃から生活習慣を含めて考えて、考えて、それを実行してきた結果、今があるのだと思います。何かを突き詰める力を持っている人は、どんな時代でも強いのです。

読み書きは問答無用でやらせるべき

基礎学力の最たるものは、読み書きと計算。「花まる学習会」では計算演習の反復で計算力を身に着けさせますが、これは家庭でもぜひ取り入れていただきたいですね。

なかでも、漢字を含む読み書きは、たとえ子どもが「やりたくない!」と反発しても、問答無用でやらせるようにしています。自信をもって断言できますが、「あの時やらせてくれてありがとう」と、親に感謝する日が必ずきます。「やるべきことをやる力」が身につく上に、国語力は、すべての学習のベースになるものだからです。算数の文章題にしても、理科や社会の問題にしても、何を問われているのか、文章が理解できなければ先には進みません。そのくらい国語力は大切です。

長年多くのご家庭を見てきましたが、子どもの国語力には、その家庭の文化が反映されています。とくに、お父さんが言葉を厳密に使っていると、子どもの国語力は高くなるんですよ。もう25年も前の話ですが、小学6年の生徒がお父さんに「昨日、喧々諤々で話し合って良かったね」と言ったら、お父さんが、「喧々諤々? 広辞苑を見てごらん、喧々囂々(けんけんごうごう)と侃侃諤諤(かんかんがくがく)という言葉しか載っていないよ」と、指摘したんです。その子は、国語に限らず、どの教科もとても優秀でした。もっとも、メディアでも広く使われるようになったからか、今では喧々諤々も広辞苑に載っていますが(苦笑)。

「親の頭がいいから、子どもも頭がいい」とよく言われますが、それは遺伝を指しているのではなく、親が言葉を大事にしていると、明晰な言葉遣いができ、論理的に考えられる子どもが育つということ。言葉を厳密に扱い、論理的な会話をするのは、お父さんの得意分野。お子さんが小さいなら、しりとりといった遊びのなかで、語彙を増やすのも良いでしょう。

将棋や囲碁、アルゴカードの“感想戦”が思考力を磨く

お父さんには、子どもの思考力を磨くことにも積極的に関わっていただきたい。おすすめなのは、囲碁や将棋の感想戦。「あの場面で、どうしてあそこに歩を置いたの?」「パパが角で王将を狙ってくると思ったから」「その後、飛車を指したのはなぜ?」「それはね…」と、論理のスモールステップを重ねていくことで、子どもの思考力は伸びます。対戦相手のカードの数字を推理する「アルゴ」も、論理的思考が向上するゲーム。5歳くらいから始められるので、ゲームの後の感想戦とセットで、お子さんと楽しむのも良いですね。

最後に「ハカセ力」について、もう少し詳しくお話ししておきましょう。野球でも、電車でも、お城でも、昆虫でも、好きなものにとことん夢中になっている時は、親は口を出さず、見守る。そうすることで、子どもの探求心、ハカセ力は育まれます。

この力は、幼少期から小学校を卒業するまでくらいに養われるのですが、案外厄介なのがお母さん(苦笑)。とくに、子どもが好きなものがゴキブリやらダンゴムシやら、お母さんにすれば“とんでもないもの”の場合、全力でやめさせようとしてしまいがち。でも、それはハカセ力を阻害することになるので、絶対にやめていただきたい。お母さんのそんな姿を見た時は、即刻止める。それも、お父さんの大事な役割です。

何をしている時に我が子の目が輝いているのかを察知し、そのじゃまをしない。多少勉強ができなくても、ハカセ力さえ身についていれば、思春期以降いくらでも修正はききますから。

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高濱正伸/Masanobu Takahama
1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立、会員数は23年目で20,000人を超す。花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック作問委員。環太平洋大学(IPU)客員教授。武蔵野美術大学客員教授。日本棋院顧問。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー。「メシが食える大人」「モテる大人」を教育理念に、子どもの非認知能力育成を実践。近年は家庭教育や父親教育にも注力し、講演は年間300回を超える。著書多数。

TEXT=村上早苗

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