大事な仕事の相手や女性との食事の席で、意外と悩むのがワインのマナー。どんなに上質なスーツに身を包んでいても、ちょっとした振る舞いでがっかりされたら、大切な時間は台無しに。相手をしっかりエスコートできて、印象がアップする振る舞いとは? 今さら聞けないワインマナーの常識を、ワインエキスパートであり食レコ代表取締役の瀬川あずささんが伝授。
余裕ある振る舞いがワインマナーを制す!?
食事の時の振る舞いはその人の性格や経験値が出てしまうもの。なかでも知っているようで知らない、いや実は間違っているかも? と気になるのがワインのマナーだ。
「ワインのことをわかっているなと思わせるポイントは、『香りや余韻をゆっくり味わうこと』なんです」と瀬川さん。
「いくら知識を語られても、あまり響かないどころか嫌がられてしまうことも。それよりも最初のテイスティングでも食事中でも、焦って飲まずゆっくり楽しんでいる姿で、ワインが好きだということが十分伝わります」
そのゆとりは、グラスの扱いやお店のスタッフとの対応にも表れる。
「グラスを優しく扱っていたり、希少なワインを飲んだときはソムリエのテイスティング用に少し残しておいたりすることができれば、さらにスマート。たくさんの知識や経験より、大事なのは気負わず素直な気持ちでワインを楽しむこと。ワインのマナーのコツをつかんで、素敵な時間を過ごしてください」
一目置かれる男性のワインの振る舞い5選
【1】ホストテイスティングは省略厳禁
「ソムリエに任せるからと、ワインを注ぐ前のホストテイスティングを断る方も多いですが、ワインの状態を確かめることは、相手に美味しいワインを出すための大事なおもてなし。みんなの視線もあるので緊張するかもしれませんが、ぜひ行ってみてください」
ボトルが来たら頼んだ銘柄かどうかをチェックし、注がれたワインの外観・香り・味わいを確認。
「でもここで気の利いたコメントをしゃべる必要はありません。ホストテイスティングは、ワインがきちんと味わえる品質かどうかを確認するものなので、一口飲んで特に問題なければ『美味しいです』や『お願いします』とソムリエに伝え、注いでもらいましょう」
めったにはないが、もし陰干しした雑巾のようなひどく不快な香りがしたら、ブショネ(劣化)のサイン。その場合はソムリエに、「このワインはこういう香り・味ですか?」など相談をすれば、ソムリエ自身が再度確認し、問題がある場合には新しいものに交換してくれます。
【2】グラスは女性のように扱う。爪のチェックも忘れずに
繊細なワイングラスを粗雑に扱うのはNG。ワインの温度を上げないよう、ステム(脚)のあるグラスは脚部分を持つのがスマート。
「乾杯の時は割れやすいフチの部分を避け、ボウルの部分を優しく当てる程度。あてずに目くばせだけでもOKです」
そして自分では気づかなくても、まわりにしっかり見られているのが手の爪だ。
「ワインを飲んでいる時、グラスを持つ手は結構目立つんです。特に爪は清潔感のあるきれいな状態に。必ずチェックしておきましょう」
【3】焦って飲むのは初心者。余韻を楽しむのが通
「ワインを飲む時はゴクッとすぐに飲まず、ゆっくり色調や香りを確かめてから飲みましょう」
ソムリエがワインの情報の8割を香りで判断するというほど、香りは重要な要素。
「そんな重要な香りを楽しまずに飲むのはもったいない。焦って飲むと『もしかして初心者?』と思われてしまいます。通っぽくみせるなら、飲んだ後もゆっくり余韻を楽しんでみてください。さらに『余韻が長い』とか『フローラルな余韻』など一言を添えられれば完璧です」
【4】ウンチクを語らない。素振りでワイン好きが伝わる
「香りや余韻について、素直な感想を軽く伝えるレベルならOKですが、知識があるからとずっとワインの話を聞かされるのは苦痛になってしまいます」
いい気になって語っていたら、相手のワイン知識の方が上だったと痛い目にあう可能性もあるので要注意。
「語るのは、相手に聞かれてから簡潔に。それよりも、香りを楽しんだり、ゆっくり味わっていれば、ワインが好きだということはわかるもの。いろいろ語らなくても素振りで見せることが大事ですし、なによりスマートに見えます」
【5】持ち込みワインは必ず事前に連絡を
「ワインの品揃えはお店の個性でもありますし、経営上利益率が高いこともあり、基本的にはお店のワインを飲んで欲しいと思います。でも特別なヴィンテージや、希少でお店にないワインなど、持ち込む理由が明確なものであれば持ち込みもあり。ただし、必ず事前に持ち込みが可能か、持ち込み料がいくらかを確認しましょう」
熟成したワインやシャンパーニュなどは澱を落ち着かせるために、事前に店に届けておくことも必要なので、事前送付が可能かどうかも確認するのがおすすめだ。