AND MORE

2025.04.27

ドイツの文豪ゲーテの母が実践した、絵本の読み聞かせ法とは

脳科学者・西剛志氏が200以上の幼稚園や教育の現場に携わるなかで見えてきた大事なものが、非認知能力の6つの力。普段の生活に取り入れるだけで、知らないうちに子どもの非認知能力がグングン育つ習慣について、西氏に聞いた。『脳科学的に正しい! 子どもの非認知能力を育てる17の習慣』(あさ出版)の一部を抜粋して紹介します。【その他の記事はこちら】

ドイツの文豪ゲーテの母が実践した、絵本の読み聞かせ法とは?
Unsplash / kelli mcclintock ※写真はイメージ

創造性を育てる環境づくりとは?

創造性を育てるために親ができることはあります。その参考になる面白いエピソードが、ドイツの文豪・ゲーテの母親であるカタリーナさんの実話です。

ゲーテが幼かった頃、カタリーナさんは息子のために毎晩のように読み聞かせをしていました。その方法は少しユニークなものでした。それは、物語がいよいよ最高潮を迎えるところで「続きはまた明日ね」と伝えて去っていくというのです。

私たちの脳は、途中で終わってしまったことが気になる性質があります(*1)。同じようにゲーテも、続きが気になって仕方がありませんでした。「こんな展開になるんじゃないか」「結末は……」と勝手に妄想しているうちに、彼は次々に素晴らしいストーリーを生み出すようになりました。母親のちょっとした工夫が功を奏し、世界的な天才が生まれたのです。ゲーテが話の続きを妄想したように、想像の余地を残すことも、創造性を育てる大事なポイントです。

おもちゃでも、あまりにリアルなものを数多く与えてしまうと、創造性が育まれません(*2)。飛行機や車の模型もよいですが、小さな子どもは積み木だけでも飛行機や車を勝手にイメージしますし、 工夫してお城やお菓子屋さんを作ることもあります。 おもちゃがなかったら、割り箸や画用紙だけで銃や魔法の杖を作れないかと想像を膨らませる子もいます。 工夫してもっと面白くしようという気持ちは、まさに人類が文明を生み出した原動力です。 ヒマな時間は、子どもに自分で考えようとする大切な時間となります。

また、創造性は、周りの環境にも影響されます。 時間を制限すると単純作業ははかどりますが、創造的な作業は真逆です。制限時間内にアイデアを出しなさいと言われると、いいアイデアは浮かんできません(*3)。 創造性を最大限に発揮するには、リラックスできる環境が必要です。 実際に、緑を目にするだけで子どもの創造性が伸びるという報告もあります。緑のある庭とコンクリートの庭で子どもに遊んでもらう実験を行ったところ、緑のある庭で遊んだ子どもたちのほうが、遊びの中の工夫が多かったのです(*4)。

大人を対象に携帯やスマホといった電子機器を持たずに4日間、自然の中で過ごしてもらっ た研究もあります。自然の力はやはり大きいようで、18歳から60 歳までの参加者全員の創造性が50%もアップしたそうです(*5)。 特にスマホは、隣の部屋に置くだけで学習力まで上がることも報告されています(*6)。 私たちは何もない空白の時間があると、「どうしたら楽しくなるだろう?」「何をしたら幸せだろう?」と自発的に考えます。 つまり、自分で考える力、意欲や好奇心まで育まれます。マインドワンダリングとも言いますが(*7)、物事を計画する力や創造性だけでなく、問題解決力まで上がることもわかっていますので、ヒマな時間を親子で大切にしてみてください。

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて3万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』など海外を含めて累計42万部突破。最新刊『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』も好評発売中。

<参考文献>
(*1) Zeigarnik,Bluma, "Das Behalten erledigter und unerledigter Handlungen" Psychologische Forschung(in German), 1938, Vol.9, p.1–85
(*2) Dauch C., et. al. “The influence of the number of toys in the environment on toddlers’ play”, Infant Behav. Dev. 2018, Vol.50, p.78-87 
(*3) Amabile, Teresa, “Does high stress trigger creativity at work?”, Marketplace, May 3, 2012
(*4) A.F.Taylor, et. al., “Growing Up in the Inner City: Green Spaces as Places to Grow” Environmental and Behavior, Vol.30, p.3-27, 1998
(*5) Ruth Ann Atchley, David L. Strayer, Paul Atchley, “Creativity in the Wild: Improving Creative Reasoning through Immersion in Natural Settings” PLoS One, Vol.7(12), e51474, 2012 
(*6) Adrian F. Ward, et. al The Mere Presence of One’s Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity," Journal of the Association for Consumer Research 2, no. 2 (April 2017): 140-154.
(*7) Mooneyham BW, Schooler JW. The costs and benefits of mind-wandering: a review. Can J Exp Psychol. 2013 Mar;67(1):11-18/Yamaoka, A., & Yukawa, S. (2019).Does mind wandering during the thought incubation period improve creativity and worsen mood? Psychological Reports, 123, 1785-1800. 

TEXT=西剛志

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年6月号

楽園アイランド・ホテル

ゲーテ2025年6月号表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年6月号

楽園アイランド・ホテル

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ6月号』が2025年4月24日に発売となる。今回の特集は、ゲストを非日常の世界へと誘う“楽園アイランド・ホテル”。表紙には、小栗旬が登場。自身が所属する芸能事務所、トライストーンの大運動会や役者論について語る。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる