「深く考える」「孤独に強い」「エネルギーが高い」など、実はスゴいと注目されている“内向型”人間。では実際のビジネスシーンではどうなのか? ゲーテwebの連載「何気ない勝者の思考」も好評の脳科学者・西剛志氏が、優秀な営業マンの意外な性質を明かす。『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』(ダイヤモンド社)の一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】
トップセールスマンに多い性格は「両向型」
営業の世界では外向型の人よりも、内向型の人のほうが圧倒的に不利だと言われています。なぜなら、内向的でおとなしい人は、あまり意見を言わず、人見知りをするイメージがあるからです。
実際に、外向型は優れたコミュニケーター、リーダーになりやすいと言われていて、リーダーとしても頭角を現しやすいことが研究でも示されています。 外向性がある人は華やかで目立つため、内向型の人はどうしても陰に隠れてしまうように見えます。
そこで、ペンシルバニア大学の研究チームは、トップセールスマンは、どのような性格を持っているのかを実際に調べてみました。その際「外向型」、「内向型」という2つの分類ではなく、近年注目されている第3の性格も取り入れてみました。それが、「外向型」と「内向型」の両方をあわせ持った「両向型」という性格です。
研究チームは、340人のコールセンターの販売員を「外向型」、「内向型」、「両向型」の3つのグループに分けて、どの性格タイプが最も高い営業成績を上げているのかを分析してみました。すると、こんな結果になったのです。
【1時間あたりの売り上げ 】
1位:両向型 → 132%(151・38ドル)
2位:内向型 → 110%(126・8ドル)
3位:外向型 → 100%(114・96ドル)
なんと、多くの人の予想を裏切り、「外向型」が3位で最下位となってしまいました。 そして、逆に「内向型」は外向型よりも、約10 %も高く売り上げ、最も成績を上げた第1位の「両向型」は外向型と比べると、なんと約32 %も高い売り上げを達成していました。
外向性が高い人は、人好きでいつもエネルギーにあふれて、言葉も多く話もうまい傾向があります。しかし、そのあまりに熱意のある積極的な態度によって、営業では顧客が引いてしまうこともあるようです。加えて外向型は自分の視点で物事を考えてしまいがちのようで、顧客によくない印象を与える傾向があることもわかりました。 私たちは、どんなに話がうまくても、積極的に商品やサービスを勧めてくる人に対して不信感を感じることがあります。そのため、商品を購入する意欲が減ってしまい、売上も下がるのでしょう。
一方、内向性が高い人は、控えめな部分があります。無理に売りつけようとせず、相手の話をよく聞きます。困ったことがあれば、必要なものを無理のない形で提案してくれます。 ですので、内向型のほうが外向型よりも顧客の信頼度が上がり、売り上げが高くなると考えられるのです。 実際に保険の営業でも情報よりも相手に親切にする人ほど、保険の契約数、収入、ノルマの達成率が上がったり、相手に信頼感を抱かせ、大胆な提案も取りやすくなることがわかっています。内向型は顧客に安心感と信頼を与えていると考えられます。
さらに、最強なのが、外向性と内向性を合わせ持った「両向型」です。
両向型の人たちは、相手が必要とする情報を積極的に与えて、相手の話をよく聞きます。役立つ情報と安心感を同時に与えるため、顧客との大きな信頼関係をすぐに築きます。信頼関係は、商品のよさよりも商品の購入の決定に2倍も影響するという報告もあります。両向型は信頼関係を大切にしながら情報を与えることで、さらに売上を伸ばしていると考えられます。
私も仕事柄、保険や車のトップセールスマンとお会いすることが多いですが、無理に商品を売りつけようとせず、必要なときに必要な情報を提供してくれるため、安心してお付き合いできる人が多い印象があります。ときには、商品とは全く関係のないおすすめのレストランや子どもの学校を紹介してくれたり、生活にも役立つなるほどと思える情報を提供してくれるため、より信頼感を抱きます。決して派手ではありませんが、誠実さを感じられます。
内向型はこれまで目立たない存在だと思われてきました。しかし、内向型や両向型の人たちはビジネスの世界でも活躍していることがわかってきています。