ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は、『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』をご紹介。
疑惑のパブリックコメント、議事録のない検討会議……
2020年に成立した、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例。通称「ゲーム条例」は、日本で初めてインターネットやゲームの利用時間を1日60分と規制するものとして、物議を醸した。本書はこのゲーム条例成立の裏側を地元放送局のひとりの記者が3年にわたって追いかけたルポルタージュである。
筆者は条例成立の背景に違和感を覚え、取材を通してその裏側と真相に迫っていく。本条例の成立を後押ししたのは、一般の人たちに対して実施されたパブリックコメントだ。香川県議会の発表によると、本条例への賛成が84%。だが、そのほとんどがまるでコピペしたかのような似た意見ばかり。そしてそれを盾に議論は早々に打ち切られ、一気に成立に向かっていった。
他にも、非公開で議事録がない検討会議や条例成立の過程をブラックボックスにする口外禁止の契約書など、ゲーム条例成立には多くの疑惑が存在している。
私はゲームが好きだ。ゲームでしか表現できないものもあると思う。だが、子供を持つ身としてゲームとの付き合い方には日々頭を悩ませている。答えが出ない問題に社会はどう議論を進めていくべきか。ジャーナリズムのあり方を含め、改めて考えるきっかけになる1冊だ。
Seitaro Yamazaki
1982年神奈川県生まれ。セイタロウデザイン代表。「社会はデザインで変えられる」という信念のもと、デザインブランディングを中心に多様なチャネルのアートディレクションを手がける。