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2025.02.10

浅草寺で引いたおみくじ「吉」は、英語で”Regular fortune”。では、「凶」はなんだ?

英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第287回。

英語力ゼロレッスン 第287回
Illustration=Norio

浅草寺でおみくじに英訳がついていたけれど…

先日浅草の浅草寺に数年ぶりに行きました。久しぶりの訪問でテンションが上がった私は、普段ほとんど引かないおみくじを引いてみることにしました。

吉 Regular fortune

外国人観光客の多い浅草寺では、なんとおみくじが一部英語で翻訳されていました。

浅草寺のおみくじはおそらく、大吉、吉、半吉、小吉、末小吉、末吉、凶の順で運勢が悪くなっていくのかと思います。「吉」は大吉に次ぐ幸運であるはずなのに、Regular fortune(ふつうに幸運)とはちょっとカジュアルな言い方な気がしました。

けれど確かに、テンション上がっておみくじを引いたわりには「吉」という結果なのでそこまで「やったー!」という感じにもならず、Regular fortune(ふつうに幸運)でいいのかもしれません。けれど内容を見てみるとなかなかいいことが書いてあります。

「月が澄んでその中に住むという兎やひきがえるがよく見えるように、浄らかな心と輝きを見せるでしょう」

これはこう英語で翻訳されていました。

You have no trouble in your mind and at heart, like the moon is clear and clean.
(澄み切った月のようにあなたの心にはなんのトラブルもない)

あれ、肝心の「月の兎」の表記が英語ではなくなっています。月の兎が見えるくらい晴れ渡った心、という美しい表現なのに随分あっさり訳されてしまったなと思いました。

けれど、ちょっと調べてみたら、こういうことでした。

月に兎は世界基準ではない。

そういえば、イギリスにいた頃、「月のクレーターはおばあさんの横顔」と言っている人がいた気がします。南ヨーロッパでは「はさみを持ったカニ」、オーストラリアでは「明かりをつける男性」などなど地域によって違うようで、おみくじに書いてあった「ひきがえる」も、日本ではあまり言いませんが、中国の表現なのだそうです。

幸せになるには逆境の中を進むしか道はない!

学びがあったので、おみくじを引いてよかったなと思ったら、一緒にいた先輩が顔面蒼白でおみくじを境内に結びつけていました。どうやら凶が出たということで早く悪いものを振り払いたいと、たいして読まずに結んでしまっていました。

あまりに素早い行動で凶が果たして英語でなんと書かれていたのか、確認することはできませんでしたが、調べてみるとbad luckとかadversityなどと英語訳されることが多いそうです。adversityとは「逆境」という意味なので、bad luckと言われるよりも「なんとか逆境を跳ね除けよう」と頑張れる気がします。ちなみにケンブリッジの英英辞典にはこうadversityの例文がありました。

The road to happiness is paved with adversities.
(幸運への道は、逆境に舗装されている)

直訳だとわかりづらいですが、幸せになるには逆境の中を進むしか道はないということ。この例文を胸に刻みつつ、凶を引いた先輩にも捧げたいと思います。

TEXT=MOMOKO YASUI

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