年齢やポジションが上がるにつれ、クライアントや取引先などビジネスがらみの冠婚葬祭に出席する機会が増えてくる。そんな時こそスマートに振る舞いたいもの。そこで、意外と知らない・改めて押さえておきたい結婚式のマナーを、国際的なマナーから今時の常識まで精通するプロ、国際ボディランゲージ協会代表理事・安積陽子さんが指南!
【2.ヘアスタイル】清潔感が第一
【3.靴】黒のストレートチップなら間違いなし
【4.小物】腕時計はNG⁉︎ 注意したい小物
【5.ご祝儀】包む額は相手との関係性や料理の有無で判断
【6.欠席連絡】理由は"身内のお祝いごと"がスマート
【7.挨拶】自己紹介→招待のお礼→式の感想の順で
【8.振舞い】同席した人との会話は"ハメを外さない"よう注意
これさえ読めばOK! 気をつけたい結婚式参列でのポイント
今回の指南役は、イメージコンサルタントとして世界標準の装いや振る舞いに精通する安積陽子さん。「海外では、その人の教養や品格は、話し方や立ち居振る舞い、服装に表れるとされているため、幼少期から基本的なルールを学びます。けれど、日本ではそうした教育にあまり力を入れていません。そのせいか、高いポジションにいらっしゃる方でも、正しいマナーをご存知ない方が少なくないような気がします」
確かに! マナーが重んじられる冠婚葬祭ですら、なんとなく聞きかじった“正解らしきもの”をベースに服装を選び、行動しているケースが多いかもしれない。なかには、思い切りレッドカードなものもありそうな……。「大切なのは、原理原則、基本ルールを知ることです。それさえ押さえておけば、自信を持って結婚式の場に参加できると思います」
【1.服装】ドレスコードを意識して
招待状にドレスコードが明記されていれば、それに沿ったものをセレクト。「準礼装」の場合、昼間のセレモニーなら、男性はディレクターズスーツやブラックスーツ、女性は首や胸元が露出していない膝・膝下丈のセミアフタヌーンドレスで、夜の時間帯なら男性はタキシード、女性はカクテルドレスを着用。
「『平服』と書かれている場合、略礼装の意味になります。略礼装は昼夜共用で、男性の方は無地のダークスーツにネクタイが基本です。織柄物でも、一見無地のように見えるシャドーストライプなど、控えめなものであれば構いません。色は、黒や黒に近い紺、グレーなどを選び、シャツは上質なドレスシャツを着用してください。ただし、ボタンダウンシャツは、競技ユニフォームに着想を得たものなので避けましょう。
ネクタイは、シルバーやシルバーグレー、シルバーに近い白、シャンパンゴールド、パステルカラーなどの光沢感のあるネクタイがおすすめ。コットンやニット素材のネクタイはカジュアルな雰囲気を醸し出すため、結婚式には不向きです」
女性の略礼装はドレッシーなワンピースやスーツというのが一般的。黒のドレスを選ぶなら、弔事を連想させるマットなものでなく、光沢感のあるものにし、全身黒一色にならないように注意を。
「真夏のビーチなどでのリゾートウェディングではない限り、綿や麻素材のドレスは、ブランド品や高級なものでもフォーマルな場にふさわしくないので控えましょう。また、教会や神前式のような神聖な場所では、肌が露出し過ぎないよう、ノースリーブタイプなどのドレスの場合、必ずボレロやストールを羽織ってください」
子供の場合、女子は、明るい色合いのドレスやワンピース(白はNG)、男子は襟つきの白シャツに黒・濃紺・グレーのズボンと同様の色のジャケットまたはベストを羽織るのがおすすめ。制服があればそれを着用してもOK。「赤ちゃんには厳格なドレスコードはありませんが、派手な色やロゴ入り、柄の洋服は控え、参列する大人と調和するようなモノトーンのお洋服にすると安心です」
【2.ヘアスタイル】清潔感が第一
清潔第一をモットーに、男性は整髪剤で髪をまとめ、前髪が長い場合はアップバングやセンター分け、七三分けにし、髪が長い場合はひとつに結うのがおすすめ。女性は、手をかけていない印象にならないよう、ダウンスタイルは避け、ヘアアクセサリーをつけるなどひと工夫を。ただし、ファーやレザー素材は「殺生」を彷彿させるのでNG。長い場合は、ハーフアップやアップスタイルで華やかさを演出するのがベター。
「その際、花嫁より目立たないよう、ボリュームのあり過ぎる髪形は避けましょう。お子様のヘアスタイルも、大人に倣ってください」
【3.靴】黒のストレートチップなら間違いなし
男性は、つま先に一文字の切り替えが入った黒のストレートチップを一足持っておくと、正礼装にも準礼装にも活用できる。ダークスーツの場合、プレーントゥでもOKだが、ローファーや靴先が上向いたもの、先端が長過ぎるものは控えるのがベター。
「女性は、ヒールがあり、つま先が隠れるパンプスを選び、必ずストッキングを着用してください。ミュールやサンダル、ブーツはフォーマルな場にふさわしくないので避けましょう。子供は、黒などダークカラーの革靴が望ましいですが、幼児の場合は濃い色であればスニーカーでも構いません。ただし、歩くと音が鳴ったり、ピカピカ光ったりする靴は避けるように。靴下は派手な色や柄物ではなく、白や黒、紺などを選ぶのがおすすめです」
【4.小物】腕時計はNG⁉︎ 注意したい小物
フォーマルな席では、男性はバッグを持たず、スマホや財布などはジャケットの内ポケットにしまうのが基本。また、式の最中に時間を気にするのは失礼にあたるので、腕時計もつけないように。
「女性は、光沢感のある小ぶりなバッグに口紅とスマホ、ハンカチ程度を入れ、大きな荷物はクロークに預けてください。ハンカチは、白の無地で、せいぜいレースやワンポイントの刺繍が入ったくらいのものを選びましょう」
アクセサリーは、昼間であればパールやアメジスト、ラピスラズリといった光沢感を抑えた半貴石、夜はダイヤモンドなど輝きの強いジュエリーを。パールのネックレスを二重につけるのは、「喜びが重なる」という意味になるのでOK。逆に、クロコダイルやハラコなど殺生をイメージさせる素材のアクセサリーや、腕を動かすたびにジャラジャラと音の鳴るブレスレットは避けること。
「お子様も大人同様に、昼間は輝きの強いアクセサリー類は避けてください。また、ティアラも花嫁のものなので、ゲストがつけるのは厳禁です」
【5.ご祝儀】包む額は相手との関係性や料理の有無で判断
地域によって異なるが、一般的には、新郎新婦が友人なら「3万円」、部下や上司なら「3~5万円」、きょうだいやいとこなど親戚なら「3~10万円」が相場とされている。
「自分の結婚式の際にご祝儀をいただいた相手なら、受け取ったのと同額をお包みするのが基本です。また、偶数は、割り切れる=別れをイメージさせるので避けましょう。どうしても偶数の額でと言う場合は、2万円なら1万円札を1枚と5千円札を2枚のように、お札を計3枚包むようにしてください。披露宴に出席しない場合は、相場の1/3を目安にお祝いを渡すとスマートです」
夫婦で出席する際は、連名でご祝儀を渡すのが一般的。上記目安額の2人分が基本だが、6万円になる場合は、5万円または7万円にするケースが多いそうだ。
「赤ちゃんを同伴する場合、料理が不要ならお祝い金を追加しなくても問題ありませんが、授乳やお着替えなどのために特別な部屋を用意してもらった際は、5千円程度お渡しするとよいでしょう。子供用の食事をお願いするならプラス5千円、大人と同じお料理なら1万〜2万円(会場のランクによる)追加が目安です」
急遽欠席となった際は、本来の半額ほどのご祝儀で構わないが、欠席の連絡時期が挙式まで1ヵ月をきったタイミングなら、当初の予定額を包むこと。
「ただし、自分の結婚式に参列くださった方の場合は、欠席を伝えるタイミングに関係なく、その方からいただいたご祝儀と同額を送るのがマナーです」
【6.欠席連絡】理由は"身内のお祝いごと"がスマート
「招待されたのに出席できない場合、ベストなのは本人に直接会ってお詫びをすることですが、難しければ、招待状が届いてすぐに電話で伝えてください」
欠席の理由が正直に伝えにくい場合、日程を変更できない出張や重要な仕事のほか、身内の結婚式が重なっているなどお祝い事を理由にするのがベター。
「一例を挙げるなら、『ご結婚おめでとうございます。また結婚式にお招きいただきありがとうございます。あいにく(子供の入学式と重なっておりまして/残念ながら重要な出張のため参加できず/やむを得ない事情により) 残念ながら欠席させていただきます。素敵な式となりますようお祈りしています』といったイメージです」
【7.挨拶】自己紹介→招待のお礼→式の感想の順で
新郎新婦やその両親などへの挨拶は、自身の名前と新郎新婦との関係を伝えた後、招待へのお礼を述べ、お祝いや式の感想・賛辞を口にするという順番が基本。
「新郎新婦への挨拶は、どちらか一方ではなく、双方に声をかけるようにしてください。ご両親へなら、『素敵なカップルですね』など、新郎新婦が多くの方から祝福され、尊敬されていることが伝わるようなメッセージをお伝えするのがおすすめです。新郎新婦とその親御さんが血がつながっているとは限りませんので、『お母様/お父様に似ていらっしゃいますね』といった表現は避けましょう。お祝いの席にふさわしくない、『たびたび』といった重ね言葉や『疎遠になっていたけれど』などの忌み言葉、『落ちる、衰える、終わる、欠ける、失う』など、不幸を連想させる言葉も、もちろん禁句ですのでご注意を」
【8.振舞い】同席した人との会話は"ハメを外さない"よう注意
初対面の人と同じテーブルに着いた際、まずは自分から「新郎/新婦の同僚の〇〇です」のように名乗るのがスマート。「こんな仕事をしている」と自ら名乗るのは構わないが、相手が返してこなければ、別の話題を振るのが得策。
「必要以上に新郎新婦の個人情報を明かすのはタブーです。初婚や再婚、親族にまつわる話、病気や身体に関すること、年齢や異性との交友歴、学歴、内輪ネタ、失敗談、下ネタのほか、『将来、ふたりの子供は〜』といった話も避けてください。共有してよいのは、良いことや微笑ましいエピソードのみです」
複数の女性や男性が同席している場合、特定の人のみを褒めるのもNG。「おきれいですね」「お若く見えますね」といった外見にまつわることは、相手に対しても、その他の人に対しても不快な気分にさせることがあるので、口にしないように。
「外国人のお子さんに、『きれいな金髪ですね』『肌が白いですね』など、髪や肌の色などを話題にするのもマナー違反なので、ご注意を」