ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は、武田砂鉄の『「いきり」の構造』をご紹介。

武田砂鉄 著/朝日新聞出版 ¥1,870
自信満々に「いきる人」の正体と「いきらない人」の功罪を炙りだす一冊
M-1グランプリの季節になると、「いきり漫才」で脚光を浴びたNON STYLEの映像を目にする。態度が大きく、調子に乗った相方=いきる人を、もう一方がなじる構造は面白い。が、現代社会はどうだ。いきる人は、いきったまま。声高に極論をぶち、的外れであってもふんぞり返る。こちらがツッコミを入れても「切り取りだ」「フェイクだ」となじり返される。この構造は笑えない。一体、なぜ彼らはあんなに自信満々なのか? なぜ彼らを賛美する、従属する人が溢れているのか? その大きな問いを丹念に腑分けしてみせるのが著者の武田砂鉄氏だ。
読み進めると、社会のあちこちで幅を利かせている「いきり」を再確認する。我を押し通し、相手をくじく「言ったもん勝ち」を想起してムカムカする。が、私のような「自分は彼らとは違いますよ、善人ですよ」といったスタンスの人間を、著者は容赦しない。いきりを増殖させる構造の内部には、多くの「いきらない人」の功罪が含まれていることを炙りだしていくのだ。
幾度となくページ上で立ち止まらされ、時に耳が痛くなり、我が身を振り返る。たやすく通読させない、いきらせない本こそ、良書の証しなのだ。
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として数々の人気番組を担当。NSCの講師も務め、令和ロマンなど教え子をM-1に輩出。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が発売中。

