カリスマ教育者、高濱正伸氏いわく、「子どもとのつきあい方は、幼児期と思春期で変えること。そうしないと、悲惨な将来が待っている」と。連載第2回は、幼児期の接し方、父親ならではの役割を教えてもらう。
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必要なのは「愛されている」実感
講演会で保護者から多く寄せられるのが、「子どもが、まったく言うことを聞きません」「やたらと反発して困っています」といった悩み。ほとんどが、小学5、6年生から高校生くらいまで、いわゆる思春期に突入した子どもたちです。
「またゲームなんかして! 宿題終わったの⁉」「はぁ⁉ うるせぇなぁ」「親に向かってその態度は何⁉ アンタがちゃんとやらないから言っているんでしょ!」。そんなお母さんと子どものやりとり、みなさんも目撃したことがあるのではないでしょうか。
このやりとりで間違っているのは、お母さんの方。「宿題終わったの?」という言葉は、幼児に対して使うもの。自我が芽生えてきた思春期の子どもに、そんなことを言っても聞き入れるわけはありません。幼児期と思春期では、親は子どもに対する接し方を完全に変えなくてはならないのです。
4歳から9歳くらいまでの子どもにとって親は絶対的な存在。とりわけお母さんは世界で一番大事な人であり、外でどんなに嫌なことがあっても、家に帰ってお母さんにくっつけば大丈夫といった状態で生きています。ママがニコニコしていれば自分も嬉しいし、ママが悲しいと自分も悲しい。みなさんも思い当たる節があるのではないでしょうか。
こうした幼児期にある子どもに対して親がすべきなのは、「自分は愛されている」と子どもに感じさせること。それによって育まれた自己肯定感が、子どもの健全な成長を支えます。だから、とことんかわいがってOK。幼児期の男の子にとってママが恋人のような存在であるのと同様、女の子にとってもパパは憧れの王子様という“貴重な時期”ですからね(笑)。これでもかというくらい、たっぷりと愛情を注いでやってください。
将来子どもの歯止めになるのは、お父さんの“怖い叱り”
愛情を与えることはとても重要ですが、それだけだと子どもはワガママな王様になってしまうので、ダメなことはダメ、我慢も必要などと、しつけることも必要。しつけというのは、正しいか正しくないかはさておき、社会的な集団の決まりごと。その両輪あってこそ、将来、“メシが食える大人”になれるのです。
そこで、お父さんに求められるのは、子どもが怖いと思うような叱り=子どもを本気で叱ること。お母さんへのアンケートでも、「私がいくら『早くお風呂に入りなさい』と言っても子どもは聞かないのに、夫の『早く入れ!』という一言にはすぐに反応します」という声が多いのですが、そのくらい、お父さんの本気の叱りには、絶大な効果があります。
私が考える“叱り”とは、「厳しく、短く、後を引かず」。これも、お父さんの得意とするところ。お母さんは往々にして、何度も同じことを繰り返し、しまいには、「あの時も…」と過去のことを持ち出しがちですが、それが子どもの心に響かないのは、昔子どもだったみなさんなら、よくおわかりのことでしょう。
もちろん、親が自分の機嫌次第で子どもを叱るのは厳禁。どんな時に叱るのか、哲学を持つことも重要です。でないと、子どもに「お父さんは自分の機嫌次第で態度が変わる」と見透かされてしまいます。
やさしく接するだけでは、人は育ちません。父親から厳しく叱られたという経験は、将来その子が道を踏み外しそうになった時の“歯止め”になる。そう心得て、子どもに「怖い!」と思われる叱り方をしてください。「叱ったら、子どもに嫌われてしまうのではないか」なんていう心配は無用。子どもは、叱るべき時にビシッと叱ってくれるお父さんのことを、案外、「カッコイイ」と思ってくれていますよ。
お父さんならではの“オスの遊び”を
お父さんには、幼児期の子どもと遊ぶことも、ぜひしていただきたい。「ガオッー!」と子どもがビビるくらいの形相で鬼ごっこをするとか、オスならではの遊びなんて最高ですよ。そうすると何がいいかって言うと、お母さんが笑顔になる。前述した通り、お母さんは子どもにとって絶対的な存在で、お母さんがハッピーなら子どももハッピーですからね。遊び上手なお父さんが嫌いな子どももいませんから、子どもとの良好な関係づくりにも役立ちます。
逆に、お父さんが休日もゴルフだなんだと、自分のスケジュール優先だとどうなるか。ほぼ100%の確率で、お母さんの機嫌が悪くなり、イライラします。それが、子どもに悪影響を及ぼすのは、自明の理。子どもが、「お父さん、お父さん」と慕ってくれる時期は、思っている以上に短いもの。期間限定の貴重な時間を無駄にせず、子どもと遊ぶ時間をたっぷりと設けてください。
高濱 正伸/Masanobu Takahama
1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立、会員数は23年目で20,000人を超す。花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック作問委員。環太平洋大学(IPU)客員教授。武蔵野美術大学客員教授。日本棋院顧問。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー。「メシが食える大人」「モテる大人」を教育理念に、子どもの非認知能力育成を実践。近年は家庭教育や父親教育にも注力し、講演は年間300回を超える。著書多数。

