「まるで準備をしていたようだから、お通夜に喪服を着て行ってはいけない」そう思っている人も多いだろうが、携帯電話やメールなど連絡手段が発達した昨今、それは"一昔前の常識"に! 昔学んだマナーが今は通用しないということもあるそう。今回は、今さら聞けない葬儀のマナーを国際ボディランゲージ協会代表理事・安積陽子さんが指南! お悔やみの場面での気づかいを今一度おさらいしておこう。【結婚式編】
【Q2】女性や子供の装いで注意すべき点は?
【Q3】子どもが金髪に染めています。このままでも大丈夫?
【Q4】水晶のブレスレットは許される?
【Q5】葬儀の宗派がわからない場合、不祝儀袋にどう記せばいい?
【Q6】「お悔やみ申し上げます」と「ご愁傷様です」、どう使い分ければいい?
【Q7】参列者との会話で注意するべきことは?
装飾品の種類には気をつけて! 装いのポイント
結婚式と同じく、葬式の装いも清潔感ときちんと感は必須。
「弔事では、華美にならないように気を配ってください。靴やバッグは、光沢感が強いエナメル素材や殺生を彷彿させるファーやクロコダイルなどの素材、派手な装飾がついたものも控えましょう。華美すぎる装飾のついた腕時計、光り輝く華やかなアクセサリー、指輪やネックレスの重ねづけも厳禁です」
【Q1】お通夜と告別式、同じ服でOK?
A お通夜には略礼装、告別式は準礼装が基本です
葬儀は通常昼の時間帯に行われますので、男性は、ディレクターズスーツもしくは漆黒に近いブラックスーツの準礼装で、夜間に行われるお通夜は略礼装のダークスーツが基本です。昔は、お通夜に喪服を着用するのは予期していたようでよくないとされていましたが、今は、携帯電話やメールなどで訃報が即座に届く時代。なので、ブラックスーツで参列したほうがベターです。
昼・夜共にネクタイは黒にし、ネクタイピンはつけず、プレーンノットで結んでください。なお、黒ほどクオリティが表れるものはないので、上質なものを1本用意しておくのがおすすめです。靴は、黒の内羽根式ストレートチップがベストですが、つま先にデザインのないプレーントゥでもOK。弔事ですので、ピカピカに磨き上げる必要はありません。バッグは持たないのが基本ですが、どうしてもという場合は、男性はクラッチバッグに。大きな荷物はクロークに預けてください。
喪服の上からコートを着る際は、黒か黒に近い色みのカシミヤやウールで、デザインはチェスターコートであれば完璧です。ちなみにトレンチコートは軍服から来たものなので、フォーマルなシーンにはふさわしくありません。また、レザーやムートン、ファー、ビニールやナイロン製なども避けましょう。マフラーや手袋なども、黒や濃紺、ダークグレー系のダークカラーでシンプルなデザインのものをおすすめします。ロゴ入りはワンポイント程度なら許容範囲ですが、目立つものは避けた方が無難です。
【Q2】女性や子供の装いで注意すべき点は?
A 光沢のある素材の服や小物は避けるように
女性の場合も、親族の立場で参列する場合や、告別式は艶のないブラックスーツかブラックフォーマルのワンピースなどの準礼装、お通夜はダークカラーのスーツに黒のインナーを合わせた略礼装が基本になります(ただしお通夜までに日数に余裕がある場合は、ブラックカラーの方が望ましい)。靴は布製がもっともフォーマルとなりますが、最近では艶のない皮のパンプスも許容されつつあります。ただし、光沢感の強いエナメル素材は華美な印象になりますので控えましょう。バッグも同じく黒が基本で、素材は光沢のない布か革製を選びます。なお、薄手の黒いストッキングが基本ですが、寒い地域では黒のマットなタイツでも構いません。
子供は制服で問題ありませんが、ない場合は、女子は黒・濃紺・グレーのスカートに白い襟付きブラウスやシャツ、もしくは黒・濃紺・グレーのワンピースに。男子は襟付きの白シャツに黒・濃紺・グレーのズボンに同系色のジャケットまたはベストをはおってもよいでしょう。無地が無難ですが、胸元などに控え目なワンポイントが入っている程度なら大丈夫です。靴は、黒や紺など落ち着いた色から選んでください。スニーカーも、ダークカラーの地味なものであれば構いません。赤ちゃんは結婚式と同様、柄物や派手な色を避け、黒・濃紺・グレーで無地の服を選ぶと安心です。
【Q3】子どもが金髪に染めています。このままでも大丈夫?
A 可能ならばスプレーで黒くして
大人、子供に限らず、派手なカラーに染めていたり、ハイライトを入れている場合は、スプレーなどで黒くするのが望ましいですね。ネイルもNGですが、ジェルネイルなどでどうしても外せないなら、皮膚と同じ色のマニキュアを上から塗るなどしてください。ただし、これはぎりぎりの対処法。本来はマナー違反になります。
なお、女性が髪をひとつにまとめる場合、ポニーテイルのように高い位置で結ぶと華やかな印象になってしまうので、低い位置で結ぶように。ヘアアクセサリーは基本的にはつけません。お子様の場合も、黒いリボンや布製のカチューシャ程度に留めてください。
【Q4】水晶のブレスレットは許される?
A 仏具ではないので外してください
アクセサリー用途の水晶などのブレスレットは仏具(法具)ではないので、外してください。男女ともにつけてよいのは結婚指輪くらいです。女性は、パールのネックレスであれば装着しても問題ありませんが、「重ねる」のは縁起が悪いので一連が鉄則。指輪の重ねづけもしてはいけません。腕時計はつけても構いませんが、ダイヤモンドなど光る素材や派手な装飾があるもの、クロコダイルやハラコのベルトのものなどは避けましょう。
【Q5】葬儀の宗派がわからない場合、不祝儀袋にどう記せばいい?
A 通夜・告別式ともに「御香典」で構いません
仏教徒の通夜・葬儀・告別式では、一般的には「御霊前」(浄土真宗は「御仏前」)と、薄墨の筆でかくのがしきたりです。宗派がわからない場合は、通夜・告別式・四十九日といった法要、いずれの場合も「御香典」と記せば失礼にあたりません。カトリック・プロテスタントは「御花料」、神式「御玉串料」です。
不祝儀の額は故人との関係性によっても変わりますが、目安は、両親が5〜10万円、祖父母が3〜5万円、兄弟・姉妹は5万円、叔父や叔母は1~3万円、その他親類は1万円。上司は5千~1万円、同僚や友人は5千円〜1万円です。
【Q6】「お悔やみ申し上げます」と「ご愁傷様です」、どう使い分ければいい?
A 弔電にも使えるのは「お悔やみ申し上げます」のみ
「ご愁傷様です」が相手の悲哀に親身になる意味であるのに対し、「お悔やみ申し上げます」は自身の悲哀の気持ちを表す言葉。ご遺族と対面する場合はどちらでも構いませんが、弔電の場合は、「お悔やみ申し上げます」しか使えません。
なお、ご遺族や関係者には、よけいな言葉はかけず、「このたびはご愁傷様でした」「お悔やみ申し上げます」と伝えるのみに留めましょう。死因や亡くなった時の様子などをたずねるのはマナー違反ですし、「元気を出してください」「時が忘れさせてくれますよ」など安易に励ましたりするのも控えた方がよいですね。故人と対面した際は、「安らかなお顔ですね」の一言で十分です。
【Q7】参列者との会話で注意するべきことは?
A 個人的な話は控えましょう
葬儀の場で久しぶりに再会する方々もいらっしゃるかもしれません。けれど、あくまでも故人を偲ぶ場ですから、自分や相手の近況などプライベートな話はしないこと。また、慶事と同様、弔事でも「終わる・別れる・消える・落ちる」などの忌み言葉や不吉な言葉、「たびたび、重ね重ね、次々、再び、また」などの重ね言葉は使わないようにしてください。
四十九日など法要の場合は、ご遺族の状況によって臨機応変に対応して構いません。まだ気を落としているようなら、「お身体は大丈夫ですか?」「本日は○○様のために心を込めてお参りさせていただきます」「どうかご無理をなさいませぬよう」など、遺族の表情や体調、場の雰囲気などを考慮しながら適切な言葉をかけましょう。すでに前を向いていらっしゃるようなら、無理に沈んだムードを出さなくてもよいと思います。